CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] 夢と日常が重なる瞬間

夢と日常が重なる瞬間

弓削匠(プロフィール)

弓削匠

プロフィール 弓削匠
デザイナー、アートディレクター。1974年生まれ、東京都出身。2000年、アパレルブランドYugeをスタート。自身の脳裏に浮かび上がる過去の原風景と現代性を洋服に落とし込み、鮮やかな配色やテキスタイルで唯一無二のクリエイションを展開している。アパレルデザインだけでなく、シンガー土岐麻子のアートディレクションも担当。アートディレクターとしても大きな注目を集めている。
http://www.yuge.cc
http://twitter.com/#!/TAKUMIYUGE

頭の中を見てみたい。弓削匠のクリエイションに触れると、彼が何を考えているのかを知りたい欲求に駆られる。弓削が手掛けるアパレルブランドYugeのプロダクトには、彼の脳裏に刻まれた過去の原風景が落とし込まれている。その色づかいやテキスタイルは、一度見たら忘れられないほどに鮮やかで斬新。それでいて、どこか懐かしさも感じさせる。いったい、彼の圧倒的な表現には、どんな経験が反映されているのだろうか。 現在、弓削はYugeのデザイナーであると同時に、シンガー土岐麻子のアートディレクションに携わっている。言うなれば、アートディレクターとは、プロジェクトを統括する重要な役割だ。土岐麻子との関わりから、新たな表現の領域を開拓した弓削の姿勢からは、もはやYugeは一つの表現ツールにすぎないかのように感じる。弓削はデザインを通じて、何を実現しようとしているのか。クリエイションの源泉と展望について語ってもらった。

Text by Shota Kato Photo by WYPAX

土岐麻子とは、時代の感じ取り方が似ている。

弓削さんはYugeを手掛ける一方で、土岐麻子さんの作品にアートディレクターとして関わっているわけですけど、お二人が仕事で関わるようになったのは、どんな経緯からだったんでしょう?

弓削

彼女のライブ衣装を提供したのが最初でしたね。でも、そのときはまだ会ったことはなくて。青野賢一さん(BEAMS)っていう若い頃から一緒にDJをやっている仲の良い先輩に紹介してもらって、ウチの事務所で初めて会いましたね。

アートディレクションを始めることになったきっかけは?

弓削

音楽とファッションの新しい取り組みをやりたいねっていう話からスタートしたんですよ。今、三部作に続いているんですけど、まず2010年の春夏コレクションに彼女が『解き放て、乱反射ガール。』というキャッチコピーを付けてくれて。実際にそれが『乱反射ガール』という彼女のアルバムタイトルと曲になりました。それから『City Lights Serenade』というコレクションをやって、そのテーマが『乱反射ガール』の最後の曲になっています。

今までに聞いたことのない関わり方ですよね。三部作目はどんな内容ですか?

弓削

その次のコレクションが『THE WINDOW INTO SUMMER』というテーマなんですけど、これはちょっと作り方が違うんですよ。雑談をしていたときに、彼女が「自分の子どもの名前を付けるとしたら、窓夏(まどか)」って言っていて(笑)、その由来を聞いたときにピンとくるものがあって。山下達郎が、ロバート・A・ハインラインという作家の『The Door Into Summer』からインスピレーションを受けて作った『夏への扉』という曲があるんですけど、『夏への窓』という形に文字れるなって思ったんですよ。それを土岐ちゃんが作ってくれたというよりか、ネタを提供してくれて、僕のコレクションのテーマにさせてもらいました。まだ彼女の曲にはなっていないけれども、いずれ曲にすることを考えています。

なるほど。面識が出来る前は、土岐さんの活動をご存知でしたか?

弓削

彼女のお父さん(土岐英史)のことは知っていました。有名なサックスプレイヤーで山下達郎のバックメンバーで吹いていたから。

実際に事務所でお会いしたときの印象はどうでしたか?

弓削

初めて会ったときから、めちゃくちゃ話が合って。目ん玉ひん剥きながら話していましたね(笑)。

(笑)。どんな話題で意気投合したんですか?

弓削

時代性の話ですね。年齢で言うと彼女は僕の一つ下だけど、二人とも東京出身で小さい頃に影響を受けたものが小学校時代の原宿や表参道だったり。目にしたものや聴いたものがすごく似ているんですよね。何をチョイスしたのかっていうところも似ているというか。

CONTRAST[インタビュー] 弓削匠 | 夢と日常が重なる瞬間

具体的にどんな共感接点があったのか興味があります。

弓削

まず一番は音楽ですね。僕が小学校の頃に音楽を好きになったきっかけは、大滝詠一、山下達郎、ビーチボーイズで。彼女はビーチボーイズは聴いていなかったけど、大滝詠一と山下達郎は彼女のお父さんと繋がりがあるじゃないですか。山下達郎の話になると当時の東京の話になって、時代の感じ取り方が似ているんですよね。子どもだから感じ取れるものというか。例えば当時の大人だったら、単にただバブリーで現実的すぎるじゃないですか。当時小さかった僕らにとっては、キラキラしている世界というか、そのときの原風景が頭の中に焼き付いていて。それをもとに、違う分野でクリエイションしているっていう。その部分が全く一緒なんですよね。

なるほど。つまり、お互いのクリエイションの源になっているのは、当時感じた憧れだったり、なんというか夢見心地のする要素なんですね。

弓削

今の時代は僕らが感じたそういったものが、全く無くなってきていると思うんですよ。僕らで大人に憧れを持ってもらおうというか、文化的に何が出来るかっていうことを、彼女とはすごく話していますね。