CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] 感覚という名の道しるべ

感覚という名の道しるべ

和田貴博(プロフィール)

和田貴博

プロフィール 和田貴博
1973年生まれ、大阪府出身。大阪・南堀江のレコードショップFLAKE RECORDS代表。愛称は「DAWA(ダワ)」。

店舗業務の傍ら、自主レーベル「FLAKE SOUNDS」を主宰。Casiokids、Proviant Audio、KISHI BASHIなど人気海外アーティストのアルバムをリリースしつつ、LOSTAGE、8otto、Predawnなど国内アーティストのアナログリリースも手掛ける。尚、現在正式に所属している国内アーティストはNOKIES!、Juvenile Juvenile、The Chimney Sweeperの3組。

また、「TONE FLAKES」と銘打った自主イベントや海外アーティストを招致したジャパンツアー、時には自らの店舗でもインストアライブを開催。自身もDJとして各地のイベントに出演している。
2014年のRECORD STORE DAYである4月19日は、国内アーティストのアナログ8タイトルを同時リリース。また、店舗を飛び出しアメリカ村のdime ART&DINERにて京都のレーベルSecond Royalと共同でアウトストアライブを開催する。
FLAKE RECORDS
FLAKE RECORDS official Facebook
FLAKE RECORDS official twitter
DAWA twitter

大阪、南堀江。飲食店やライブハウスなどで賑わうアメリカ村を抜け、大通りを越えた閑静なエリアにFLAKE RECORDSは店を構える。

店内に入るなり目に飛び込むのは、壁を覆うレコードたち。今の日本で音楽を記録する媒体といえばCDをイメージする人がほとんどだろうが、ここではレコードの取扱いが実に8割を占める。しかも、その多くは今まさに海の向こうで鳴っている音楽だ。店主の和田貴博が一つひとつ選び抜いて仕入れた音楽は、一般の音楽ファンのみならず多くのミュージシャンからも高い支持を得、FLAKE RECORDSはツアーで大阪にやってきたミュージシャンが来店するちょっとしたスポットになっている。

とはいえ、レコードの再生環境を備えていない音楽ファンは多い。そんなときは、自らのレーベル「FLAKE SOUNDS」にて日本盤CDをリリースし、アーティスト本人を海の向こうから呼び寄せてツアーを組んでしまう、なんてことも。手が届かない場所にあった音楽が、目の前で鳴らされる。ファンにとって、これほど嬉しいことはないだろう。

日本では4年前から始まった「RECORD STORE DAY JAPAN 」。レコードショップとアーティストが一体となり、レコードを手にする楽しさや音楽の楽しさを共有しようという試みである。開催にともない、今年はメジャー、インディーレーベル合わせて43タイトルの限定アナログ(レコード)がリリースされる。その中でもFLAKE SOUNDSからのリリースは8タイトル。レーベル単位のリリース数でみれば最も多い。その存在感たるや、気にならずにはいられない。

Who is “DAWA”?

撮影協力:digmeout ART&DINER

Text by Yukari Yamada Photo by Takahiro Yamashita

洋画から洋楽へ

ご実家は大阪ですか。

和田

はい。今も母と弟と一緒に住んでます。

学校はずっと地元だったんですか?

和田

中学高校と地元の公立に通って、大学には行かずにOSM(大阪スクールオブミュージック)に通ってました。音楽には何かしらの形で関わりたいと思っていたので。でも、卒業したところで特に就職はできなくて、トラックの運転手とか引っ越し屋とかでバイトとバンドをしつつ、途中から大型CDショップでも働き始めました。

アルバイトには音楽へのこだわりはそこまでなかったんですね。

和田

そうですね。でも僕、結構何やっても楽しめるほうで。トラックの運転手や引越し屋も移動中に音楽が聴けたから、全然苦にはならなかったですね。

CONTRAST [インタビュー] 和田貴博 | 感覚を信じて“ title=

なるほど。FLAKE RECORDSは洋楽のレコードやCDの取り扱いがメインですが、そのときに聴いていた音楽はすでに洋楽が多かったですか?

和田

今よりもっと洋楽かぶれやったかもしれませんね。それこそ遡ると小学校くらいから。映画がすごく好きで、特に洋画をずっと観てたから、テーマ曲は洋楽じゃないですか。ジャッキー・チェンとかから入って、洋画のテーマ曲に興味を持つようになりました。

一番記憶に残っている、映画やその映画の音楽は何ですか?

和田

流行った映画は一通り観てましたね。『フットルース』とか『フラッシュダンス』、『愛と青春の旅立ち』、そのテーマ曲が全米1位になってるようなものは全部。それを探っていくうちに、全米TOP40チャートをチェックするようになって。当時はそれがちゃんとテレビ番組としてあって、関西ローカルのサンテレビとか、KBS京都でも5時間くらい洋楽のMVを流すような番組が毎週あって、それをひたすら観てました。

私は小学生の頃にもうインターネットが普及してたので、「知りたいことはとりあえずネットで」っていう世代なんです。その当時の主な情報源はテレビだったんですね。

和田

あとは、『ロードショー』と『スクリーン』っていう映画雑誌をずっと買って読んでました。ひょっとしたら音楽より先に映画のほうがハマってたかもしれないですね。

周りにその趣味を共有できるお友達はいらっしゃったんですか?

和田

小学生のときは特に友達と音楽の話はしてなかったですね。中学生くらいから、同級生と遊びでスタジオに入ったりするようになりました。

レコードそのものとはどうやって出会ったんですか。

和田

アイドルですね。おニャン子クラブの7インチシングルを持ってました。

ご両親からの影響はいかがでした?

和田

そんなに受けなかったですね。親が持ってたのはジャズや演歌くらいで、洋楽は全然ありませんでした。でも、僕が小学生だった当時はレンタルレコード屋ってものが存在してたんで、ジャンプやプラモデルを買いに行った足で、いつも気になった音楽を探しに行ってました。かなり長い時間、入り浸ってたなあ。

ちょっと変わった小学生だったんですね(笑)。

和田

他にも、テレビの前にラジカセを置いて、おとんとおかんに「しゃべるな!」って言って録音してましたね(笑)。当時はカセットだったから、たしか中学生のときにCDができたのかな。

CONTRAST [インタビュー] 和田貴博 | 感覚を信じて“ title=

俺にできるのはレコードショップしかない

興味が映画から音楽にシフトしたのは、バンドを始めた頃ですか?

和田

いや、どっちもずっと好きでしたね。映画は27、8歳までは毎年100本以上観てたんですけど、レコードショップで働くようになってからは忙しすぎて1本も観なくなりました。

レコードショップでも働いていたんですか。

和田

SYFT RECORDSっていう個人店のレコードショップにいました。3、4年くらい勤めてたかな。

かなり規模の大きいお店だったんですか?

和田

マンションの一室でした。FLAKEの4分の1くらいのお店からスタートして、レーベルもやってたんですけど、当時所属してたバンドが何万枚と売れて、何千万というお金が入ったことで、店を拡大することになったんです。以前からスタッフとは知り合いだったので、そのタイミングで声をかけられて入ったけど、いろいろあってお店が閉店しちゃって。それが2000年くらいかな。

具体的な業務としては、どういったことをされてたんですか?

和田

バイヤーです。レジの横でずっとパソコンを触っていて、お客さんが来たときにはお会計もやってました。

今のスタイルはSYFTから受け継いだものなんですね。閉店してからは、どんな仕事に就いたのですか?

和田

レコードショップで働いていたおかげである程度鑑定ができるので、自分が持ってたものもいくつか手放したりして、1年くらいはレコードを売って生活してました。今、FLAKEを手伝ってくれてるスタッフがいるんですけど、彼とは僕がバンドをやってた頃からの付き合いで、僕が彼のバンドをSYFTからリリースしたこともあります。それで、彼と「SYFT時代の繋がりがもったいないな」って話してて、サラリーマンもやったことがないし、「自分にはやっぱりレコードショップしかないんじゃないか」って思うようになって。その時点で30歳でしたね。お金の工面をしようにも銀行は貸してくれないんで、投資も勉強しました。「こういう風にお金を集めて、一緒にやろう」って言ってくれる人がいて、準備に2年ほどかけて2006年の9月にFLAKEを立ち上げました。

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瞬発力と振れ幅が持ち味

店内にあるレコードはほとんど輸入盤ですよね。その日本盤CDを、ご自身のレーベル「FLAKE SOUNDS」からリリースされていると。

和田

日本のバンドのアナログをリリースすることもあります。レーベルと契約してCDを出してる日本のバンドは、現時点ではNOKIES!Juvenile Juvenileの2組だけですね。どちらにしても「出そうぜ」「おう、出そう」って口約束みたいな感じで出すものがほとんどで、契約書なんか交わしてないですけど(笑)。

海外のバンドはどうやって見つけているんですか?

和田

バイヤーなので、毎日世界中の新譜のリストを見てるわけですよ。その中から気になったものをいくつか聴いて、ピンとくるものがあったらオファーします。逆に最近は、アーティスト側から「日本盤を出したい」って言われたり、一度うちから出したアーティストのレーベルから紹介されたりすることも多いですね。

日本のバンドがデモを持ち込むこともあるんじゃないですか。

和田

それはかなり。申し訳ないけど、ほとんど断っちゃってるんですよね。うちが何様とかじゃないですけど、別にうちで売らなくてもいいと思うので。

というと?

和田

FLAKEって基本、洋楽じゃないですか。お店全体のカラーみたいなものを大事にしたくて。洋楽を一切通ってなくて、日本のバンドに憧れてるバンドが持ってきてくれたデモを聴くんですけど、善し悪しではなく、僕にとってはピンと来ないんですよ。そのバンドがものすごく売れてることは結構よくあるんですけど、それをうちで売っても僕には勧める説得力がないってだけ。それに対してよく思わない人も多いかもしれませんけど、うちに置くとなれば無名のバンドでも頑張って広げます。最近だと、新しく東京のThe Chimney Sweeperってバンドと契約したんですよ。3月にデモをもらって、聴いた瞬間「すげえ」と思いました。だからもう瞬発力だけで話を進めて、夏に全国発売するアルバムをライブ会場では先行発売します。今までは2つとも大阪のバンドだったけど、このバンドのために初めて東京まで会いに行きましたね。

個人店だからこそ、ご自身の思いつきや感覚で動ける部分が大きいんですね。

和田

そうそう、この瞬発力が大事だと思う。2012年にNOKIES!の『7songs ep』をうちからリリースしたんですけど、あれは持ってきたデモのミックスをちょっと変えただけで。それはすぐに出したほうがおもしろいと思いました。今でこそThe fin.HAPPYがすごく注目されてるけど、NOKIES!も音楽性としてはあまり変わらないと思うので、ぜひ聴いてみてほしいですね。

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タワレコでも、ニューカマーとしてプッシュされてましたよね。The Chimney Sweeperは何歳くらいのバンドですか?

和田

20代前半ですね。くるりやアジカンのコピーから始めて、今はHostess Club Weekenderに行って「The Nationalがよかった」とか言ってるから、「Nationalがいいっていう若いやつおれへんで」っていう話をしていて(笑)。洋楽も邦楽も分け隔てなく聴いてるタイプの子たちですね。OGRE YOU ASSHOLEとミツメの間みたいな音楽です。

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お店のコンセプトとしては何か意識しているものはありますか?

和田

自分の感覚だけです。

感覚、ですか。

和田

僕、めっちゃブレるんですよ。「これしかできません」っていうのはあんまり好きじゃないっていうか、振れ幅があってもいいと思っていて。例えば、今流行りのEDMみたいな音楽が出てきた当初はすごくカッコいいと思って、お店でもプッシュしていたけど、2年経っちゃうと、正直ピンとこなくなるんです。今、世間的にはAviciiとかがピークになってるけど、「お前、2年前にめっちゃ推してたやん」って言われても、そのときはそのときというか。

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今いいと思ったものを今売りたいってことですね。

和田

そうそう。

今は何がおもしろそうですか?

和田

そうですね、ちょっと気になるのはグランジとか、オルタナっぽいものかな。例えばCloud Nothingsとかですね。まあ、グランジがフィットするのは僕がおっさんだからっていうのもあるんですけど、Nirvanaとかが出てきた90年代に、個人的にもリアルタイムでそのあたりが盛り上がったのを経験してるから。そのときみたいなバンドが、今海外ではめっちゃ出てきてるんですよ。

時代がまた巡ってきたわけですね。

和田

今は当時を知らない20歳くらいの子たちがやってるから、またちょっと感覚が違っておもしろい。海外は流行のスピードがすごく早いんです。日本にこの流れがくるにはあと2年くらいかかると思う。

今、日本の若い世代でグランジやオルタナ周辺のバンドを挙げるとしたら誰でしょうか。

和田

若いバンドとなるとすぐには挙げられないけど、LOSTAGEなんかはずっとそんなことをしてますね。あんまり日本のバンドは自ら探しに行くほうではないので、僕の知らないところにはもっといるのかも。自然に伝わってくるというか、「あのバンド、めっちゃよかったで」って噂が入ってくるんで、繋がりができるバンドとは、自然に繋がると思ってます。