CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] 最強の曲を生み出すために

最強の曲を生み出すために

玉屋2060%(Wienners)(プロフィール)

玉屋2060%(Wienners)

プロフィール 玉屋2060%(Wienners)
Wiennersのヴォーカル&ギター。

Wienners
メンバーは玉屋2060%(Vo/Gt)、∴560(Ba/cho)、マナブシティ(Dr)、MAX(Vo/Key/sampler)。2009年初頭、玉屋2060%を中心に吉祥寺弁天通りにて結成。パンク畑出身の瞬発力と鋭さを持ちつつも、どこか優しくて懐かしい香りを放つ男女ツインヴォーカルの四人組ロックバンド。予測不可能だけど体が反応してしまう展開、奇想天外かつキャッチーなメロディで他に類を見ない音楽性とユーモアを武器に様々なシーン、世代、カルチャーを節操なく縦断しつづける。2013年7月、シングル『蒼天ディライト / ドリームビート』でメジャーデビュー。2014年4月2日には完全限定生産シングル『LOVE ME TENDER』をリリースしたばかり。

Wienners 公式サイト

前回のインタビューが約2年前のこと。あれからWiennersは代官山UNIT、渋谷QUATTROでのワンマンライブを成功させ、シングル『蒼天ディライト / ドリームビート』のリリースを以てメジャーデビューを飾った。

次のステージへと進んできたのはバンドだけではない。それはフロントマンの玉屋2060%にも言えることだ。Wiennersの作詞と作曲を務める玉屋は、今や海外からも注目を集めるアイドルグループ・でんぱ組.incへ「でんぱれーどJAPAN」「でんでんぱっしょん」「サクラあっぱれーしょん」の3曲を提供。でんぱ組.incのアンテナ感度の鋭いファンたちの間で高く評価され、彼のコンポーザーとしての一面はWiennersの名前が広まる一因でもあった。

マニアックな要素をポップに響かせた曲に、いかに音楽以外の趣味を盛り込むことができるか。「理想郷」を意味する2ndフルアルバム『UTOPIA』のリリース時に、玉屋は彼が目指す理想郷を明かしてくれた。今後控えているであろうメジャー1stフルアルバムに向け、次の布石として投じる完全限定生産シングル『LOVE ME TENDER』では、目指す場所にどこまで近づくことができたのか。その現在地をじっくりと探る。

Text by Shota Kato Photo by Nozomu Toyoshima

「メジャーなんてクソだ」から「プロとしてやっていく覚悟を背負う」

前回のインタビューから髪が短くなりましたね。あのときはボーダーに短パンでしたけど、今日はミュージシャン然とした風貌というか(笑)。

玉屋

人に近づいている感じがしますよね(笑)。

あのインタビューは本当に印象に残っていて。有り難いことに、「Wienners インタビュー」か「玉屋2060% インタビュー」で検索すると、トップに出てくるんです。

玉屋

僕もあのインタビューは読み返しますよ。制作に行き詰まったときに、ちらっと引き出しを整理する意味で、過去の自分のインタビューとかを読むんですけど、つい写真とかを見ちゃう、あの感じと一緒ですね。あとは、高校生くらいのときに作ったデモとかを引っ張り出して、何時間もかけて一通り聴くこともよくします。

今回はメジャーデビュー以降後から最新シングル『LOVE ME TENDER』、そして次のアルバムに繋がる話ができればと思っていて。Wiennersは去年、『蒼天ディライト』のリリースでメジャーデビューを果たしましたよね。「メジャーデビュー」というキーワードは玉屋さんとしても昂るものはありましたか。

玉屋

そんなに変わらなかったですけど、「勝負するぞ」という意味合いで、今一度気を引き締めるような感覚があって。Wiennersはメジャーに憧れがあったバンドではなくて、やれればどこでもという感じではありましたけど、「メジャーデビュー」の意味を考え直したとき、「プロとしての覚悟を背負うぞ」と決心するキーワードだと感じましたね。

バンドの仕切り直しと、より多くの人たちに届けるためのスタートラインという位置付けですよね。

玉屋

そうですね。逆に10代の頃は、メジャーに対してのアンチが強かった人間なんです。僕以外にもそういう人はいっぱいいると思うんですよね。「メジャーなんてクソだ」とか思っていましたけど、こうやって実際にメジャーでやり始めて周りを見たときに、テレビに出たりすることがクソではなくて、すっからかんの状態の何もないやつが祭り上げられているのを「ああ、ダサいな」と思っていただけで、しっかりしていればそんなものは関係ないなと気付いて。もし、僕らがそこに対して何を言われても、別に「いや、ちゃんとやっていますよ」と言える状態だし、今はいいかなって思いますね。

CONTRAST [インタビュー] 玉屋2060% | 最強の曲を生み出すために―

メンバー間の意思も改めて確認し合いましたか。

玉屋

よくしますね。最近は、「バンドって何?」ということをよく話していて。メジャーに行くとなったときは、メンバーの誰か一人がなんとなく付いてきちゃったという状況は絶対に嫌だったので、みんなが「人生を変えるぞ」くらいの気持ちでやれるのかをすごく話しましたね。今のままじゃダメだということも含めて、「よっしゃ、やろう!」と仕切り直すことができて。

玉屋さんの原体験には、SNUFFY SMILEやLESS THAN TVといった、音楽と生業を分けてバンド活動を続ける人たちの存在があるじゃないですか。でも、玉屋さんが足を踏み入れているのは、音楽を生業にしていくフェーズなんですよね。いろんなバンドに囲まれている今のWiennersの状況が、すごく面白いと思っていて。

玉屋

ほんとそう思います。両方の価値観がすごく見えるし、今までは仕事しながら音楽を続けていくというところでやってきたので、価値観が偏って凝り固まっていた部分もあるかもしれませんね。先輩にFOUR TOMORROWっていうメロディックバンドがいるんです。FOUR TOMORROWは、秋葉原リボレとかの全スタジオを貸し切ったスタジオライブみたいなものを2005年くらいからするようになった先駆けで。それを目の当たりにしたときに、平日は仕事をして、夜にスタジオに入って週末好きなことをやるっていう一つの完成形を見た気がして。

この人たちがいれば、それを引き継ぐ必要はないかもしれない、と。

玉屋

そうですね。自分たちは自分たちのやり方でいこうと思えました。でも、最初にそこから飛び出して、音楽で飯を食うっていう人たちと普通に触れ合うようになったときは、あまりにも価値観が違いすぎたんです。もう、外国みたいな感じだったんですよね。まず、自分の中で何がかっこいいかの基準が違えば、今まで僕らはお客さんのことも考えたことがなかったんですよ。周りの人たちはどうやったらお客さんに楽しんでもらえるかをすごく考えていて。よくよく考えると、それは素晴らしいことだなと思う一方で、それだけになっちゃうことは僕らの中ではダサいというか。両方のバンドを見てきて思うのは、アンダーグラウンドは自分たちのやりたいことを好きにやる場であって、オーバーグラウンドはより多くの人に届ける場。その中間に自分たちの立ち位置があるとしたら、自分たちのやりたいことをどれだけ間口を広げて届けるかということだったんです。その両方の景色が見えたのはすごく面白いことでしたね。

今まで受けてきたスタンスやアティチュードの影響は残っているけど、見せたい景色や聴かせたい音を表現するために変化することを恐れないというか。恐れないのはなぜかというと、今まで自分たちのスタンスは変わってない、そこを信じて次のフェーズに進もうという感覚だと思うんです。

玉屋

まさにそうですよね。そこに関する自信がついて、考えがはっきりしたというか。今まではブレちゃいそうで怖かったから、そこに突っ込みきれなかったけど、極論、今は誰とライブをやってもいいですし。今までは「かっこいいバンドとじゃなきゃやりたくねえよ」とか思っていましたけど(笑)。

すごくわかる(笑)。

玉屋

自分たちが「このバンド、すげえな」と思ったら、そいつらに「Wiennersすげえな」と思わせれば、それでオッケーというか。マイナー・スレッドのイアン・マッケイの「本当に面白いことは2000人の前じゃなくて20人の前でやる」っていう言葉が、自分の中では真実だと思っていて。極論を言うとすごく矛盾しているところではあるけど、今は20人にしか伝わらないことを2000人に伝えることが僕はできると思っています。ちゃんと2000人に密度濃く伝えるためのやり方を探せるなと。イアン・マッケイの言っていることは本当にそうだなと思うんです。2000人に伝えるとなると、密度が薄くなってしまうということだと思うんですよね。

CONTRAST [インタビュー] 玉屋2060% | 最強の曲を生み出すために―

伝える分母が広くなることによって、密度が薄くなる可能性を孕んでいますよね。

玉屋

無意識のうちの20人よりも2000人の方が趣味好みもバラバラだし、全員がいいと言うわけがないのは分かっているんです。だけど、自分が好きな音楽は2000人が、心の底から好きだ、面白いと言える可能性を持っていると思っていて。例えば、日本人は大体ラーメン好きじゃないですか。それと一緒というか。めっちゃラーメン好きな人が2000人いたら、その好き度ってみんな濃いものだと思うんですよ。僕はラーメンが好きだったから、たまたまそういうことがやれる。アボカドとかでは駄目なんですよ。

好きか嫌いかよく分からないもの、だから?

玉屋

そうです、そうです。アボカドの本当の美味しさを2000人に伝えようとしても無理というか。それを伝えようとしたら、サラダに和えたりして伝えなきゃいけないですけど、ラーメンは別にそんなことをしなくても、めちゃくちゃ美味いラーメンを作れば、たぶん2000人全員が「おお、超美味い!」ってなるじゃないですか。

パクチーがどれだけ美味いかを伝えようとするのと同じ切り口ですよね。

玉屋

そうそう。だから例えば、グラインドコアを2000人に伝えようとするのは絶対に無理な話なんです。密度も絶対薄まっちゃう。Wiennersが勝負したいのはそこではないので。

もっと性根が腐っていると思っていた。そんなことを考える俺らが汚いなって。

数の話の中で思ったのは、「蒼天ディライト」のYouTubeの再生回数が約20万回ですよね。この数字からは『UTOPIA』以降、リスナーが圧倒的に増えているのがよく分かりますね。

玉屋

たしかに、その辺りで増えましたね。

玉屋さんの場合はWiennersのフロントマンだけでなく、コンポーザーとしての一面もあるわけじゃないですか。例えば、でんぱ組.incの楽曲提供のような外仕事の影響から、どこか突き抜けたと思う瞬間はありましたか。

玉屋

バンド自体は何も変わっていないと思います。それは悪い意味じゃなくて、変わらないまま同じ方向に着実に進んでいますね。圧倒的に突き抜けたとは思わないですけど、単純にでんぱ組.incがすごく売れたことで、Wiennersの存在を知ってもらえるようになったと思います。知ってもらえたら、絶対好きだろうと思っていた部分があって。

彼女たちのファンの中に、バンドサウンドに興味を持ってくれた人がいたということですよね。

玉屋

アイドルはアイドルで素晴らしくて、バンドはバンドで素晴らしいというか。自分はバンド側なので、「生バンドが最強!」という誇りを持っていて、彼女たちは「いや、アイドルのほうが最強!」という誇りを持っていると思いますし。そこで、絶対にアイドル好きな子たちにも生バンドは絶対に響くと思っていて。でも、それは決して僕らがアイドルより勝っているということじゃないんです。でんぱ組.incと対バンしたときも、彼女たちのライブには、俺らにないものがいっぱいあったし、なぜアイドルの現場が盛り上がっているのかがすごく分かりました。だからこそ、すごくそこに挑んでみたい気持ちがあって。

CONTRAST [インタビュー] 玉屋2060% | 最強の曲を生み出すために―

前回のインタビューでJ-POP等への否定的な気持ちがあったと言っていましたけど、そこにリスペクトの気持ちが生まれると、ほどけていく感じがありますよね。

玉屋

まったくその通りです。

たくさんの人たちに伝えたい、お客さんを喜ばせたいという気持ちは、でんぱ組.incから受けた影響がすごく大きいんじゃないかなと思っていて。

玉屋

まさにそうですね。みんな純粋なんですよ。外から見ていて、もっと性根が腐っていると思っていたんですよね(苦笑)。そんなことを考える俺らが汚いなって。それまでは、売れるためにいろんなことをやっているのが、自分にはこだわりがないように見えて、「それをダサいと思わないの?」と疑っていたんです。バンドとの対バンにしても、ライブを観て「ダセえな」とか思ったりもして。でも、後になって楽屋で話をすると、すごくいいやつで。俺らのライブを観て、「めっちゃいいな」と言ってくれたり、「どうやって曲作っているんですか」とか熱心に聞いてくれたりして。「この人たちは成功するために、純粋かつ必死にしがみついているんだな」と思えて。そしたら、それを否定することは絶対にしちゃいけないし、それをかっこいい、かっこ悪いかと思うことは別として、その人たちに対してのリスペクトが生まれたし、俺らに足りていないものが見えてきたんです。自分の中の変なこだわりが無くなって、すごく俯瞰的に、いろんなものが見られるようになってきたというか。

CONTRAST [インタビュー] 玉屋2060% | 最強の曲を生み出すために―

共通言語があることが分かってくるとまったく変わってきますよね。

玉屋

実生活でもそうだと思うんですけど、基本的に、僕は知らない人は敵視から入ることが多いんですよね。「なんだ、こいつ?」みたいな(苦笑)。マイナスから始まっているんで、「あ、これ好きなの?」「超いいよね」っていう話で一つずつ打ち解けていくと、仲良くなれるんですよね。

凝り固まったものがほどけたことで蓄えられたものもあるし、楽曲提供で経験を積んできたものもある。本当に積み重ねで、今は音楽だけで生計が成り立っている状況じゃないですか。

玉屋

ギリギリですけどね(笑)。

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