CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

contrast

CONTRAST [インタビュー] レーベルができること―

レーベルができること―

近越文紀(プロフィール)

近越文紀

プロフィール 近越文紀
1974年生まれ、石川県出身。1999年、金沢にmina perhonen(ミナペルホネン)の洋服やアクセサリーを中心に取り扱うセレクトショップShop Rallyeをオープン。2002年より音楽レーベルRallye Labelを本格始動させる。
ふと立ち入ったお店で流れているBGMのように、すっと耳に入ってまた聞きたくなるようなポップ、エレクトロ、ニューエイジなど幅広いジャンルの音楽を洋邦問わず取り扱い、時には所属海外アーティストの来日ツアーも手掛ける。現在、レーベルには宮内優里、YeYe、Chocolat&Akito、清水ひろたか、It's a musicalなど錚々たるアーティストが所属しており、レーベルメイト同士はもちろん、星野源や高橋幸宏、Corneliusらともコラボレーションし注目を集める。Rallye LabelからリリースされるCDの多くは、アートワークにイラストが多く起用されており、ceroのアートワークも手掛ける惣田紗希、UNIQLO銀座店の装飾や女性誌の挿絵を手掛ける東ちなつなど多くのイラストレーターがリリースにあたって描き下ろしたものである。これらのクロスオーバーは一見よくあるように思えるが、イラスト・音楽両文化に精通した近越だからこそ実現できたパッケージングだと言える。
セレクトショップ店主ならではのアイデアで、カルチャーの垣根を超えて音楽が広く愛されるよう毎日金沢から情報を発信している。

Rallye Label
Shop Rallye

金沢に、Shop Rallyeという洋服をメインに取り扱うセレクトショップがある。洋服の他にもポストカードやアクセサリーが店内を華やかに演出するなか、店の奥の一角には、まるで美術館にやって来たのかと錯覚してしまうほど素敵なイラスト作品が並ぶ。実はこれ、全てCD。店主の近越文紀が選りすぐった音楽とイラストをパッケージングしたものだ。14年前にShop Rallyeを開店してから3年後、近越は音楽レーベルRallye Labelを本格始動させ、洋邦問わず幅広いジャンルのアーティストを手掛けてきた。

バンドマンが「音楽をやるなら上京」と言ってきたように、レーベルもまた情報や人の集まる東京にあることが当たり前とされてきたのに、Rallye Labelは金沢で11年、ひたむきに実績を積み、所属アーティストである宮内優里、水中図鑑が今年FUJI ROCK FESTIVALに出場するなど大飛躍を遂げた。そんな今年はレーベル設立11周年を記念し、所属の邦楽アーティストが一堂に会するレーベルイベント「ソコカシコ」が開催される。しかも、どうやらその出演者の中にはミュージシャンのみならず、イラストレーターやお菓子屋さんまでもが出店するようで、いわゆる音楽フェスではないらしい。

ではいったい、どういった狙いでこのようなイベントを開催するのか。セレクトショップ店主を兼任するレーベルオーナーの思惑を探るべく、金沢を訪れた。その中で見えてきたのは、レーベルオーナーのアーティストへの熱い想いだった。

ぜひRallye Labelの音楽をBGMに、レーベルが作品に吹き込む温もりを感じながら読んで欲しい。

Rallye Label official soundcloud
撮影協力:喫茶DAMBO

Text by Yukari Yamada Photo by Hideaki Hamada

記念のような感覚でCDを作り始めた

 

まず、Rallyeの由来から伺ってもいいですか。

近越

そんなに深い意味はなくて。言いやすい、憶えやすいっていうのが一つと、字面にしたときの感じで選びました。昔、Rallyって名前のドイツのバンドもいて、もしかしてそれも頭の片隅にあったかもしれないですけど、ほんとそれくらいの理由ですね。

音楽はいつ頃から聴いていたんですか?

近越

もともとは7歳上の姉がよく聴いてた、Culture ClubとかDuran DuranとかDead or Aliveとかを意識せずに聴いていて。高校に入ったくらいの頃にいわゆる渋谷系が流行り始めて、フリッパーズギターとかカッコいいなと思って聴くようになったし、Nirvanaも当時すごく好きでした。そこからは、彼らが影響を受けた音楽にも興味を持ち始めましたね。

CONTRAST [インタビュー] 近越文紀|レーベルができること――

お店を始めるに至ったきっかけって何だったんですか?

近越

大学時代、雑貨とかギフトとかのセレクトショップでバイトしてたんですよね。就職しようか悩んだとき、そんなにやりたいこともなかったんですけどサラリーマンは自分に向いてないし、何となく嫌だなって思ってて。バイトしてたのもあって雑貨は好きだったし、その雑貨や自分の好きなレコードとかCDを置くようなお店をやりたいなって思って、大学を卒業してすぐ、勢いで始めました(笑)。

当時バイトしていたお店は今もありますか?

近越

Aming(金沢最大手のチェーン雑貨店)です。

ええ!小学生のとき、よく行ってました!(笑)

近越

石川だと有名ですもんね。

お店を始めてからレーベル設立に至るまで、3年ありますが。

近越

当時はお店で輸入盤のレコードやCDも売ってたし、音楽は好きでしたが自分がレーベルをやるなんて、考えてもみなかったので。ただ、当時でも既にCDを1000枚プレスするのが15万円くらいになってて、思ったよりも割と簡単にCDが作れる環境でした。今はもっと安いですけど、当時でも、それこそ記念みたいな感覚で、誰でも作れるような時代でしたね。最初はレーベルを続けていく意識もないまま、とりあえず記念に1枚、友達と一緒にCDを作って、当時輸入盤を仕入れてたディストリビューターさんに流通を手伝ってもらったりして。そのあと、3枚目のリリースくらいのときに、Psappを手掛けることになって。

どういういきさつだったんですか?

近越

当時お店のサイトで、自分が好きなアーティストへのメールインタビューを載せてたんです。それでそのインタヒューをオファーするときに、レーベルを始めたことを話したら、「じゃあ何か一緒にやろう」って言ってくれて。そのときに、「あっ、海外のアーティストでも出せるんだ」ってなって(笑)。

転機だったんですね。

近越

今思えば完全にそうですね。それからはこの人も出したい、あの人も出したいって欲求がどんどんと出てきました。それでいろいろ出すようになって、レーベルを続けるってことを意識し始めました。

CONTRAST [インタビュー] 近越文紀|レーベルができること――

モデルにしているレーベルはありますか?

近越

好きなレーベルはたくさんありますが、特にモデルにしてるレーベルはないです。でも、影響を受けたっていうのは、世代的に、Escalator Recordsとか Crue-L Recprdsには本当に影響を受けたと思います。

金沢という地方都市

レーベル業はお一人でこなしているんですか?

近越

そうですね、今はお店も洋服がメインのセレクトショップになっているので、そちらにはスタッフが3人いますが、レーベルに関しては今も基本的に1人でやってます。

CONTRAST [インタビュー] 近越文紀|レーベルができること――

ということは、あまり飛び回ったりしないんですね。

近越

はい。打ち合わせのために東京に行く機会は多いですけど、基本的にはこっち(金沢)にいますね。

所属アーティストたちとはどのように出会ったんですか?

近越

国内のアーティストだと、僕は東京に住んでないし、ライブに頻繁に行けるわけじゃないから、ネットで見つけることも少なくなくて。例えば宮内優里は、たまたま見つけた音楽ブログで紹介されてて、聴いてみたらすごくよくて、メールを送って会うことになりました。でも、最近は幸運なことにRallyeを知ってくれてる人もいて、国内外からしょっちゅうデモが届くようになりました。

意外と金沢でもできちゃうんですね。

近越

そうですね、こっちにいる方が楽というのもありますし。

というと?

近越

仮に東京が拠点だったとすると、情報量もすごく多いし、どうしても周りのいろんなことがノイズになっちゃって気になっちゃうんです。人との付き合いも苦手だし、面倒だって思っちゃうので。(笑)こっちにいると、そういう周りのノイズが全然入ってこないし、自分のペースを守って仕事ができる。その辺すごくらくだし、自分に合ってると思います。

むしろそれが、お一人でレーベルを運営できる秘訣の一つなんですね。

近越

もし東京でやってたら、どこかで心が折れてたかもしれないです(笑)。

地方都市もいろいろありますが、金沢へのこだわりはどこにあるんでしょうか。

近越

実はそんなにないですね(笑)。一番大事なのは、自分がそこで何をやるかってことで。金沢で何もできない人が、東京に行こうが大阪に行こうができるわけないし、場所のせいにはしたくない。でも、やっぱり自分が生まれた場所だし、家族もいるし、こだわりはないけど、すごく大切なところです。あと、外からのイメージもいいですよね?金沢。

金沢駅なんかは、世界で指折りの景観と言われてますよね。

近越

住んでると何も思わないけど、金沢でレーベルをやってるって言うと、「金沢っていいところですよね」って言われることがたびたびあって。そう言ってもらえるのはやっぱり嬉しいです。

金沢という地域ブランドが後押ししてくれたんですね。

近越

はい、そこはちょっとラッキーでしたね(笑)。

金沢でレーベルを運営するにあたって、苦労はなかったんですか。

近越

お店にしろ、レーベルにしろ、初めは不安でしたけど、それが金沢だからっていう苦労はほとんどなかったです。うちがリリースを手掛けるある海外アーティストや、仕事をしてる海外レーベルも地方都市を拠点に活動してるのでそういった意味ではお互い地方都市だし。

CONTRAST [インタビュー] 近越文紀|レーベルができること――

海外のレーベルとリンクする部分があったんですね。

近越

海外のアーティストにリリースのオファーをしたとき、レーベルは金沢っていう地方都市にあるって言ったら、金沢って都市を知らないっていうのもあるけど、なんで東京じゃないのかっていう疑問を誰も投げかけてこない。逆に日本人に言うと、金沢なんですか、なんで東京じゃないんですかってすごく聞かれる。

私も聞いちゃいました。

近越

海外だと地方都市にもレーベルがあったり、バンドが活動拠点にしてたり、それがすごく当たり前のことなんです。自分も不便はあんまり感じないし、今の時代、メールもネットもありますからね。