CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] 音楽と旅、過去との決別

音楽と旅、過去との決別

Ryo Iwamoto(プロフィール)

Ryo Iwamoto

プロフィール Ryo Iwamoto
ソロプロジェクトwe are timeを通じて、これまでに5枚のアルバムを発表。mouse on the keysやkowloonなどのライブサポート、自身のライブではセノオGEE(ex.灰汁)や新留大介・清田敦(mouse on the keys)との共演など、都内を中心に活動してきたが、2013年5月22日に発表した最新作『Love Is Overtaking Me』より本名であるRyo Iwamotoに改名。ギターからピアノに楽器を変えて、音楽家として新たな表現と対峙している。また2012年よりファストコアバンド・バドゥ・エリカに加入、ギタリストとしても活動を続けている。

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CONTRASTにコラムを寄せてくれているイワモトリョウは、ソロのギタリスト・we are timeとして活動してきた。これからも彼にとってギターは表現のパートナーであるに違いない。そう思っていた矢先に彼から届いた新譜は、なんと全編ピアノ演奏による思いもよらないものだった。

しかも今回のアルバム『Love Is Overtaking Me』は、we are timeとしての作品ではなく、彼の本名であるRyo Iwamotoとして、6枚目のソロ作を発表することになった。さらに、これまでRyo Iwamotoは自身のギターのみで作品を完結させてきたが、今作では彼が奏でる剥き出しのピアノの旋律の上に、チェロ、ギター、トランペットといった楽器が必要最小限の彩りを添え、あくまでもピアノソロ作であるものの、他の楽器とのアンサンブルにトライすることで、室内楽的な要素を含んでいる。その観点から今作は、彼の音楽家としてのキャリアにおいて、転機の位置付けになることは間違いない。

現在、Ryo Iwamotoはソロのギタリストとしてはギターとの距離を置いているが、昨年からファストコアバンド・バドゥ・エリカに加入し、バンドのギタリストとしての活動を始めたばかり。一体、何が起因となって、Ryo Iwamotoはピアノに導かれ、ギターとの付き合い方を改めることを選んだのだろうか。その胸中と変遷を語ってくれた。

Text by Shota Kato Photo by Takuya Nagamine

どうしたものかギターを弾けなくなっていた

今回のアルバムは『Love Is Overtaking Me』というタイトルですけど、”Love”は使うのに慎重になりがちな単語ですよね。

Ryo

たしかに、テーマがバンと決まっちゃいますよね。僕は曲を作る時、タイトルから先に決めるんです。まず散文的なもの・イメージを書いて、タイトルが決まってからそれに即して演奏する。これは前回のインタビューと繋がると思いますけど、日記のタイトルみたいな感覚なんです。今回はちょうど去年の5月にロサンゼルスを一人旅して、その時の日記を書き留めたというか。自分の身の回りがフラットになった時期だったから、一度気持ちを切り替えるために勢いで飛んでって。トータルで2,3週間滞在した現地での時間がかなり色濃いものになったので、帰国してから一晩で録ろうとしたんです。

また一晩で録ったんですか。

Ryo

いや、帰国したらギターで書き留めようというイメージはあったものの、これがどうしたものか弾けなくなってたんですよね。インプロヴィゼーションの手法だし、ちょこちょこと修正なんて出来ないタチだから、ばばーっとやってみたんだけど、出来た曲を聴いてみたらどれもぱっとしなくて、というかウンともスンとも言ってなくて。結果的に何も表現できていなかった。はじめてこれまで通りにいかなかった。

CONTRAST [インタビュー] Ryo Iwamoto | 音楽と旅、過去との決別―

何か思い当たるトピックはあったんですか。

Ryo

東京での生活やLAで一度リセットされた瞬間と同時に、音楽を作るパワーソースみたいなものも切れてしまったのかもしれない。でも、そこで思い悩むこともなく、これはいい機会だなと思いました。僕にとって音楽は生きていく上でのファクターなんですね。それに対しての表現をずっとギターで続けてきたけど、それすらも焼け野原になってしまったというか。今振り返ると、去年の5月は全く何も無くなった時期なんだなと思います。仕事も変わりましたし。それまでの生活から脱出するために選んだ場所がLAだったんじゃないかって。

ロサンゼルス旅行を振り返ってみてどうですか。

Ryo

曲タイトルを見て「Leaving Las Vegas」が顕著ですけど、「Long Slow Dance (In La Jolla)」のLa Jollaはラホヤという綺麗な港町の名前。「Camino Del Mar」はラホヤからメキシコに向かう途中にある道の名前です。えっと、向こうで何してたかって言うと…LAに着いたらいきなりボス(ブルース・スプリングスティーン)のライブがあるってことでこれは行くだろうと。まずはそれが素晴らしい体験でしたね(笑)。あのヒト日本来ないし。向こうの宿で友達が出来て、彼らとラスベガス、グランドキャニオンなんかにも行って。道中に5回も駐禁を切られましたけど(笑)。ちょうど滞在中にビースティーズのアダム・ヤウクが亡くなって。LAは若い世代の街ってイメージで、偉大なMCが亡くなった追悼の意が街中に溢れていました。毎晩海岸まで日が沈むのを見に行ったり、サンタバーバラまでふらっと行ったり。DJ HARVEYの野外フリーパーティーやOFF!のライブも観れたし、Low End Theoryも体験できたし。リセットするには充実した旅でした。今回の旅で思ったのは、旅に出ると音楽の素晴らしさを改めて実感したんです。

CONTRAST [インタビュー] Ryo Iwamoto | 音楽と旅、過去との決別―

音楽の素晴らしさですか。

Ryo

独りで自分を見つめ直す時間と開放的な時間があったこと、その中で普段触れてきた音楽が全く新鮮なものとして聴こえ始めてきました。だから、色んなシチュエーション毎に音楽との記憶があります。例えば、LAから一度ラスベガスを通過してグランドキャニオンに行ったんですね。どうしてもグランドキャニオンから日が昇る瞬間を見たかったから、それに合わせて。ちょうど夜が明ける、その時に聴いたノラ・ジョーンズの1st(『Come away with me』)が凄かった。いつもの都市で聴いている時と全く違うように聴こえて。「あぁ、ここで聴く音楽なんだ」と思う再発見があって、WILCOもビーチボーイズも信じられないくらいに違いました。そういう意味では、逆に音楽に没頭できていた時期かもしれません。

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