CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] 大したことのない自分らしさ

大したことのない自分らしさ

ホテルニュートーキョー(プロフィール)

ホテルニュートーキョー

プロフィール ホテルニュートーキョー
2003年、今谷忠弘のソロユニットとして始動し、その後はバンド編成によるライブ活動を行うようになる。アーバンな質感をベースにしつつも、PUNKの気概を随所に散りばめながらクロスオーバーなサウンドを展開。サウンド面のみならず、映像やファッション、ストリート、デザインなど様々なアートフォームを横断。それらのエッセンスを混在させる独自の世界観を描く。多彩な価値観を繋ぐ拠点として機能し、リスナーのみならず、その世界感に共鳴するクリエイター達からも厚い支持を受けている。また、今谷は木村カエラの楽曲プロデュースやCM音楽、舞台音楽といったプロデュースワークをはじめ、ジャンルを問わず幅広い分野のアーティストへの楽曲提供も行っている。

ホテルニュートーキョー ウェブサイト

これまでホテルニュートーキョーが発表してきたアルバムを振り返ってみると、『ガウディの憂鬱』(建築)、『2009 S/S』(ファッション)、『トーキョー アブストラクト スケーター ep』(スケートボード)と、アルバムタイトルには必ず音楽と隣り合わせにあるカルチャー要素をピックアップしてきたことが分かる。ところが、6月19日にリリースされた4枚目のアルバムタイトルはこれまでと趣向が異なっている。そのタイトルとは『yes?』。全く異なる手触りに、思わず「マジか?」と声を上げてしまった。シンプルだがなんとも抽象的で、その意味を問い質したくなるネーミングである。

それでもアルバムの中で表現されている音像は、紛れもなくホテルニュートーキョーだった。今作もホテルニュートーキョーのオーナー・今谷忠弘を、CONTRASTでもお馴染みの中村圭作(stim、kowloon、WUJA BIN BIN)、後関好宏(stim、在日ファンク)、柏倉隆史(toe、the HIATUS)をはじめとする気心の知れた凄腕ミュージシャンたちが全面サポート。アーバンかつエモーショナルな質感は、生音と打ち込みを程よく配合したサウンドアプローチにより、さらに洗練され、隅から隅まで素晴らしいクオリティに仕上がっている。個人的には「ホテルニュートーキョー史上、最高傑作!」と言い切れる作品だと思うだけに、なぜタイトルが『yes?』なのか。ただその一点だけが引っ掛かっていた。

そこで今回は『yes?』を題材に、音楽のみならず幅広いカルチャーとクロスオーバーするホテルニュートーキョーの表現を紐解くために、今谷と縁のある中目黒のハンバーガーダイニング・GOLDEN BROWNを舞台にインタビューを行なった。まさかの展開に筆者はたじたじ。

撮影協力:GOLDEN BROWN

Text by Shota Kato Photo by Takuya Nagamine

音楽は生活の一部。自分がミュージシャンだという意識はあまりない

今谷さんは4月いっぱいまで、ここGOLDEN BROWNで働いていましたよね。

今谷

ええ、2年ぐらい。それ以前も飲食関係の仕事はしてましたね。前はベルギービールの専門店にいて。GOLDEN BROWNはオーナーが昔からの友達だったから。

GOLDEN BROWNは飲食だけでは切り取れないお店ですよね。飲食を軸にファッション、音楽だったり、カルチャーとの近い距離を感じるんです。それって、ホテルニュートーキョーの世界観とも通じるものがあると思っていて。1stアルバムから振り返っていくと建築(『ガウディの憂鬱』)、ファッション(『2009 S/S』)、スケボー(『トーキョー アブストラクト スケーター ep』)と続いてきたじゃないですか。

今谷

ミーハーですよね、タイトルが安易(笑)。 たしかに、ここは飲食だけじゃないんですよ。カルチャーという感じがありますよね。オーナーが選曲する音楽のセンスが良くて、「この感じをパクりたいな」と思うことは多々あって(笑)。

CONTRAST [インタビュー] ホテルニュートーキョー | 大したことのない自分らしさ―

今谷さんは自営業ですよね。

今谷

そうですね。

会社務めをしてた時代ってありますか?

今谷

大学卒業したての頃にありますよ。MIDIレコードに4ヶ月ぐらい(笑)。俺がいた頃はサニーデイ・サービスゆらゆら帝国LITTLE CREATURESが所属していて。

すごい面々。その流れもあって、曽我部さん(曽我部恵一)のROSE RECORDSからリリースしているんですか。

今谷

いや、曽我部さんとはその前から付き合いがあって。サニーデイ・サービスの「さよなら!街の恋人たち」のPVにうっかり出ちゃって。俺ともう一人の女の子しか出てこないから、俺だと分かりますよ。それで曽我部さんを紹介されたんです。

ホテルニュートーキョーにはミュージシャンの枠に限らず、音楽周辺のカルチャーに属する人たちからの支持が厚いというイメージがあって。

今谷

あぁ、そこは重要というか、アンテナの高い人たちに聴いてもらいたいっていう気持ちはありますね。もちろん、多くの人に聴いてもらいたい気持ちはありますけど、そもそもは不特定多数の人のことを考えながら音楽を作ってないというか。そこをちゃんと考えられるのが、音楽で飯を食っていく人たちのやり方なのかなと。

CONTRAST [インタビュー] ホテルニュートーキョー | 大したことのない自分らしさ―

音楽で生計を立てたいと思ったことはないんですか。

今谷

特に意識したことはないですね。そうなったらそうなったでというくらいで。自分がミュージシャンだという意識よりも、生活の一部というか。だから4年ぶりのリリースなんて、おこがましい感じがあって。

“遊び”の延長みたいな感覚はあります?

今谷

それはあるかもしれない。でも、ふざけてるんじゃなくて、真面目に楽しむことに意味があるというか。

ギターは特に始めたというきっかけはなくて、楽器の入口はドラム

今谷さんって楽器の入口はギターですよね。

今谷

いや、ドラムなんですよ。ギターは特に始めたというきっかけはなくて、ハタチ過ぎてからですね。

どうしてドラムだったんですか。

今谷

中学の時にBOOWYの「NO NEWYORK」のコピーを先輩に強制的にやらされて。でも、同世代で自分が聴いてたのは、Oiパンクなんですよ。COBRAとかTHE STAR CLUBとかLAUGHIN’NOSEを聴いて、中2の時にはSham 69のライブを観に行ってましたね。

じゃあ、パンクは根っこにあるんですね。

今谷

まぁ、かっこよく言えば。でも別に憤っているとかではなくて、姿勢がかっこいいなと思っているだけで、単純に身近にあったものの影響を受けていたっていう。そういう時代だったと思うんですよ。インターネットも普及していない時代で、自分の周りにしか情報はなかったから。

CONTRAST [インタビュー] ホテルニュートーキョー | 大したことのない自分らしさ―

人の影響だったり、雑誌だったり。

今谷

そうそう。でも、ハードロックとかからの影響はなかったし、ビートルズとかのスタンダード的なものもないんですよね。

高校時代はどうだったんですか。

今谷

結構チャラチャラしてましたよ。パンクを聴きつつハードコアも聴いて、でもIce TとかのG-FUNKも聴いてましたね。それでSuicidal Tendenciesの格好をしてたから、めちゃくちゃでしょう?(笑)

(笑)音楽も洋服も色んなものに手を出していたんですね。

今谷

Suicidal Tendenciesを着てた理由は、高1の時にゴローズが流行ったんですけど、友達とセンター街を歩いてたらゴローズ狩りに遭ったんですよ。それで、これはやめようってことで。

(笑)バンドは組んでなかったんですか。

今谷

ミクスチャーバンドのヴォーカルをやったりしてましたよ。恥ずかしいやつを。高校を卒業してからはオリジナルですね、RAGE AGAINST THE MACHINEみたいなミクスチャーを。メンバー全員のサインを持ってますよ。彫り師のコネクションで貰いました(笑)。

今谷さんが出入りしていた遊び場ってどんな場所なんですか。

今谷

高校の時は先輩と王子の3Dっていうクラブに行ったり、友達が大貫さん(大貫憲章)の弟子だったから、LONDON NITEに行ったりしてましたね。あとは元HUSKING BEEのレオナくんと仲が良かったんで、横浜関連のイベントにも。高校の時から先輩と結構イベントをやってましたよ。DJとバンドのライブが一緒のイベントを代々木のチョコレートシティとかで。その時に山嵜くんがやっていたSMELLING CUNTSも出ていたから、山嵜くん(山嵜廣和、toe)は俺が16歳ぐらいの時からの付き合いになりますね。

解散しないバンドをやりたかった

2003年からソロプロジェクトとしてホテルニュートーキョーの活動が始まっていますけど、それ以前でいうと、バンドはいつまでやっていたんですか。

今谷

直前までやってましたよ。リリースはほとんどしなかったけど、オムニバスに参加したり。まあ、そんな大したバンドじゃなかったですけどね。

ソロプロジェクトの名前をホテルニュートーキョーにしたのはどうしてですか。

今谷

これには、ほんと意味はなくて。バンドっぽくない、カタカナの文字が並んだ時に変な感じがするというか。自分でも、なんで付けちゃったんだろうっていう(笑)。

ホテルニュートーキョーは、ホテルに例えるとACE HOTELなんですよね。GOLDEN BROWNじゃないですけど、音楽と隣り合わせにあるカルチャーを取り入れていて、それが表現として成立している。

今谷

あぁ、ただのホテルじゃなくて、プラスアルファを表現していくってことですよね。ちゃんとしたホテルって、全部の要素がバラバラじゃなくて、一つひとつが繋がっているというか。まず泊まるということがしっかりしている中で、色々な要素を付けていくということが重要なんですよ。それが出来ていないと、ただの流行りで終わっちゃう。

不特定多数の人のことは考えられないって言っていましたけど、色々な要素を付けていくことで音楽を聴いてもらうための導線が出来てきますよね。

今谷

そういう人たちに聴いてほしいというのはあるんじゃないですかね。引っ掛かるためのテイストをなんとなく散りばめているだけかもしれない。

今谷さん自身は、ホテルニュートーキョーをどう捉えているんですか。

今谷

バンドだけど、そもそもの始まりはソロプロジェクトですからね。なぜホテルニュートーキョーを始めたかというと、解散しないバンドをやりたかったんですよ。バンドって解散するじゃないですか。単純にそれが嫌だったから。

CONTRAST [インタビュー] ホテルニュートーキョー | 大したことのない自分らしさ―

解散しないバンドをコンセプトに、どんな音楽をやりたかったんですか。

今谷

ホテルニュートーキョーをやる前に解散したバンドで、やりたかった世界観があって。2003年に何を始めたかというと、まずコンピューターで音を作るということを始めたんですよ。

プロツールスとかを使った音作りを。

今谷

そうそう。それで自分の世界観というか、その時にやりたかったバンドの音を作ってみたんです。まあ出来なかったんですけどね。

『ガウディの憂鬱』から最新作の『yes?』に至るまで、都会的で夜が似合いそうな音楽というイメージは一貫としてあると思っていて。モデルになるミュージシャンがいたんですか。

今谷

LITTLE CREATURES…かもしれない。でも都会的ですよね、LITTLE CREATURESは。洗練された感じがしません?

あぁ、たしかに。一筋縄では語れない音楽というか、僕もLITTLE CREATURESは好きです。今谷さんが長く聴いてきた音楽って、他にはどんな人たちが挙げられますか。

今谷

7 Secondsとかですかね。最近は自分の曲ばかり聴いていますけど。

ホテルニュートーキョーの音源を聴いた人は、お洒落とかスタイリッシュといった印象があると思いますけど、ライブになると、そこにエモーショナルがプラスされるじゃないですか。そのギャップがたまらなくて。

今谷

なんでガラッと変わるかというと、今回のアルバムもそうですけど、まずデモを作ってレコーディングしてからその曲をライブでやるっていうのが大きいんですよ。そうすると聴く分にはいいけど、ライブで演奏する時には違和感が出てくるというか。必ず足りないものが出てくるので、そこをバンドとして補っていく。

例えば、今回の『yes?』に収録されている「Bison」は、ライブでやり続けてきた曲ですよね。

今谷

そうですね。いい加減、曲を作らないとライブの新鮮味が無くなってきたというのもあって(笑)。アルバムに入っているのは、ライブでやってきたバージョンとはちょっと違うんですよ。ちなみに曲名はいつも後付けで、今「Bison」って言われて、「何の曲のことを言ってるんだろう?」って思ったぐらいで、今はまだタイトルと曲が一致していないですね(笑)。曲名は慎重に付けてるんですけど、深い意味はないんですよ、たぶん。

目印とか記号みたいな感じですかね。

今谷

そうですね、一応番号を付けるっていう、いわゆるプリンス方式です(笑)。

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