CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] こんなやつもいるんだぜ

こんなやつもいるんだぜ

Predawn(プロフィール)

Predawn

プロフィール Predawn
Predawn (プリドーン=夜明け前)を名乗る、女性ソロシンガーソングライター。かわいらしくも凛としたたたずまいと、天性の声に魅了されるリスナーが続出している。UKロック、オルタナティブロック、ルーツミュージックを独自に昇華し、少々ひねくれつつもドリーミングかつヒーリング的な聴き心地が融合した音楽は、国内において類を見ない。2010年6月に、作詞/作曲/演奏/歌唱/録音をすべて一人で行った、1stミニアルバム「手のなかの鳥」をリリースし、日本全国でロングセールスを記録。2013年3月に1stフルアルバム「A Golden Wheel」をリリース。

Predawn ウェブサイト

シンガーソングライター、特に女性の歌い手を取り巻く状況から思うことがある。誤解を恐れずに言うならば、女の子が歌っていれば、誰だっていいんじゃないのか?と。たしかに、容姿も音楽に入り込むために必要な要素かもしれない。でもそうではなく、もっと本質的な部分、つまり表現そのものに注目してほしいのだ。彼女たちは、見せものではないのだから。

やや刺のある書き出しになったが、今回のインタビューのお相手は、およそ3年ぶりの単独音源、しかも待ちに待った1stフルアルバム『A Golden Wheel』をリリースした、Predawnこと清水美和子。Predawnといえば、澄んだ柔らかな歌声に凛とした弾き語りの姿を連想するかもしれないが、音作りに関しては、作詞、作曲、演奏、歌入れ、編曲、ミックス、これだけの工程を単独で完結させる、一人プロダクションを貫いていることはご存知だろうか。ライブでは、弾き語り以外に、サポートメンバーを迎えたバンドスタイルで音源を再現する場合もあるが、音源においてPredawnという一人音楽隊を組む姿勢は、前作『手のなかの鳥』から3年近く経っても変わらない。

自分の内から沸いてくる音楽をたった一人で形にすることから、Predawnは何を伝えようとするのか?その表現の本質に迫る。
撮影協力:SEE MORE GLASS

Text by Shota Kato Photo by Takuya Nagamine

あまりシンガーソングライターであるという感覚はない

今日インタビューをやらせていただく絵本カフェのSEE MORE GLASSさんは、Predawnにとって縁のある場所だそうですね。

清水

村上龍さんの本の挿絵とかも書いている、はまのゆかさんという知り合いの絵本作家さんがいて、前作(『手のなかの鳥』)のレコ発の後に、はまのさんとのトークと私のライブをやらせていただいて。すごく気に入っていて、ほっとしますね。Predawnは童話作家の小川未明さんの名前からきているんですけど、たぶん小川未明さんの絵本も置いてあると思いますし。

CONTRAST [インタビュー] Predawn | こんなやつもいるんだぜ―

まずは清水さんの生い立ちから聞いていきたいのですが、出身はどちらですか?

清水

生まれたのは新潟の長岡ですけど、育ったのは東久留米なんです。親の地元も東京で、仕事の都合で長岡に行っていたので、6歳ぐらいの時に戻ってきた感じですね。

意識的に音楽と接するようになったのはいつ頃のことでしょう?

清水

かなり小さい頃ですね。音楽一家だったわけではないんですけど、姉がピアノを習っていて。私も真似して弾いていて、そのうちピアノ教室に入れられたんですよ。その辺りからCDを聴くようにもなりました。はじめて買ってもらったのは、モーツァルトだった気がします。

へぇ、クラシックが入口なんですね。

清水

でも、普通に童謡とかを歌ったり弾いたりはしてましたね。

幼いながらにモーツァルトのどんな部分が響いたんでしょうか。

清水

なんとなく響きが良かったのかな。「これはベートーヴェン、これはバッハ、モーツァルト」みたいに自動演奏するキーボードがあって、モーツァルトの明るくて軽やかな感じが、子ども心に好きだったんだと思います。

楽器の入口はピアノですけど、いま清水さんのメインの楽器はギターじゃないですか。ギターと歌ではどちらが先なんですか?

清水

結構年上の姉と兄がいるんですけど、私が中学生くらいの時に、二人がギターを弾き始めて。二人がいない時にギターをいじったのがきっかけですね。そこで、ギターはピアノよりも弾きながら歌うのが簡単な楽器だということが分かって、歌おうという気になりました。

CONTRAST [インタビュー] Predawn | こんなやつもいるんだぜ―

中学生ぐらいになると、歌番組の影響でポップスとかを聴き始めるじゃないですか。

清水

それなりにみんなが聴くような音楽は聴いていたんですけど、姉と兄がアメリカンロックを聴いていたので、自然と私もそれを聴いてた気がしますね。兄はミスタービッグとかエアロスミスとか、姉はマライア・キャリーとかリサ・ローブとかを聴いていて。高校の時はギターを弾いてヒット曲を歌う部活に入っていて、私は姉が聴いてたリサ・ローブとかナタリー・インブルーリアとかを弾き語りでやってましたね。

シンガーソングライターとして土台になった存在っていますか?

清水

その後に聴いてた音楽は、一人なのにバンドスタイルみたいな名前を名乗っている人たちだったりするので、そういうのは土台にはあるかもしれませんね。自分では、あまりシンガーソングライターであるという感覚はないんですよ。友達がいないだけっていう感じというか…(笑)。

友達がいない…(笑)。

清水

全くいないわけじゃないんですけど、独りで居るのはわりと好きですね。中学とか高校くらいでジェシー・ハリスとかレディオヘッドとかを聴くようになって、その頃のレディオヘッドは『Amnesiac』とか『KID A』とかの時代で、中学の時に私が買って棚に置いてあったのを兄が見て、「ウチの妹、病んでるんじゃないか…」と思ってたらしく(笑)。レディオヘッドはそれまで聴いてた音楽とは全然違って、ポップミュージックの可能性がガーッと広がっている感じがして、そこから世界が見えるというか。

音楽に限らず色々と作ることは好き

お兄さんとお姉さんからの影響が大きかったんですね。

清水

そうですね。兄から色々聴かせてもらったんですけど、姉がすごく聴いていたカーディガンズは私も好きで、ヴォーカルのニーナがソロ(A CAMP)で出している『A CAMP』というアルバムをラジオで聴いて、何回も聴くぐらいに大好きで。はじめてプロデューサーの名前とかまで見たんですよ。

あぁ、ブックレットのクレジットですね。

清水

『A CAMP』は、いま聴いても全然色褪せないというか、最初から色褪せているという感じで、今でもよく聴きます。プロデューサーがスパークル・ホースのマーク・リンカスで、この音が好きすぎるからきっと好きだろうと思って、スパークルホースを買ったら、それにやられたっていう感じですね。

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カバーからオリジナルをやるようになったのは?

清水

はじめて曲を作ったのは6歳ぐらいですね。ピアノの先生が曲を作ってきてくださいみたいな課題を出して、その時に「自分にも出来るんだ」って感動して。音楽に限らず色々と作ることは好きですね。絵を描くことも編み物とかも。編み物をしてる時は無になれる(笑)。あとは、内職みたいにひたすらプラスチックを切る軽作業バイトも好きで(笑)。

(笑)なんだろう、手を動かすのが好きなんですかね。

清水

そうですね、落ち着くんですよ。今はもうやらないですけど、ひたすら洋服のタグをおもちゃのピストルみたいな道具で付ける作業とか(笑)。無性にやりたくなる時があって。

単純作業が全く苦にならないんですね。

清水

さすがに毎日やると疲れるけど、派遣バイトぐらいのペースだったらやりたくなりますね。労働者として駄目ですけど…(笑)。

ミュージシャンとして活動していこうと決めるにあたっては、働きたくないから音楽をやりたかったという気持ちもあったんですか…?

清水

(笑)あふれてくるものが結構あって、はじめに曲を作ろうと思ってから、思い浮かぶ度に楽譜に残していたんですよ。旋律とかコードとかリズムとかを。なんか向いてるんじゃないかとは薄々と思っていて(笑)、就活しようか悩んでいる時に、「全然いけるよ」って励ましてくれる人もいて。『10 minutes with Predawn』はMyspaceにアップするための音源というか、友達に一緒にバンドで演奏してもらうための音源という感じで、一人でコソコソ作っていたものを色々な人に渡したら、「これ売った方がいいよ」って言われて。それで試行錯誤しながら、ミックスし直して作ったんです。

一つのバンドのショーとして見てくれた方がすっと入ってくる

Predawnを名乗ったのは、いつぐらいからですか?

清水

2008年とかですかね。まだ大学3年だったと思います。

Predawnはライブの相手にロックバンドが多いですけど、元々はどんな場所でライブをやってたんですか?

清水

東京で友達とかがライブハウスを紹介してくれたり、ライブを観てくれた人が誘ってくれたり、そういった場所が中心で、最初は友達同士で内輪イベントみたいなものを吉祥寺でやってました。弾き語りっぽいところを中心にやってた時もありましたけど、苦手なところもあって。

自分とは違う音楽性の人たちと一緒にやりたかったんですね。

清水

そういう方が自分の経験として面白いし、お客さんも楽しいだろうし、色んな層のお客さんが来やすいという雰囲気なんですよ。

あぁ、たしかにそうですね。弾き語りのイベントって、意外と間口が狭い印象があるんです。普段バンド活動している人が弾き語りをやる場合は例外だと思うんですが。

清水

ちょっと雰囲気が苦手だったり、あとは一つのバンドのショーとして見てくれた方がすっと入ってくると思うんですよね。個人対個人よりも。

結果として、Predawnの名前が広がるきっかけになりましたよね。

清水

私みたいな音楽を必要としていた人や聴いて欲しい人に届くのは、良かったことの一つですね。ギャップがあればあるほど面白いし、好印象を持ってもらえたり、またライブに誘ってもらえたりすると、すごく嬉しいですし。

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