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CONTRAST [インタビュー] RHYMESTER「ダーティーサイエンス」のデザインができるまで

RHYMESTER「ダーティーサイエンス」のデザインができるまで

RHYMESTER×中代拓也(プロフィール)

RHYMESTER×中代拓也

プロフィール RHYMESTER×中代拓也

RHYMESTER
宇多丸(Rap)、Mummy-D(Mr. Drunk、マボロシ:Rap / Total Direction / Produce)、DJ JIN(breakthrough:DJ / Produce)からなるヒップホップ・グループ。別名“キング・オブ・ステージ”。1989年グループ結成。1993年アルバム『俺に言わせりゃ』でインディーズ・デビュー。ライブ活動を中心に支持を集め、1999年リリースの3rd.アルバム『リスペクト』のヒットで日本のヒップホップ・シーンを代表する存在に。2001年活動の場をメジャーに移し、2007年には日本武道館でのワンマン公演を成功させた。その後グループとしての活動を休止したが、2009年シングル「ONCE AGAIN」で再始動。続く4年ぶりのオリジナル7th. アルバム『マニフェスト』はグループ史上最高位を記録するヒットとなる。
2011年3月2日 8th. アルバム『POP LIFE』リリース。
2011年7月27日 サマーアルバム『フラッシュバック、夏。』リリース。
2013年1月30日 9th. アルバム『ダーティーサイエンス』リリース。
2013年3月~ 全国ツアー『King Of Stage Vol.10』開催予定。

RHYMESTER ウェブサイト


中代拓也(なかしろ・たくや)
アートディレクター/グラフィックデザイナー。1973年山口県出身。2007年株式会社BUCCI(ブッチ)設立。CDジャケットを中心に、ロゴデザイン、広告など幅広く活動中。

BUCCI ウェブサイト

ダウンロードによる楽曲購入が当たり前となってきている昨今、CDジャケットやブックレットの存在感はますます薄れてきている。もはやミュージシャンやオーディエンスにとって、世の中には楽曲だけが存在していれば良いのだろうか?

そうしたデジタル化が著しい時代の流れにありながら、ヒップホップ・グループ「RHYMESTER」のジャケットデザインを長らく担当しているアートディレクターの中代拓也は、その類稀なセンスで、ひときわ大きな存在感を放つジャケットをデザインし続けている。

2013年1月30日にリリースされた、RHYMESTER待望のニューアルバム「ダーティーサイエンス」のデザインワークも、中代の手によるものだ。この、一度目にしたら決して忘れることのできない、エキセントリックともいえるビジュアルは、悪ふざけ(?)なのか、はたまた明確な意図を持ってデザインされているのか。

今回は、中代がジャケットデザインを手がけるRHYMESTERのメンバー3人とともに、摩訶不思議な中代ワールドをひも解きながら、ニューアルバム「ダーティーサイエンス」のアートワークや、ミュージシャンとデザイナーの関係性など、他メディアのインタビュー記事では語られる機会の少ない「ジャケットデザインの舞台裏」をテーマに対談いただいた。

Interview&Text by Koji Hiraizumi Text by Kohei Yoshida Photo by Nozomu Toyoshima

RHYMESTERニューアルバム「ダーティーサイエンス」のテーマ

1月30日にリリースされたRHYMESTERのニューアルバム「ダーティーサイエンス」ですが、今回のアルバムはどのようなテーマで制作されたのでしょう。

マミーD

今回は、ダーティーでラフなヒップホップサウンドの上に、リリカルで強い言葉を乗っけています。ワイルドなものと洗練されたものをうまく対比させてみたら面白いんじゃないか、というところからスタートしましたね。

RHYMESTER「ダーティーサイエンス」のデザインができるまで

前作のアルバム「POP LIFE」とは、ジャケットのデザイン的にもだいぶ趣が異なる印象を受けたのですが、音作りの面で前作との違いなどはあるのでしょうか?

マミーD

これはいつものことなんですけど、前回やったこととは逆の方向に走りたくなっちゃうんですよ。そのアルバムを作っている終盤に「もうこの路線はしばらくやらなくていいか」となってしまう。それで今回は、特に自分たちが元々好きだった荒々しいヒップホップをやりたくなっちゃって。でも、それを変なタイミングでやってしまうとただの懐古主義の「おじさんヒップホップ」になっちゃうから、時代的にもいろいろなものが出てきて、古いものも新しいものもそこまで区別がつかなくなってきたから、「じゃあ、ここら辺で俺たちがいちばん好きなのやっちゃおっか」という感じですね。

ちなみに、今回のアルバムをひと言で集約するとしたら何でしょうか?

DJ JIN

「凄み」ですかね。ジャケのデザインからして、中身の楽曲からして。


宇多丸

う~ん……。強いてひと言で言うなら、「カオス」とかですかねえ。

RHYMESTER「ダーティーサイエンス」のデザインができるまで

今回のジャケットもかなり強烈なインパクトがありますが、そもそもRHYMESTERが中代さんにアートディレクションを依頼するに至ったきっかけを聞かせてください。

DJ JIN

2008年にライムスターの活動を再開するというタイミングでデザイナーを探していたんですけど、そこで中代君の一連の仕事を見て「あ、この人いいね!」とメンバー全会一致で決まりました。


宇多丸

実は中代君に依頼する決め手となったデザインがあって、それはEXILEの「THE MONSTER」というジャケットの仕事で。これを見て、「うわあ、これカッケー。スゲー」って思って。これだけの人数がジャケットに載っていて、さらにこの色使いでしょう。トゥーマッチ感というか、足し算の考え方でここまで振り切れるっていうのは強いと思うんですよ。人数が一気に増えたEXILEに、このひたすら足し算なトゥーマッチ感がコンセプト的にも合ってて、実はかなり手練の仕事だぞ、と。

アートディレクター中代拓也の「やり口」

マミーD

実はこれよりも以前に、僕とSUPER BUTTER DOGのギタリスト、竹内朋康のユニット「マボロシ」のアートワークをずっと中代君にお願いしていて。RHYMESTERのメンバーにも「中代君のやり口」みたいなものは分かっていたんだと思うんだよね。

RHYMESTER「ダーティーサイエンス」のデザインができるまで

「中代君のやり口」……、ですか(笑)。

中代

Dさんとはマボロシで何度かお仕事をさせていただいて、世界観は何となく把握しているつもりだったんですけど、「RHYMESTER」というのはまた別のグループなので、最初はどこに引っかかってくれるのか、どこがツボなのかが分からなかったんですよね。「笑いのツボ」とでも言ったらいいのかな。まずはこの人たちがカッコいいと思うポイントがどこなのかっていうのを、お互いのカードを出しながら模索していきました。こんなやり方で「ONCE AGAIN」のときは、6種類くらいラフをつくってプレゼンしましたね。


マミーD

ONCE AGAINのときは、狸の置物とか、空いっぱいに虎の顔が散りばめられたラフとかを持ってきたんですよ、この人。しかも、その虎の案は最後の最後まで残ってたりね(笑)。


宇多丸

ほんと、あぶないよなー(笑)。ONCE AGAINは虎になっていたかもしれないんだもんな。


マミーD

そういうあぶないラフをいくつも見ているうちに、狸の置物案ですら結構まともに見えてきたりするんですよ。それが、中代君のやり口(笑)。

RHYMESTER「ダーティーサイエンス」のデザインができるまで

理解しました(笑)。ONCE AGAINのアートワークに関しては、そうしたいくつかの案の中でも比較的落ち着いたものを選ばれたんでしょうか?

マミーD

今となれば……、ね。


宇多丸

いやあ、でもやっぱり今改めて見返してみても、これも十分メチャクチャでしょう(笑)。いろんなこと起こり過ぎ! まあ、確かにこれがおとなしく見えるくらいの並びではあったかもしれない……。

RHYMESTER「ダーティーサイエンス」のデザインができるまで


中代

これは僕の中で勝手に思っていることなんですけど、RHYMESTERはもちろん、ヒップホップをやっている人たちは、今風の言葉で言うと「イケてる人」みたいな先入観があるんです。そういうイケてる人たちが「わけわかんねー!」って感想を出しそうな方向に持っていったりはしていますね。