CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] お値段以上の音楽体験

お値段以上の音楽体験

stim(プロフィール)

stim

プロフィール stim
Drums : Taichi(Orquesta Nudge! Nudge!/NiceBrew/ex.group)
Bass : 松崎幹雄
Percussion : 高田陽平(WUJA BIN BIN/ホテルニュートーキョー/Orquesta Nudge! Nudge!/tuff session)
Keyboards : 中村圭作(kowloon/toe/木村カエラ/ホテルニュートーキョー/WUJA BIN BIN/NiceBrew)
T.Sax : 後関好宏(ASA-CHANG巡礼/在日ファンク/ホテルニュートーキョー/WUJA BIN BIN/ex.DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN)
B.Sax : 上運天淳市(東京中低域/ex.KINGDAM☆AFROCKS)

soup-disk、RevirthよりソロアルバムもリリースしているトラックメイカーTaichiを中心に、2002年stimの母体を結成。toe、在日ファンク、木村カエラ、DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN、WUJA BIN BIN、ホテルニュートーキョーなど、日本のインディー/メジャーシーン、ロック/ジャズシーンを牽引するバンドのメンバーを擁する。2009年、1stアルバム『EXPO3OOO』を自主制作でリリース。主にライブ会場、stimホームページ通販の販売で1000枚を完売。2011年にはDVD『stimDVD』をリリース。フランスのMEZZO TV、COLOR COMMUNICATIONS、スケートボードDVDのFESNへの楽曲提供等も行っている。2012年12月12日にリリースされた2ndアルバム『NOON AFTER NIGHT』はバンド初の全国流通盤。

stim ウェブサイト

ジャンル、シーンの垣根を超えて活動する彼らだからこそ成立する、枠に収まらない独特のリズム。ジャズ、ヒップホップ、アフロビート、ファンクなどを独自の表現に昇華してきた多彩なアプローチ。それらの上に構築された緻密なアンサンブル。その全てが織り成す贅沢なバンドサウンドを体験できたのは、ごく一部のリスナーのみだった。

stimのニューアルバム『NOON AFTER NIGHT』は実質2ndアルバムという位置付けの作品だが、ある意味、彼らにとっての1stアルバムとも言える。というのも実はstim、これまで発表してきた単独音源を、いわゆる全国流通の形でリリースしていないのだ。前作『EXPO3OOO』とライブ盤『stim LIVE』は、ウェブ、ライブ会場、一部のレコードショップとその販路は限られていたが、バンド結成10年目にして、『NOON AFTER NIGHT』は何の制約もない万全の環境のもとで届けられることになった。これは彼らの作品に触れ、ライブに通ってきた筆者としてもうれしい出来事。しかもリリース元は、ブレイクビーツを中心とした良質なエレクトロニクスミュージックを手掛けるRevirthだ。やむを得ず4年間活動休止していた名門レーベルから、初のバンド作品としてリリースされるという点もグッとくる。

また『NOON AFTER NIGHT』では、stimの息をのむ演奏に加えて、いま最も注目を集めるMC田我流と、謎のオーストリア人ハーフのヴォーカリストJamunaを迎えた、バンド初の歌モノが二曲収録されている。結成以来、脈々と培われてきたグルーヴに、”声”という新たな要素が加わったことにより、彼らの新たな側面を窺うことが出来るのも大きなトピックである。

今回CONTRASTでは、stimの結成から『NOON AFTER NIGHT』に至るまでの歴史を網羅するロングイン(飲)タビューを敢行した。その席にはリーダーのTaichi、メンバーの中村圭作、後関好宏、松崎幹雄に加え、ゲストヴォーカルのJamunaも急きょ参加。バンド初のインタビューは、他のインストゥルメンタルバンドとの差異が浮き彫りとなる貴重なテキストとなった。

Text by Shota Kato Photo by WYPAX(Interview), Makoto Ebi(Still & Live)

10年もよく続いたなと思う

stimの歴史を追う形で『NOON AFTER NIGHT』までの流れを聞いていきたいんですが、Taichiさんがリーダーですよね。

Taichi

一応ね。発言権が低いリーダーで(笑)。

2003年に結成ということですけど、どんな経緯で始まったんですか?

Taichi

たしか2002年だったと思うよ。

あれ?Myspaceには2003年って書いてありましたよ。

Taichi

本当に?じゃあ変えときます(笑)。


圭作

あれは俺がなんとなくの記憶で書いてるだけだから。

じゃあ、今年で結成10周年じゃないですか。

Taichi

そうそうそう。


圭作

でも1周年目をどこにするのかで変わってくるよ。


Taichi

stimの名前が出来てから10周年って感じだね。俺は元々GROUPをやっていて、圭作がいた界とか、ゴセッキーがいた頃のデートコース(DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN)とかとよく対バンしていて。あと陽平(Per.高田陽平)がいたMONG HANGとかと。ちょこちょこと会うようになってから、一緒に違うバンドをやろうっていう話を振ったんだよね。それで徐々に集まって結成したって感じだね。

CONTRAST [インタビュー] stim | お値段以上の音楽体験―


圭作

当時はツインドラムだったからね。

柏倉さん(柏倉隆史、toe / The HIATUS)が在籍していたんですよね。

後関

ライブ2,3回くらいやったかな、柏倉くん。


圭作

この前も「いつでも誘って」って言ってたよ(笑)。

なんで辞めちゃったんですか?

Taichi

俺がなかなかルーズだったから(笑)。もう付いていけないって言って辞めちゃった。あとは忙しかったしね。圭作も忙しかったけど。


圭作

俺、忙しかったっけ?


Taichi

「年賀状の印刷が終わんない」ってすごく言ってた(笑)。21時から3時間スタジオを取ってるのに、いつも来るのが最後の5分ぐらいで。


後関

「年賀状が終わらなくて問題」結構あったよね。柏倉くんが来れない、年賀状が終わんないって。柏倉くんが抜けた後、結構危うかったよね。4人だけになって。


圭作

そのあとくらいにtoeとの対バンがあったよね。


Taichi

あれって4人だったっけ?サポートで陽平(高田陽平)も入ってたよね?


圭作

いない、いない。toeのアー写に対抗して4対4のアー写を撮ったもん。


後関

あのライブがあったからstimは復活したんだよね。


圭作

10年もよく続いたなと思う。

CONTRAST [インタビュー] stim | お値段以上の音楽体験―


Taichi

柏倉くんが抜けて、陽平が入って、そこからは全然メンバーは動いてない。最初の1年ぐらいだよね、迷ってたのは。


圭作

もっとじゃない?3年ぐらいだったよ(笑)。


後関

そんなにメンバーが定まらない感じだったっけ?


圭作

うん。思春期的な感じだった(笑)。どういう風にしようかってね。

stimのオリジナルメンバーはTaichiさん、圭作さん、後関さん、松崎さんですか?

圭作

いや、ミキさんは途中からだね。でも俺とミキさん(Ba.松崎幹雄)は超長いんだよね。


松崎

そうだね。界の前から。


圭作

界の前にリズムスティルっていうバンドをやるって鉄兵(高橋鉄兵、kowloon)が言ってたのね。それで「ライブあるから手伝ってよ」って誘われたときに、ミキさんと鉄兵とウタコちゃん(ex.界 / ex.kowloon)とヒラヤマンっていうMCがいて、ミクスチャーヒップホップみたいなバンドだったんだけど、そこで知り合ったの。ミキさんと鉄兵は同じ高校なんだよね。


松崎

そう、中高一緒だよ。

へえ。そんな縁があったんですか。

Taichi

stimの前のベースだったミツル(ホテルニュートーキョー / ex.界)が辞めることになったときに、圭作が幹雄に声を掛けてくれて。


松崎

最初は何やってるか全然分かんなかったけどね(笑)。

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Taichi

ミツルは「これ、なんだろう?いいのかな、こういうのって?」みたいに疑問な感じでベースを弾いてたけど、幹雄は「これは変じゃない?」じゃなくて「頑張ってやろう」っていう感じでさ。


圭作

ミツルはゴセッキーと一緒で野党(笑)。


後関

俺、野党なの?(笑)


Taichi

否定から入るからね。


後関

それだと最近は与党だよ。他のバンドでは超野党だけどね(笑)。


Taichi

それで幹雄が入って、しっくり来た感じで。

恵比寿MILKと新宿リキッドルームの存在

界とかGROUPとかデートコースの固有名詞がありましたけど、皆さんが出入りしていたシーンって興味がありますね。

圭作

恵比寿のMILKなんじゃない?あそこでGROUPと界がやったりとか、デートコースと界がやったりしたこともあって。MILKと新宿のリキッドルームにはライブに出る出ないにかかわらず、みんな遊びに行ったりしてたよね。


Taichi

俺らがよく会えたのは、デートコースのおかげだと思うんだよね。みんなでデートコースを観に行ってたっていうイメージがある。


後関

覚えてる。俺もそこでTaichiくんと会ったんだよね。

CONTRAST [インタビュー] stim | お値段以上の音楽体験―


Taichi

そうだね。ゴセッキーにデートコースのライブにゲストで入れてもらって、みんなで観に行って会ってたっていうイメージが強くて。


後関

デートコースは年上ばっかりだから、同世代の友達がいなくて(笑)。Taichiくんとかが唯一の友達みたいな。


圭作

心の隙間をね(笑)。


Taichi

俺、芳垣さん(芳垣安洋)のローディーをやらせてもらってたから、それでよく頻繁に行っていて。


圭作

デートコースはかなり観に行ってたよね、YELLOWとかにさ。何年ぐらい前だ?


後関

2000年だよ、たぶんYELLOWでやったのは。


圭作

YELLOWの地下1階か2階にデートコースを観に行ったら、お客さんも全然20人ぐらいでさ。


後関

YELLOWのライブって俺が入った最初の日だもん。


Taichi

あ、そうだったんだ。


圭作

あとはGROUPとデートコースとTortoiseが新宿のリキッドルームでやったライブを観に行ったりして。完全に、Tortoiseよりもデートコースが良すぎた。たしかTortoiseがトリで、デートコースの後に観たら、なよなよし過ぎちゃっていて。あの日のデートコースはすごかった。


Taichi

デートコースに完全に食われていて、Tortoiseはパンチがなかったよね。もう大友さん(大友良英)はいなかったっけ?


後関

まだいたと思うよ。ほんと初期だよね。


圭作

あのときは雑誌がジャムバンド特集とかやってたよね。スタジオ・ボイスとか、インディーズマガジンとか、バァフアウト!とか。その辺のインタビューを結構受けたけど、今は受けないよね、あんまり。


松崎

受けない(笑)。


後関

来ないよ(笑)。


圭作

ブームが去ったから(笑)。


Taichi

いや、また来ると思うんだよね。


圭作

でも当時はORGANIC GROOVEが新宿リキッドでやっていてさ、MMW(Medeski Martin & Wood)とかLAKE TROUTとかCritters Bugginとかも来てさ。アイコアイコみたいなCD屋さんもあったじゃん。

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Taichi

やってたよね。


後関

よく行ってたよね。Taichiがソロをやってたときぐらいだよね。


後関

あー、よく観に行ったよね、俺。


Taichi

それが2000年ぐらい?もっと後だっけ?2005~2006年か。


圭作

Taichiのソロはすごく良くて。1stが一番良いね。


Taichi

圭作が言ってる1stは、いつも2ndのことだと思う(笑)。


圭作

Revirthから出してる『from the train window』だっけ。あれが一番良い。


Taichi

当時から考えるとさ、みんな忙しくなっていったよね。圭作もカエラちゃん(木村カエラ)を手伝うようになってから忙しくなったし、ゴセッキーもASA-CHANGやったり、在日ファンクやったりさ。運天(B.Sax.上運天淳市)も忙しいし、幹雄も陽平も自分の店をやったりさ(松崎は阿佐ヶ谷でNautilusというバーを、高田は目黒でカラビンカというダイニングバーを経営)。何も変わってないのは俺だけだよ(笑)。

どんな形でもいいから自分たちでやろう

2009年に1stアルバムの『EXPO3OOO』をリリースしていますけど、 結成してから7年経っていますよね。

Taichi

でも、それより前に『ON THE BROAD』っていうスケボーのDVDのサントラをやってるんだよね。あのときに陽平を誘ったのが一番デカかったと思うんだよね。あれでしっかり曲も出来たし、アレンジの発想もポンポン出てきたから。それで、このメンバーで固まったっていう。いつだったっけ?


圭作

2005,2006年とかじゃない?あのDVDは面白いと思うよ。stimのデモというか、Taichiが全部作ってきて、それをもとにして演奏してるんだけど、そこから派生した曲を今でもやってるから、元ネタみたいなものがそのDVDで聴けるっていう。「あ、この曲って最初こうだったんだ」っていうのを、スケーターの人をバックに知れるっていう。たしか10曲ぐらいあったよね。


後関

そこから形が変わっていくっていうね。


圭作

結局あれはトラックだもんね。ワンループでやってるんだけど、『EXPO3OOO』で録ったときは、全部に展開を付けてさ。

そのDVD貴重ですね。今でも買えるんですか?

Taichi

全然買えるはず。DVDにサントラ盤が付いて、3,000円ぐらいだったと思う。

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それから3,4年後に『EXPO3OOO』のリリースですね。

Taichi

あのときは、俺らは曲があったしアルバムを出したかったんだけど、出せるところがなかったの。レーベルから出さないとってことで、色んなところにデモを持って行ったんだけど、なかなか出してくれるところが見つからなくて。だから、最終的にどんな形でもいいから自分たちでやろう、っていう話になって。

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後関

みんなでお金を持ち寄ってね。圭作さんが「それだったら、自分らで出したほうがいいよ」って言ったのをすごく覚えてる。


圭作

Taichiの苦労を一蹴するみたいな、ひどいよね(笑)。でも、Taichiがそんなに回ってくれてるって知ってたら、言ってないよ。悪いもん、それはさ(笑)。

『EXPO3OOO』はウェブとライブ会場と、あとはユニオンとか一部の小売店のみで展開していましたよね。

Taichi

圭作の伝で、ディストリビューターを通さなくても置いてくれるところに協力してもらって。


圭作

FLAKE RECORDSとかstiff slackとかモルタル(MORTAR RECORD)とか、知り合いのところに置いてもらってね。タワレコとかには流通を通してないから置いてもらえなくて。でも、まあしょうがないなと思って、お世話になってるところに、さらにお世話になるっていう。

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今や『EXPO3OOO』は廃盤ですよね。

Taichi

たしかポーズ(池袋にあるカフェ)に4枚くらいある。


圭作

バカフェ(中野にあるWUJA BIN BINのVo.Baが経営するBAR)にも3枚ぐらいある(笑)。


後関

ウチにも1枚あるよ。


圭作

あ、マジで(笑)?でもよく売れたよね。

追加生産もしてないですよね。

Taichi

これはまだ決まってはないけど、今回の『NOON AFTER NIGHT』からワンクッション置いて、もう一回『EXPO3OOO』を出そうかって話していて。まあ、どういう形で出すか分かんないんだけどね。


後関

データかもしれないよね。


Taichi

プレスもしたいけど、あのままで出すのか、それとも何かまた入れるのか。

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