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CONTRAST [インタビュー] 新しい価値観と出会える場所

新しい価値観と出会える場所

中島佑介(プロフィール)

中島佑介

プロフィール 中島佑介
1981年生まれ、長野県出身。株式会社リムアート代表取締役。

早稲田大学商学部入学と同時に上京。学生時代にワタリウム美術館の『onSundays』にて古書について学ぶ。卒業後の2002年、共同経営者の廣田佐知子とともに早稲田の『ラ・ガルリ・デ・ナカムラ』内に古書&インテリアショップ『limArt』をオープン。2010年12月には代々木VILLAGE内に『liArt』の姉妹店にあたる『POST』をオープン。『limArt』では現代美術の企画展示と古書の取扱いに特化し、『POST』では、海外の出版社にフォーカスを当てた書籍を取扱い、定期的に出版社ごと商品を入れ替えるという独自のラインナップを展開している。

limArt ウェブサイト
POST ウェブサイト

恵比寿駅から南方面に位置する閑静な住宅街の中にlimArtは店舗を構えている。近年は優れた展示の開催からギャラリーとしての側面が注目されているが、そもそもlimArtは、本屋としてその歴史が始まったことはご存知だろうか。

印刷や造本に優れた海外の美術書(古書の割合が多くを占めている)を軸にしたlimArtの商品ラインナップは、アート・デザインに感度の高いアンテナを張るユーザーを中心に支持が厚い。いわゆるモノとしての本の魅力を伝えるDNAは、2010年に代々木VILLAGEにオープンした姉妹店POSTにも受け継がれ、POSTでは定期的に一つの海外の出版社に焦点を当て、その出版社の本だけを取り扱うという独自の選書を展開している。

大型書店のように幅広いジャンルや豊富な在庫を取り揃えていないが、limArtとPOSTはそれぞれのコンセプトに合った商品を、代表を務める中島佑介による選択と集中によって見極めて仕入れ、店舗を訪れる度に新たな作家や作品を発見できる場所として機能してきた。彼はどんな本や美術を扱いたいと考えて、それらを通じて何を発信しようとしているのか。limArtとPOSTの成り立ちから今後のビジョンまで、幅広く語ってもらった。

Text by Shota Kato Photo by Nozomu Toyoshima

本を通してならば、自分の興味の範囲をカバーできるかもしれない

中島さんはlimArtのオープン以前、学生時代にonSundaysワタリウム美術館内のミュージアムショップ)でアルバイトをされていたそうですが、まずはそこから遡ってお話を聞かせてもらえますか。

中島

学生のときからお店をやりたいなとは考えていたんですけど、きっかけは中学の頃のことなんですね。姉が東京にいて「東京でフリーマーケットやらない?」って誘われたんですよ。それでお客さんとのやりとりをフリーマーケットという形で経験したことで、「接客って面白いなぁ」と思ったんですね。

最初から「本屋がやりたい」という明確な目標があったわけではないんですね。

中島

僕はもともと洋服が好きだったので、最初は「洋服のお店をやりたいな」と思っていたんですね。大学の頃のことなんですが、ただ洋服を売るのではなく、しっかりと洋服の構造を勉強しておきたいということで、文化服装学院にダブルスクールで通っていたんです。洋服について学んでいく中で、これは僕の感覚としてなんですけど、「洋服の世界は自分が望んでいた世界ではないのかもしれない」というか、自分の肌には合わなかったんですよね。それから文化には行かなくなって、「お店をやるなら別の形のものがいいのかな」と、何をやりたいのか考え直したんですよ。

洋服から本という結論に至るまでには、どんな経緯が?

中島

洋服以外にも芸術だったり映画だったり、色んなことに興味があったんですよね。それを一つに絞りきることができなくて、「本を通してならば、自分の興味の範囲をカバーできるかもしれない」と思ったんです。それがきっかけで本を扱おうと決めたんですよ。

CONTRAST [インタビュー] 中島佑介|新しい価値観と出会える場所―

なるほど。onSundaysでのアルバイトはそれからですか。

中島

そうですね。大学2年からなので2年半ぐらいになりますね。Shelfさんってご存知ですか。

わかります。それこそワタリウムのご近所じゃないですか。

中島

はい。在学中に本屋を勉強したいということで、大学のサークルの先輩がShelfさんで働いていたことがあって。「Shelfでバイトしたいって言ってみれば?」って言われたんですね。それで紹介されて行ったんですけど、あまり「バイトさせてください」って言い出せる雰囲気じゃなく、そのまま帰ってきてしまったんですよ(笑)。それでワタリウムにふらっと立ち寄ったら、ちょうどonSundaysでアルバイトを募集していて。すぐに履歴書を送って、働くことになったんです。なので、onSundaysで働こうと思って行ったわけではなくて、偶然が重なって働くことになったというか。

実際にonSundaysでお店に立つことになって、どんなことを学びましたか。

中島

入るときには知らなかったんですけど、本のセレクトという意味で言うと、onSundaysは他の書店よりも偏ったセレクトだったんですよ。現代美術の中でもありとあらゆる現代美術の作家を扱っているというよりは、テイストがしっかりしたものが多くて、それが僕の好みだったんですね。もともと知らなかったアーティストが自分の好みだったということを、onSundaysの本を通して知ることができたので、僕の中で形になってなかったものがはっきりしていきましたね。もともと本自体は好きでしたけど、印刷や造本といった視点で本をモノとして面白いと教えてくれたのは、onSundaysでの経験でしたね。作家が作品として本というメディアを使って表現するアーティストブックだったり、写真集も写真家が編集に関わっていたり、モノとしてすごく魅力のあるものがonSundaysにはあったので、その世界観を知ることができました。

CONTRAST [インタビュー] 中島佑介|新しい価値観と出会える場所―

空間と本が繋がるようなお店

onSundaysのアルバイトをやっていく中で、limArtを立ち上げることになった経緯を教えてもらえますか。

中島

大学を卒業すると同時に本屋をやろうとは決めていたんですよ。なので、卒業という一つの区切りとともにonSundaysは辞めました。それからは自分で本屋をやるための準備を始めて。

お店を始めるにあたって、どんな初期コンセプトを掲げていましたか。

中島

日本であまり紹介されていないものをメインに扱いたいということと、onSundaysで経験したモノとして魅力的な本を扱いたいという二つがありました。本屋さんは本を売る場所ではあるんですけど、空間的に本を見せるお店はあまりなかったんですね。自分が本を読むときって、居心地のいい場所で読むので、もう少し日常というか、普段本を読む環境に近い形で本を選んでもらえる、空間と本が繋がるようなお店を作ってみたかったんですね。

CONTRAST [インタビュー] 中島佑介|新しい価値観と出会える場所―

今でこそlimArtは恵比寿にありますけど、最初に出店した場所は早稲田なんですよね。

中島

在学中にスミさんという影響を受けた方がいるんですが、スミさんの作る空間ってすごく魅力的な空間だったんですよ。僕は「本屋をやりたい」という相談をスミさんにしていく中で色々とアドバイスをもらっていて、スミさんが内装をしたギャラリーがラ・ガルリ・デ・ナカムラで、オーナーさんに僕のことを紹介してくれたんですね。出店する以前はホームページで扱っている本を見せる形にしていたので、オーナーさんにそれを見ていただいたら「面白いね」って言ってくれて。

その縁があって出店することになったんですね。

中島

ラ・ガルリ・デ・ナカムラは企画展だけなんですけど、展示の空いてる期間があったんですね。最初はギャラリーのスペース全体を使わせていただいて、不定期でオープンするような形だったんですよ。

本以外にも家具やインテリアも販売していたそうですね。

中島

本に関しては海外に買い付けてきて、やっぱりアーティストの名前ではなく、内容や造本が面白いと思うものを扱っていましたね。家具はフランスとかイギリスとか日本だったり、特に国を問わずという形で、モノとして魅力的な家具という括りでしたね。家具は共同経営者の廣田(廣田佐知子)が担当しています。

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