CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] 人と建物の新しい関係

人と建物の新しい関係

SNACKS(プロフィール)

SNACKS

プロフィール SNACKS
2010年11月、葉山に開設されたクリエイティブ複合施設。以前カラオケスナックだった3階建ての古ビルをリノベーションし、ものづくりをする人たちの拠点として生まれ変わる。1階はギャラリー兼貸しスタジオ。ユニバーサルスペースとして、展示会・展覧会やワークショップなどの開催に対応している。2階は宿泊可能な貸しスタジオ・Hotel SNACKS。1日1組限定で海に直結した贅沢なロケーションを堪能することができる。3階は最大9人が入居可能なシェアオフィス。どこまでも続く青い海に創造力を刺激される。設計担当は有限会社オンデザインパートナーズ(一級建築士事務所)。
※ 連絡先、アクセス手段などはホームページにてご確認下さい。
http://snacks.jp
http://www.ondesign.co.jp/top/index.html

古くから、海と密接な別荘地の象徴として語り継がれている葉山。近年は、その景観の魅力に加えて、葉山芸術祭の開催から、ものづくりとの親和性の高さも注目されている。そんな葉山に新たなエッセンスを加える建築物が、2010年11月に誕生した。建物の名称はSNACKS。もともとはカラオケスナック、それから別荘として利用されてきた背景を汲んで命名された。SNACKSには二つの特徴がある。一つは建物と海岸が直結する贅沢なロケーション。目の前に壮大な海が広がる立地は、地元では30年に出るか出ないかとまで言われている。もう一つは、幅広い用途に対応出来る、柔軟なスペックだ。設計を担当したオンデザインパートナーズは、3階建てのフロア全体を大胆にリノベーション。1階はギャラリー兼スタジオ、2階は宿泊施設、3階にシェアオフィスの機能を備え、クリエイティブ複合施設として再生した。これまで限られた人たちの間で利用されていた場所を、なぜ公共性の高い多目的な空間に設計し直したのか?実際にSNACKSを訪れ、リノベーションを担当した稲山貴則(オンデザインパートナーズ)に全貌を訊いた。

Photo by Koichi Torimura(1,2階と外観), On Design(3階), Shota Kato(人物)

リノベーションのきっかけは、台風による高潮。

もともとSNACKSはどんな建物だったんですか?

稲山

この建物自体が、出来てから25年くらい経っているんですけど、最初の15年はカラオケスナックとして使われていて。それから今のお施主さんが土地と建物を買って、その方たちの別荘になったんです。そのときのリノベーションを所長(西田司、オンデザインパートナーズ代表)がやったんですよ。

人と建物の新しい関係

お施主さんとは長い付き合いなんですね。

稲山

そうですね。西田が大学を卒業した頃から続いている間柄だから、SNACKSの打ち合わせはお施主さんの家でやったんですよ。ご飯も食べさせてもらって(笑)。

良い関係ですね。

稲山

西田は大学卒業後にすぐ独立したんですけど、設計した家の現場の前で、たまたま通りかかったお施主さんに声を掛けられたみたいで。そこから最初のリノベーションの話に繋がったっていう。

へぇ、そんな出会いから始まったんですか。ところで、どうして今まで使っていた別荘をリノベーションする話が出たんでしょう?

稲山

きっかけは、台風による高潮ですね。1階の窓ガラスを突き破って、建物の中に高潮が入ってきてしまって。この1階はダメージがすごくて、扉とかキッチンとかも壊れていました。

ガラスが割れるって末恐ろしいですね…。

稲山

その高潮は40年、50年に1回っていうぐらいの規模で、この海沿いにある他の建物もやられたんです。それでお施主さんからリノベーションの相談があったんですよ。

それは純粋に壊れた部分を直すっていう?

稲山

いえ。お施主さんからは、自分たちの別荘としてではなくて、たくさんの人に来てもらえる、公共性の高い場所を作りたいっていう依頼があって。もともとSNACKSはそこから始まった計画だったんです。

人と建物の新しい関係

葉山の海を多くの人たちと共有したい。

別荘だった頃は、それぞれのフロアはどういった使われ方でしたか?

稲山

1階がダイニングキッチンで、2階はリビングと寝室、3階はワンルームを賃貸物件として貸し出していました。1階で料理教室を開いたら、参加した生徒さんが喜んでくれたり。媒体から取材の依頼もあったりして。あとはレストランと間違えて入ってくる一般の人もいたみたいなんですよ。この場所にニーズがあることを分かったお施主さんは、そういう人たちが気軽に来れる場所にしたいと思って、温めていた想いをオンデザインに相談してくれたんです。

そんな経緯があったんですね。今は1階が多目的スペースで2階が宿泊施設、3階はシェアオフィスになっていますよね。この用途はお施主さんからの要望ですか?

稲山

いえ。お施主さんは絵を習っている方なんですけど、鎌倉のギャラリーで自分たちの展覧会を毎年開いているんですね。最初は、ここでもやりたいからギャラリーを作ってほしいっていう要望でした。でも僕らの中では、この立地でギャラリーだけだと厳しいんじゃないかって思っていて。そこで、もっとフレキシブルに色んな用途で使える建物を提案しようっていう話が出たんです。お施主さんの「葉山の海を多くの人たちと共有したい」という想いをコンセプトにして。

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じゃあ、お施主さんには、プレゼンのときに初めてその提案を切り出したんですか?

稲山

そうですね。ギャラリーっていう要望に対して、ギャラリーじゃないものを投げ返したっていう。

全く利用目的が異なる空間を提案したわけじゃないですか?プレゼンのとき、お施主さんの反応はどうでしたか?

稲山

すごく良かったですよ。1回目のプレゼンで「これでいこう」っていう話にまとまりました。

オンデザインはお施主さんの期待値以上の提案をしたと思うんです。どんな仕事でも共通していることですけど、期待値の調整って難しいですよね。

稲山

たしかにそうなんですけど、お客さんの期待値がすごく高くて困るということはないですね。どんどん要望を言ってもらった方が僕らも楽しいですし。そこから得られるインスピレーションも大きいので。