CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] 若さ故にできること、やれること

若さ故にできること、やれること

辻 友貴(cinema staff)×魚頭 圭(Z)(プロフィール)

辻 友貴(cinema staff)×魚頭 圭(Z)

プロフィール 辻 友貴(cinema staff)×魚頭 圭(Z)
辻 友貴(右)
1987年生まれ、cinema staffのギタリスト。

cinema staff
飯田 瑞規(Vo, G)、辻 友貴(G)、三島 想平(B)、久野 洋平(Dr)からなる4人組ロックバンド。2003年に飯田、三島、辻が前身バンドを結成し、2006年に久野が加入して現在の編成となる。愛知、岐阜を拠点にしたライブ活動を経て、2008年11月に1stミニアルバム『document』を残響recordからリリース。アグレッシブなギターサウンドを前面に打ち出したバンドアンサンブルと、透明感のあるボーカルで着実に人気を高めていく。2012年6月にポニーキャニオン移籍第1弾作品の1st E.P.『into the green』をリリースし、同年9月に早くもメジャー第2弾となる4thミニアルバム「SALVAGE YOU」を発表。
cinema staff ウェブサイト

魚頭 圭(左)
1977年生まれ、Zのギタリスト。

Z
根本 潤(Vox, Sax)、魚頭 圭(Gt)、弘中 聡(Dr)からなるロックバンド。2003年、THERE IS A LIGHT THAT NEVER GOES OUTのメンバーによって結成。2006年に1stフルアルバム『御壁』を自主レーベルgrok plastiqueより発表。catuneよりLP+DVDの二枚組バージョン、2007年にはイギリスのレーベルTRANSDUCTIONからCDのヨーロッパ盤がリリースされた。2009年には2ndフルアルバム『新今日』をCatuneよりリリース。2010年12月に根本 歩(ドラム)が脱退し、2011年初頭には弘中 聡が加入。様々なバンドとの競演や自主企画「Z会」を継続開催してきたが、2012年4月に突然の解散を宣言する。ラストアルバムは8月15日にリリースされた3rdフルアルバム『絶塔』。そのリリースツアーを以て、Zは歴史に終止符を打つ。
Z ウェブサイト

ひとえにライブと言っても、世の中には様々な形態のライブが存在する。今回はその形態の一つに、自主企画というものがあることを知ってもらいたいと思う。

自主企画とは、主催するバンドが競演したいバンドに声を掛ける、言わば、ラブレターを送るような側面を持っている企画だ。cinema staffは彼らの自主企画means filmを通じて、これまでにbed、aie、Discharming manなど、独自のスタンスで活動する先輩バンドたちと競演してきた。そして来たる12月11日に第4回目のmeans filmが開催されるわけだが、cinema staffが声を掛けたのは、来年2月16日に解散が決まっているZ。リアルタイムではないが、前身バンドのTHERE IS A LIGHT THAT NEVER GOES OUTの頃からのファンで、エモ、ハードコアといった音楽性だけでなく、シーンの礎を築いてきた活動スタンスに影響を受けてきた彼らにとって、Zは偉大な先輩バンドである。

cinema staffは今年の6月にポニーキャニオン、いわゆるメジャーのレコード会社から作品をリリースしている(マネジメントは残響のまま)。音楽を生業にしたい―その強い気持ちが、20代半ばの若者たちに音楽ビジネスの渦のど真ん中に身を置く覚悟を決心させた。一方でZは、前身バンドの頃から変わらず、日々の仕事と平行する形で、マイペースにバンド活動を展開してきた。過去3回のmeans filmでは、cinema staffも競演者たちと同じ立場にあったが、今年から環境がガラッと変わった。でもZとの競演には、自分たちが音楽に向き合う気持ちは何一つ変わっていない、そんな彼らの意思が込められているように映るのだ。

今回、cinema staffのギタリスト辻 友貴のたっての希望で、Zのギタリスト魚頭 圭との対談が実現した。世代もバンドの活動スタンスも違う両者、最初で最後の競演に向けて言葉を交わす。
撮影協力:PoPo, LIVE HOUSE FEVER

Text by Shota Kato Photo by アカセユキhttp://www.yukk.info/

お互いの印象について

辻くん、心の準備は大丈夫?

めっちゃ緊張してます。


魚頭

なんだよ(笑)。

(笑)魚頭さんは最初に辻くんに会ったときのこと覚えてます?

魚頭

いつ会ったかは覚えてないなぁ。


たしか、何かのライブのときに、アチコさん(Ropes / on button down / WUJA BIN BIN)に紹介してもらったんだと思います。それから何回もライブを観に行かせていただいていて。


魚頭

でも、ちゃんと喋ったことはないよね。


そうですね。この前の名古屋での打ち上げが今までで一番話したと思います。


魚頭

ZのツアーでskillkillsDOIMOIとHUCK FINNでやった時に、観に来てくれたんだよね。

cinema staffのことは知ってました?

魚頭

何回かTwitter上で辻くんの名前が出ていて、cinema staffのPVを見たことがあって。なんかさ、オペラシティみたいな場所で撮ってるやつなかったっけ?


あります、あります。


魚頭

あるよね。それを見た時の印象は、歌メロがすごくしっかりしていて、「あぁ、こういうバンドがいるんだな」っていう感じだった。

一方で辻くんは、Z以前から魚頭さんのことを知っていたんですか。

完全に後追いですけど、大学1,2年のときに名古屋のstiff slackに通い出したことがきっかけで、ゼアイズ(THERE IS A LIGHT THAT NEVER GOES OUT)を知るようになって。それから今はZをやっているっていうことを教えてもらったんです。それまで僕は色々な音楽を聴いていたわけではなかったので、とにかくゼアイズは衝撃的でした。でも、はじめてZの『御壁』を聴いたときは、自分には難しすぎて理解できなかったです(笑)。

元を辿ると、その当時の気持ちから今回のツーマンに繋がっているんですね。

そうですね。元々ファンでライブを一緒にやれるなんて考えたこともなかったんですけど、こうやって知り合えたり、Zが解散するっていう発表があったりして、やっぱりどうしても「一緒にできたらうれしいな」という気持ちがあって。それで思い切って声を掛けさせてもらいました。


魚頭

有り難いことだよね。


あとZ会にwozniakが出ていて、ウチらとwozniakは大分昔からの友達で同い年なんですけど、それが羨ましくも嫉妬でもあって。

CONTRAST [インタビュー] 辻 友貴(cinema staff)×魚頭 圭(Z) | 若さ故にできること、やれること―

cinema staffのような20代半ばのバンドとの交流ってあまりないんじゃないですか。

魚頭

そうだね。わりとZは自分たちで企画して誘うことが多かったから。でも、俺は普通にcinema staffの音源を聴いていて、クアトロのワンマンも観に行かせてもらったし、アルバムがすごく好きなんだよね。それこそ車で歌ってたぐらいに。


魚頭さんと話したときにそれが一番印象に残ってるんですけど、ウチらに「実験室」っていう曲があって、それをいいって言ってくれたのがすごくうれしかったんです。


魚頭

ライブを観に行かせてもらったときに聴けなかったのよ、間に合わなくて(笑)。だから、今度のツーマンのときは是非ともやっていただきたい。


ありがとうございます。そう言ってもらえて、すごくうれしいです。


魚頭

残響のバンドとは思えない(笑)。

cinema staffがZと対バンする意味

辻くんはどうして魚頭さんと対談したかったんですか。

僕らはZのファンで、ゼアイズを聴いていた世代で、その気持ちのままライブに誘わせてもらったんですけど、僕らとZのスタンスとか音楽性は全然違うと思うんです。

CONTRAST [インタビュー] 辻 友貴(cinema staff)×魚頭 圭(Z) | 若さ故にできること、やれること―

そうですね。それは当日ライブに来るお客さんも気になるところだと思う。

僕らのファンの人たちにZのことを知ってもらいたかったですし、僕個人としては、魚頭さんとちゃんと話したことがなかったので、どういう気持ちで今回のツーマンのオファーを受けてもらえたのかを知りたくて。でも、それを聞くのが怖かったというのもあって、思い切って対談という形で聞いてみたいと思ったんです。


魚頭

真剣に考えると、対バンすることの意味は色んな側面があると思うんだよね。例えば、仲がいいとか、音楽性が近いとか、レーベルが一緒とか。色々あると思うんだけど、cinemaは動員もウチらとは全然比にならないくらい多いし、メジャーっていうところでやっていて、自分たちのフィールドで頑張っているバンドじゃない?俺からはそう見えていて。そういうバンドが自分のやっていることに興味を持ってくれて、なおかつ一緒にやりたいと思ってくれる気持ちというのは単純にうれしいし、自分が辻くんぐらいの年齢の頃を考えると、なかなか踏み出しづらいところだと思うんだよね。

たしかに。かなり勇気の要る行動だと思います。

魚頭

俺はcinemaの音楽がすごく好きだし、それだけでOKすることも有りだと思うんだけど、なんて言うのかな…。対バンの意味を深く考えてしまうっていうか、答えはないんだけど、俺はZ会を企画している中でメンバーと決めているのは、自分たちが一人でもそのバンドを好きでなければ呼ばないっていうことなんだよね。

CONTRAST [インタビュー] 辻 友貴(cinema staff)×魚頭 圭(Z) | 若さ故にできること、やれること―

そのバンドの音楽が”好き”、という意味ですか。

魚頭

そうだね。動員がこれだけ見込めるとかじゃなくて、純粋にいいと思っている人たちとやりたい、刺激をもらいたいというのが根本にあるんだよね。そういう意味で、彼らがやっていることのフィールドがあるとしたら、そことはまた違うところでやっている俺らから刺激を受けるという意味で誘ってくれているのかもしれないなって思った。そう辻くんの立場になって考えたら、自分のできることは、その場にいて全力で自分の表現をやるっていう。単純にゼアイズとZが好きだったって言われること自体がうれしいし、それに対して還元できることってそういうことしかないかなって。だから、断る理由はないよね。


ありがとうございます。ゼアイズのディスコグラフィー盤が出たときのことについて、Zのブログの中で書いていたと思うんですけど、「前はそういうものは出す気はなかった。でも、今はこれを出す意味があると思って出す」っていうような文章を読んだときのことを思い出して、今の話と繋がっているなと思いましたね。僕自身、その音楽を聴いてすごく刺激を受けてきましたし。


魚頭

俺らがもっと若いときに、先輩のバンドたちから誘ってもらったりとか、一緒にライブやらせてもらったりとか、そういうことで得てきたものってすごくたくさんあるんだよ。逆に自分たちが下の世代の子たちにそういうことを出来ていたかというとさ、あまりしてこなかったなっていう実感はあって。例えば、Z会に若い子たちを積極的に誘って、規模は小さいなりにもフックアップするみたいな感覚はないんだけど、自分がしてもらったことをしてこなかったなっていう印象はなんとなくあって。偉そうに言うつもりはないんだけど、辻くんたちがそうやって言ってくれるのであれば、俺らでよければっていう感じなんだよね。

バンドの活動スタンス、音楽的ルーツの違い

cinema staffがZと対バンするmeans filmという自主企画について教えてもらえますか。

means filmは4回目で4年前からやってるんですけど、僕らは名古屋で活動していた時代にCLUB ROCK’N’ROLLっていうライブハウスにずっと出ていたんですね。当時はいわゆるギターロックが強いハコで、ウチらはそこでよくライブしていたんですけど、メンバーみんなが大学のサークルや色んなライブハウスに通うようになって好きな音楽が増えてきて、それでHUCK FINNにもライブをよく観に行くようになったんです。そしたら、HUCK FINNでもライブをやってみたいなっていう気持ちになってきて、実際にやるようになって。CLUB ROCK’N’ROLLでやる企画とは別のものができないかなっていうところから始まった企画なんです。

means filmとZ会には共通点があると思うんですけど、それは魚頭さんからもあった「そのバンドの音楽が好き」ということだと思っていて。

そうですね。ウチらが大学3年ぐらいのときって、卒業してからのことを考え出して、仕事をやりながらバンドをやるとか、バンドだけで飯を食っていこうとか、進路を決めるのに悩んでいた時期であって。僕らが好きなバンドには、仕事しながらバンドをやるっていうスタンスの人たちが多くて、それで最初の企画に誘ったのは、bedthe SHUWAAutumnleafeurekaだったんですよね。そういうスタンスでやってるバンドと一緒にやることで、その人たちがどういう音楽を鳴らしているのかとかを対バンして知りたいなと思って、ウチらが普段やらない組み合わせの対バンを敢えてやってみたいなということから始まった企画なんですね。

最初はそれまでと違う企画をやるとなって勇気も要ったでしょう?

たしかに勇気は要りましたし、それを結構面白がってくれたのが大きかったですね。the act(the act we act)とかと一緒にやって、「ウチらでも一緒にやれるんだ」と思えて。それでこうやって続けていられる感じはありますね。

cinema staffはずっと残響レコードでやってきましたけど、今年からメジャーのレコード会社に所属していますよね。今もマネジメントは残響のままですけど、それでもかなり環境が変わったと思っていて。

そうですね。ずっとバイトをしていたんですけど、それを辞めて、今は音楽一本でやってます。

音楽を生業にすることに挑戦し始めているんですよね。辻くんは、いま何歳でしたっけ。

25歳です。

魚頭さんは?

魚頭

35歳だね。

魚頭さんは辻くんと同じ25歳前後の頃って、どんなスタンスで音楽活動をしていたんですか。

魚頭

そもそも音楽で飯を食おうと思ったことはないんだよね。元々、自分が純粋にやりたいと思う音楽が沢山売れると思っていなかったし、そういう風に考えたことがなくて。もちろん自分がやっていることにお客さんが来てくれたり、CDが売れたりっていうことはうれしいし、ある種の実感に繋がるわけだけど、それと音楽を生活の糧にすることは俺の中ではイコールにならないというか。別に確固たる信念があって絶対にそうしないっていうわけじゃないんだけどね。

CONTRAST [インタビュー] 辻 友貴(cinema staff)×魚頭 圭(Z) | 若さ故にできること、やれること―

最初の個人インタビューのときに聞いたことでよく覚えてるんですけど、バンドとしての野望の話の中で、魚頭さんは「自分にはこういう活動をしたいっていう気持ちが一番にはない」って話してくれたんですよね。例えば、今までやってきたバンドの中で、アグレッシブに活動したいみたいな議論ってなかったんですか。

魚頭

いや、本当にないかな。19ぐらいのときにネモジュン(根本潤、Z / hununhum)とSWIPEをやるようになって、それ以来ずっとやってきているけど、そういうことはないかなぁ。それより前にやっていたバンドにメジャー志向が強いメンバーがいてさ、ライブハウスとか事務所のオーディションが当時はいっぱいあって出てたのね。俺はそれがすごく嫌で、そのバンドを辞めたんだけど。

どんな音楽性のバンドだったんですか。

魚頭

よく言えばジャンクだね。UNSANEみたいな。HIMOっていうハードコアバンドがいるんだけど、そのヴォーカルと一緒にやってたんだよね。


え!マジですか。


魚頭

それがSWIPEに入る直前ぐらいだから18の頃だね。


どういう目的で組んだバンドだったんですか?


魚頭

俺は単純にギターがいなくて誘われたんだよね。音楽性はUNSANEとかSHELLACとかが好きだったから、そういう音楽ができるっていうことと、俺もはじめて外で活動するバンドだったからやってみたんだけど、如何せんツテもコネもなかったから、昼間のライブに出てライブハウスの店長とかブッキングの人に気に入られたら夜の部に出れるとか、そういうのをひたすらやってたんだよね。


東京でやってたんですか?


魚頭

そうだね。俺は地元が埼玉なんだけど、東京でやってた。クラブチッタかどこかでスケボーキングとかとやる事務所のイベントがあって、それがすごく嫌でさ。たぶん1年もいなかったかなぁ。地響きっていうバンドだったんだけど。


そうだったんですか。僕らは結成したのって高校1年のときだったんです。


魚頭

メンバーは変わってないの?


ドラムだけ4人目なんですよ。そのときにやっていたバンドは、いわゆるジャパニーズ・インディーズのアジカン、バンプ、ACIDMAN、バンアパとか、そういった音楽が好きでやり始めたんですね。あとは飯田くん(飯田瑞規、cinema staffヴォーカルギター)の声もあって、わりとポップな方向のバンドをやろうかって。それで、なんとなく音楽をずっとやっていこうっていう感じで続けていたんですけど、途中からナンバーガールとかを聴くようになって、色んな音楽があるんだってことを知って変わってくるんですよね。飯田くんの声って独特じゃないですか。

CONTRAST [インタビュー] 辻 友貴(cinema staff)×魚頭 圭(Z) | 若さ故にできること、やれること―

そうですね。cinema staffの特徴の一つですよね。

でも、メンバーの中で「ハードコアって最高だよね」みたいになったときに、「飯田くんさ、もっとできないの?」ってなったことが一度あったんです。


魚頭

迷走期間みたいなものがあったんだ(笑)。


はい。「その声しか出ないの?もっと、めちゃくちゃな感じにやってくれよ」みたいに言っていた時期があって(苦笑)。それを越えたときに「あぁ、この飯田くんの声って大きな武器なんやな」ってことがわかってきて。だから、今は飯田くんの声を活かす形で、バンドを面白い方向に持っていけたらなと思っていますね。


魚頭

たしかに彼の声は武器になるよね。純粋に「あぁ、いい声してるなぁ」って歌がすーっと入ってくる。


それからポップな曲を作るようになりましたね。


魚頭

辻くんたちはBUMP OF CHICKENとかさ、日本のメジャーのバンドが好きで、要はそこがルーツなわけじゃない?それって結構デカいんじゃないかな。俺は元々音楽をやり始めたルーツはBOOWYとかだったりするけど、当時は自分がバンドをやるなんていう発想もなかったけど、自分がバンドをやろうとなったときに、目標としているバンドとかいるじゃない?俺の場合は、「こういうバンドみたいになれたらいいな」ってのがメジャーのメの字もないようなバンドばかりでそれでも俺はすごくかっこいいと思っていたから。別にそれが自分にとって普通だったしね。

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