CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] 願わくば中年の星に

願わくば中年の星に

ATATA(プロフィール)

ATATA

プロフィール ATATA
奈部川光義 : ヴォーカル(ex.BANDWAGON)
池谷龍人 : ギター(ex.HOLSTEIN)
鳥居大 : ギター(ex.HOLSTEIN, RetromaniA)
金田雅史 : ベース(ex.MIRROR, ex.HOLSTEIN)
岩田健太 : キーボード(ex.SWEEF)
大倉大輔: ドラム(nenem, 3cmtour)

2010年結成。自主企画「The Sound Of Fury」を定期的に開催し、ジャンルレスな共演者と共に各地でオーディエンスを巻き込み、主体的に働きかけている。2012年4月、満を持して初のフルアルバム『TATAT』を配信限定で発表。その後、セルフタイトル『ATATA』に改め、収録曲の内容を一部変更したライブ会場限定盤をリリース。8月22日には『ATATA』の全国流通版をリリースしたばかり。音楽産業における固定概念を取っ払い、独自の活動を展開している。11月3日、4日には無料音楽フェス『AT ZERO』を開催予定。
ATATA ウェブサイト

ATATAを紹介しようとすると、どうしてもメンバーの経歴から説明に入りたくなってしまう。いわゆる「元~、ex.~」という文言を用いて。

今回のDialogueでは、そんなプロフィールの定型句の行間を深く掘り下げていきたいと思う。

00年代のインディーシーンを通過してきた僕にとって、BANDWAGON、HOLSTEIN、JOURNAL SPY EFFORT(現MIRROR)、3cmtourといった名前を聞いただけで、ATATAがどれほど豪華なバンドであるかということはわかっている。でもその一方で、なぜ彼らが一つのバンドで音を鳴らすことになったのか、その理由を知りたかった。例えば、BANDWAGONとHOLSTEINはツアーを一緒に回る戦友だったけれども、それぞれが活動していたシーンはポストパンクとメロコア(ざっくりとした括りだが)。牽制していたと言うと語弊があるかもしれないが、お互いのシーンを行き来するバンドはほとんどいなかったように思うし、ことBANDWAGONとHOLSTEINの元メンバーについて言えば、異なる領域で活動していた彼らが交わらなければ、今のATATAは存在しなかったと思うのだ。

今回はフロントマンの奈部川光義(ex.BANDWAGON)とベースの金田雅史(ex.MIRROR / ex.HOLSTEIN)がインタビューに答えてくれた。聞くところによると、奈部川と金田はメンバー内で最も古い付き合いだという。二人が語ってくれたエピソードの数々から、ただATATAの結成以前を懐かしむだけではなく、各々がバンドの解散・活動休止を経て、再びバンドを始めた彼らの今をじっくりと読み取ってほしい。

Text by Shota Kato Photo by アカセユキ(www.yukk.info

ダメもとでナベさんに声を掛けてみよう。

これまでのインタビューで、奈部川さんと金田さんの組み合わせは珍しいんじゃないですか。

奈部川

そうですね。このシチュエーションはなかなかない(笑)。


金田

俺、今日は付き添いのつもりだったんですよね…。

すみません…(笑)。改めてATATAの6人は、どんな経緯でバンドをやることになったのか教えてもらえますか。

奈部川

ATATAの結成時に俺はいないので、マーシーから説明してもらいましょうか。


金田

最初はHOLSTEINが解散するってなったときに、三人(金田、池谷龍人、ATATAギター、鳥居大、ATATAギター)で新しくバンドをやろうかっていう感じだったんですよ。「せっかく知り合ったんだから、もうちょい遊ぼうか」ぐらいの気持ちで。その中でずっと別で一緒にバンドやライブをやっていたデンカ(大倉大輔、ATATAドラム / nenem / 3cm tour)を誘って、当時HOLSTEINでローディーをやってたイワシ(岩田健太、ATATAキーボード / ex.SWEEF)も入れて一緒にやろうかと。結成当時はイワシがヴォーカルだったんですけど、何回かスタジオに入ってもどうにもこうにもならず。謎のポエムをずっとやっていたり(笑)。

ポエムですか(笑)。

金田

あれはポエムっすね。あとはずっと下ネタを言い続けるっていう(笑)。「これじゃあ、どうにもならないな…」っていう話をした時に、「ちゃんとしたヴォーカルを入れようか」っていう話になって。何人か候補が挙がったんですけど、その中でもナベさんには声を掛けづらかったんですよ。

それはどうしてですか。

金田

その時点でATATAにはギターが二人いて、俺らにとってナベさんのBANDWAGONでのイメージはヴォーカル・ギターだったんで。トリプルギターでやるのも付け焼き刃っていうか、無理矢理感もあったり、あまり自然ではないなと。

なるほど。

金田

そういった話から、ナベさんにはダメもとで声を掛けてみようとなったんですよ。そうしたら、やってもらえることになって。ATATAの結成までにはそういった経緯があったんですよ。

最初にもう一度バンドをやろうと思い立った時は、特に歌ものとインストの区別も考えずに?

金田

僕はなかったですね。他のメンバーはヴォーカルがほしいっていう気持ちはあったと思うんですけど、俺はイワシさんのヴォーカルがダメってなったときに、別にインストでもいいんじゃないかって思ったんですよ。とりあえず、このメンバーでやれればいいかなぐらいの気持ちで、自然になるようになればいいかなって。

人重視だったんですね。

金田

でしたね。でもナベさんとは一緒にやりたいし、ナベさんが入ってくれるなら、いいバンドができるんだろうなとも思いましたし。俺、珍しくしゃべってますね…(笑)。

CONTRAST [インタビュー] ATATA | 願わくば中年の星に―

ははは!次は奈部川さんに聞きたいんですけど、BANDWAGONはいつ活動が止まったんですか。

奈部川

最後にリミックスアルバムを2007年に出して、「ちょっと休もうか」っていう話になったんですよ。その間に俺は私生活で大変な時期に入ってしまって、その間に逆に「またやろうか」って言っていたメンバーもいたんだけど、どうにもならずに。今度は俺の身辺が落ち着いて、そろそろやろうかなって思った頃には、逆にみんなの気持ちが冷めてたっていうか。その頃、ちょうどホル(HOLSTEIN)が解散ツアーをするからBANDWAGONに来てほしいっていう話をもらって。その時にメンバーみんなで集まって話をして、俺はやるならやるでちゃんとやろうって思っていたから、新しい曲を生み出せないんだったら、ただライブのために練習をするのは嫌だなっていう感じだったんですよ。それでメンバーと意見が一致せず、「やめよう」っていう話になって。そうこうしているうちに、俺は一人でも新しいことをやりたくなって。そしたら、ATATAに誘われたっていう感じですね。それまでは一人で日本語ラップをやろうとしてたんで。

その日本語ラップの件、インタビューを読んで知りました。日本語ラップに傾倒したのはどうしてですか。

奈部川

第一にもともとヒップホップが好きだったということもあって、一人でやろうってなるとできることって結構限られるじゃないですか。楽器だとアコギを持って歌うって感じになるでしょ?それだとつまんねえなと思って。なおかつ自分が違うことをやるなら斬新なほうが面白いし、「ヒップホップを聴いてるだけじゃなくて、ラップをやってみようかな」みたいなところからですね。BANDWAGONが止まってATATAが始まるまでに約3年間ぐらい空いてたんで、その間にヒップホップのライブを観たりとか、遊びでトラックを作ったりとかしていたんですよ。

なるほど。

奈部川

BANDWAGONをやる前に、俺はoatmealっていうバンドをやっていて。BANDWAGONを始めるまでにもブランクがあったんですよ。その時期に得たものがBANDWAGONをやる時に役に立っていて、今回も3年間くすぶっていた時に聴いていたものが今活きてるのかなっていう気がする。時間は無限にあったから、いっぱい音楽を聴けたということもあって。

CONTRAST [インタビュー] ATATA | 願わくば中年の星に―

ジョー・ストラマーになりたかったし、今でもなりたい。

奈部川さんは BANDWAGONではヴォーカル・ギターでやっていて、ATATAではハンドマイクでヴォーカルオンリーになりましたけど、ギターを弾きたくはなりませんか。

奈部川

今ではギターを持つのって曲を作るときしかないんですよ。たまに持つと重いなとしか思わないですけど(笑)、あんだけギターを弾きながら歌うことが好きだったのに、今は億劫になって。


金田

今のナベさんはギターが似合わないですね(笑)。


奈部川

そうそう(笑)。ATATAを始めて片手が空いたときに、最初はすごい恥ずかしかったなぁ。何していいのかわからなくて。タンバリンを買ってみたりしたんですけど、もはや今ではタンバリンさえ面倒くさいっていう(笑)。

以前と比べて、歌に対する意識って変わりました?

奈部川

マイク一本でやることになって、今まで以上に歌をちゃんとやろうと思ってますね。ヴォーカリストとしてちゃんとしなきゃなって。

歌いながらギターを弾く奈部川さんが見られないのは残念ですけど、存在感のある人だからヴォーカルのみでも違和感ありませんよね。

奈部川

状況に対応するのが早くて、結構きつい状況に置かれてもすぐに慣れちゃうんですよ。鈍感なのかもしれないんだけど(笑)。結果的に言うと、俺はギタリストじゃなかったんだろうなっていう感じはありますけどね。ただジョー・ストラマーになりたかったし、今でもなりたいから、ギターを持っている自分のイメージは常に頭の中にはありますね。

CONTRAST [インタビュー] ATATA | 願わくば中年の星に―

奈部川さんにはBANDWAGONとATATAで決定的に違うことが二つあると思っていて。それは今の話にあったヴォーカルに専念するようになったことと、もう一つは歌詞が英詞から日本語詞に変わったことだと捉えていて。

奈部川

ずっと英語で歌ってきちゃったので、最初は違和感があったっていうか。日本語は俺から考えたわけではなくて。

へぇ、奈部川さんのアイデアではないんですね。

奈部川

そうそう。デンカと池谷くんが「日本語で歌ってほしいんです」って言ってくれて。彼らが言わなければ、ずっと英語のままだったんじゃないですか。

最初から違和感なく入っていけました?

奈部川

ギターを外すときの気持ちと一緒で、慣れてないことへの気恥ずかしさみたいなものはありましたね。ずっとバンドをやってきた中で、自分の中では最先端のかっこいいことをやっているつもりなんだけど、英語で歌っていても発音から何から全部違うから外国人には伝わらないし、歌詞を読ませるまでわからないし。例えばeastern youthとかを見ていると、「俺も含めて英語で歌ってるやつ、馬鹿だなぁ」って思っちゃうこともあって。日本語で歌うことに対して、いつかはと思っていて、それが結局、人に言われてはじめてやったっていう。

個人的に英語・日本語で歌の好き嫌いはないんですけど、英語の場合、ニュアンスで誤摩化せる部分もあるんじゃないかなとも思っていて。

奈部川

夢だけが大きくて、「アメリカでライブがやりたいんだったら英語だ」って思ったんだけど、結局この歳になってバンドをやると、ドメスティックにやっていくしかなくて。俺らには仕事もあるし、アメリカでできる時間的な余裕はもうほとんどないんですよ。「だったら、届ける対象を日本人にしよう」って詞を書くときに思った。前みたいに「アメリカのバンドと同列に語られたい」みたいな気持ちはまったくなくなってしまって。

金田さんは日本語詞で歌う奈部川さんをどう思いましたか。

金田

練習で曲を作っているときとかは定まってはいなくて、ナベさんは試しながら歌っていたんですけど、最初に無料配信した「Fury Of The Year」をレコーディングしているときに、はじめてメロディーと歌詞の全貌を見たんですね。そのときの感動みたいなものはすごかったですよ。メンバー全員が鳥肌を立てて、「すごいぞ、これは!」って言ってたのをすごく覚えていて。

おぉ。

奈部川

そのときだけだったよね(笑)。


金田

(笑)そんなことないっす。毎回っすよ。

僕だけでなく、ATATAの音の輪郭からBANDWAGONとHOLSTEINを感じているリスナーは多いと思うんですよね。

奈部川

同じ人間がやってますからね。なおかつBANDWAGONで曲を作って歌っていたのが俺だから、当然”っぽさ”は出てきますよね。アレンジしてる人間たちが元HOLSTEINだからプログレッシブになるし。マーシーも言ってましたけど、ATATAは「こういう曲やろうぜ」ってところから始まってないんですよね。最初に俺が「Fury Of The Year」を持って行ったときも、俺はもっと彼らに方向性みたいなものがあると思っていたので、「え、いいの?」みたいな感じだったんですよ。だからそういう意味では、すごく自由だと思いますけどね。


金田

でもはじめは意識してたんですよ。やっぱりナベさんの声とメロディーは強烈だから、自分らもBANDWAGONっぽいなと思うところは「Fury~」の頃はあって。HOLSTEINっぽさみたいなものを入れないとっていう気持ちも多少はあったんですけど、そうすると上手くいかなかったんですよね。結果としてそういうふうに聴こえているのであれば、それはそれでいいんじゃないかなっていうぐらいで。

なるほど。そんな中でも「Star Soldier」は意外な一面を見せられた曲で、なぜか奈部川さんが飛鳥涼(CHAGE & ASKA)とダブるんですよね(笑)。

奈部川

それ、ほんとTwitterとかでもよく言われるんですよ(笑)。俺はチャゲアス好きだからうれしいんですけど。BANDWAGONのときって奇天烈なことや、みんなで考えて面白いと思ったことを無邪気にやっていて。だけどATATAだと、池谷くんとかはそれを譜面に起こしたい人なんですよ。直接譜面を書くわけではないんだけど、設計図を書かなきゃ気が済まない人で。ヘンテコな部分がより届くよう分析された上で曲になってるかなとは思うんですよね。また逆に、俺がホルを聴いていて、たまに面倒くせえなぁって思っちゃう感じとかは中和されてるのかな(笑)。

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