CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] 越えてゆく、自信を確信に変えて。

越えてゆく、自信を確信に変えて。

五味岳久(プロフィール)

五味岳久

プロフィール 五味岳久
LOSTAGEのベース・ヴォーカル担当。

LOSTAGE
五味岳久、五味拓人(ギター)、岩城智和(ドラム)から成るロックバンド。2001年、地元・奈良にて五味兄弟を中心に結成。現在も奈良在住。90年代洋邦のあらゆるロック的な音楽から影響を受け、地方発信、地域密着をモットーに独自の活動を展開している。結成当初はツインギターの4人編成であったが、幾度かのメンバーチェンジを経て、4thフルアルバム『LOSTAGE』から3人編成に。メジャー・インディーを問わず、様々なジャンルのアーティストとの親交が深く、Twitterでは五味兄の描く似顔絵「五味アイコン」が話題となり、似顔絵の展覧会を開催、五味アイコンブック『#oshare in DICTIONARY』も出版された。2011年に結成10年目迎え、自主レーベルTHROAT RECORDSを立ち上げる。ミニアルバム『CONTEXT』を経て、2012年7月11日に5thフルアルバム『ECHOES』をリリース。今夏FUJI ROCK FESTIVALへの初出演が決まっている。
LOSTAGE 公式サイト

前回のインタビューは2011年6月のこと。THROAT RECORDSを立ち上げたばかりの五味岳久は、自主レーベル設立の背景や今後の在りたいビジョンについて、事細やかに、かつ熱量を注いで語ってくれた。

「どうしようもなくなるまでやるしかない」「音楽だけで生活を成り立たせたい」という迷いのない言葉たち。あれから1年、LOSTAGEは歩みを止めることなく前進し続けて、自主レーベル設立後初となるフルアルバム『ECHOES』を完成させた。彼らと交流のあるゲストミュージシャンを迎え、メロウな歌モノ、疾走感溢れるハードロック、4人の時代を想起させるメロディアスなナンバーなど、LOSTAGEの今だけでなく歴史を感じさせる奥深い作品に仕上がっている。通算5枚目のフルアルバムは、現時点における彼らの集大成と言っても、決して過言ではないだろう。

今回のインタビューはレーベル運営という新たな役割を通じて得た、五味の経験談を中心に語ってもらった。前作『CONTEXT』から『ECHOES』に至るまでの約1年、五味岳久とLOSTAGE、それぞれの現在地を探る。

Text by Shota Kato Photo by アカセユキ

じわじわと「いけるかも」が「いける」に。

前回のインタビューが去年の6月だったんですよ。

五味

じゃあ、ちょうど1年前ですね。

フジロック決まりましたね。おめでとうございます。

五味

ありがとうございます。

僕もうれしかったです。

五味

結成11年目にしてやっと。決まるまでには何回か段階があったんですよ。ほぼ決まって、次に確定みたいな。じわじわと「いけるかも」が「いける」に変わっていったという感じで、公式発表できるってなった時はうれしかったですね。

CONTRAST [インタビュー] 五味岳久 | 越えてゆく、自信を確信に変えて。―

ステージはRED MARQUEEなんですよね。

五味

最初の時間帯ですね。

じゃあ、去年の8ottoと同じ環境ですね。

五味

そうそう。

去年はじめてフジロックにお客さんとして行ったんですよね。

五味

やっぱ8ottoが出るから行きたかったのと、俺らも出れたらいいなという気持ちもあったから下見も兼ねて。でも、ホンマに決まるとは思ってなかったです。

今年はかなり忙しいんじゃないですか。フジロックの出演以外にも新譜のリリースもありますし、ツアーも発表されていますし。

五味

そうですね。年内はライブをがっちりやる感じですね。

CONTRAST [インタビュー] 五味岳久 | 越えてゆく、自信を確信に変えて。―

四人でやっていたことをどうやって三人で超えるか。

新譜の話をお願いしたいんですけど、THROAT RECORDSを立ち上げて1年、去年のミニアルバム(『CONTEXT』)に続いて今年はフルアルバム(『ECHOES』)ということで、自分たちのレーベルからフルアルバムを出せることって感動もひとしおだと思うんですね。

五味

あぁ。でもね、アルバムとしては通算で5枚目なんですよね。たしかに自分たちのレーベルで初のフルアルバムという意識はあるんですけど、アルバムを出す度にリリースを大きな事件とは感じなくなりつつありますね。ルーティーンじゃないけど、コンスタントに毎年何かしらリリースするっていうことは、僕らがやるべきことという感じやから。

CONTRAST [インタビュー] 五味岳久 | 越えてゆく、自信を確信に変えて。―

前作から1年以内のリリースってはじめてじゃないですか?この前もCRYPT CITYとの7インチを出してますし、コンスタントにリリースを重ねてきましたよね。

五味

そうですね。甘えがなくなったというか。

前作と制作環境は基本的に同じで、奈良がベースになっていますよね。

五味

そうですね。アルバムなんで時間がかかっているというだけで、特別何かを変えたということはないです。前回と同じチームでやりましたし、環境も同じでベーシックは地元のNEVERLANDで録って、歌入れは東京のAVOCADO studioで録りましたし。

CONTRAST [インタビュー] 五味岳久 | 越えてゆく、自信を確信に変えて。―

「BROWN SUGAR」「真夜中を」「BLUE」「DOWN」辺りはもうライブで披露してますよね。

五味

「NAGISA」もこの前のライブでやったんですよ。

ミュージシャンご本人に伝えること自体がはじめてなんですけど、『ECHOES』は今の時点で過去最高傑作だと思ってます。

五味

まじっすか…。

…あれ?何かまずいこと言いました…?

五味

いやいや、ありがとうございます。ずっと聴き過ぎてるから分からなくなってきてるんですよ。作り始めて良い感触があって完成まで持っていってるから、自信がないわけじゃないんですけど、改めて一つにまとめてそう言われたらうれしいですね。一つの達成感があるというか。でもね、音楽に深く関わる人たちに良いって言われた作品は大体売れないんですよ(笑)。だから「これめっちゃ売れるんちゃうか?」みたいな期待は全然してないんです。でも、数字で結果は出したいから不安にはなってますね(笑)。

(笑)。もちろん現在進行形でバンドは進化しているんですけど、昔のLOSTAGEの輪郭が見えるメロディアスな曲もあって、バンドの歴史を感じさせる奥行きのある作品だと感じていて。

五味

そうなんですよね。特に意識して昔っぽくやろうという感じではなかったんですけど、できあがって最後まで通して聴いたら、メジャーで出した『DRAMA』っていう濃いアルバムと三人になってからはじめて出したアルバムの『LOSTAGE』との、ちょうど間ぐらいのバランスかなと思いました。

『BLUE』と『僕の忘れた言葉達』みたいに疾走感のあるメロディアスな曲は、三人になってからははじめてですよね。

五味

そうですね。そういったタイプの曲がないからやろうといった自覚はなかったんですけど、四人の時にやってたような曲をやりたいなと思ったら、かなりハマったというか。なんかね、三人になった直後はギターが一人減っているから、単純に音の情報量が減るじゃないですか。だから、四人でやっていたことをどうやって三人で超えるかみたいなことが大きなテーマだったんですよね。四人の時は足し算の作り方だったから三人の時は引き算。そういうやり方で超えていこうとして、音を抜いたり色々と試しながらやっていたんですよ。自主になってミニアルバムを1枚作ってから、三人でやることに慣れてきたというか、自然と四人でやっていた時のことを意識しないで、自然になりましたね。だから、三人で今やれることを自然に出した感じなんですよ。前はメンバーの数に極端にこだわっていたというか、メンバーが辞めるごとにダメージを受けていましたから。

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資料にありましたけど、五味さんたちはバンドを始めるきっかけになった音楽の影響を今も変わらず受け続けてるんだなって。

五味

影響を受けたものって自然に出てくると思うんですよね。今まで自分が吸収してきたものが無理せずに自然に出るというのが僕らのやり方なんで、自分がどこから来たのか、誰から影響を受けたのか、どういう音楽が好きなのかとか、作ったものに反映されていないのはおかしいと思うんですよ。僕らは何もないところから音楽を生み出すようなやり方をやってないから。細かく言えば、あの時代のあのアルバムが好きみたいにめちゃくちゃありますけど、大きく見れば、僕らの活動自体がロックへのオマージュみたいなものなんですよね。

例えば、オルタナの入口ってニルヴァーナなんですか?

五味

いや、ニルヴァーナがオルタナの入口は岩城だけなんですよ。聞いた話ですけど、岩城はドラムスタイルをデイヴ・グロールみたいにやろうと最初に思って、当時のニルヴァーナのライブVHSをコマ送りで見て独学で研究したらしくて。周りからもよく言われるんですよね。「デイヴ・グロールに影響受けてんな」って。僕ら兄弟はどちらかと言うと、90年代のメロディックパンクなんですよね。でも微妙にシーンが交わるラインがあったじゃないですか。例えばSNUFFK Recordsから出してた時に、レーベルのバンドにKarpとかDub Narcotic Sound Systemとか、ローファイとかオルタナ寄りの人たちやBECKとかもいて。ピープルツリーみたいな人の繋がりからオルタナに辿り着いたというか。

逆に新しい音楽から受ける影響ってないんですか?

五味

もちろん流行じゃない最新のかっこいい音楽とか、とんがってる音楽とかは聴きますけど、僕らは田舎で生活の基盤が出来上がっているから、そこまで情報を追いかけてレコード屋に頻繁に通ったりするわけじゃないんですよね。もともと自分が聴いていた90年代の音楽とかをいまだに繰り返し聴いていたり、その当時の持っていないレコードを聴くっていう方が多いんですよ。だから自分たちの音に聴いてる音楽の影響は出るけど、それが古いものだから出るものもそんなに新しくない。そんな感じになりますよね。僕らは中古レコードを買って、その影響が音を出るという感じですかね。

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メディアとしてアナログが生きていることを知ってもらえたら。

「NAGISA」や「これから」のようなメロウな曲には弾き語りの影響が大きいんじゃないかなと思っていて。

五味

そこはめちゃくちゃありましたね。自分でギターを弾きながら歌っていると、歌の大切さというか、昔はバンドの音に歌が埋もれて何を言ってるのか分からないとか、言葉の輪郭が見えにくくなっても、別に音が入口になっていればいいやって思ってたんですけど、だんだん歌詞の意味とか言葉のニュアンスとかを意識するようになりましたね。アコースティックでやり始めてから、「自分の声でしかできないことがあるんじゃないか?」と思うようになって。例えば、ベーシストがベースで自分にしか出せない音を作ろうとしたら、かなり大変なことやと思うんですね。既にある楽器や機材を使って音作りをするから。でも歌う人はもとから自分にしかないものを持っているから、それをどうやって使うのか、その使い方を自分で決めればいいんですよ。それを有効活用しようと。

CONTRAST [インタビュー] 五味岳久 | 越えてゆく、自信を確信に変えて。―

前作に引き続いてのゲストはアチコさん(Ropes / on button down / WUJA BIN BIN)ですけど、ライブで色んなミュージシャン仲間を迎え入れて曲を演奏してきましたよね。

五味

1時間とか長尺のライブになってくると、フックが欲しくなるんですよ。最後のほうでゲストの人が入ってやるのは僕らも楽しいし、それをお客さんが喜んでくれたら一番良いんですけど。アチコさんに関しては、家が近かったらメンバーに入れたいぐらいですね。電話とかSkypeでお互いによく相談しますし。あの人はキャパが広いから、僕らのレコーディングの時もイメージを伝えると、考えた上でそれ以上のものを出してくれるし、言わなくても良い感じに返してくれるんですよね。そういう意味でメンバーみたいな感じで一緒にやれてると思っていて。

個人的には、解散するZの二人も参加していることが感慨深くて。

五味

僕も引き受けてもらえてうれしかったです。アチコさんと根本さん(根本潤、Z / humunhum)と魚頭さん(Z / AS MEIAS)には、事前に音源を渡してお願いしました。でも、山下(山下勇樹、ベロドラマ / ボナンザグラム)は歌入れの時にたまたまいたんですよ。差し入れを持ってきてくれて。これからスタジオで練習なんて言ってたから、「ちょっと歌っていったら?」みたいな感じで言ったら歌ってくれることになって。辻(辻友貴、cinema staff)がやってくれてるタンバリンも僕にもできるんですけど、あいつもそこにたまたまいたから。「仲良いしさ」みたいな感じにね(笑)。

けっこう軽いノリでいけるんですね。レコーディングって聖域みたいなものじゃないんですか?

五味

そんなことないですよ。みんなでやってる感じが良いなと思っていて。

1曲目の「BROWN SUGAR」のシャウトも懐かしい手触りがありましたね。

五味

頑張りました(笑)。もともとアルバムは9曲入りの予定で作っていて、「BROWN SUGAR」は予定になかった曲なんですよね。オープニングのアルバムが始まる感じをもっと出したいなと思って、録音中に急きょNEVERLANDでオケを作って。漠然と叫ぶ感じで歌おうというのはあって、東京でヴォーカルを録る時に叫びまくったっていう(笑)。

CONTRAST [インタビュー] 五味岳久 | 越えてゆく、自信を確信に変えて。―

アタマから畳み掛ける感じと2曲目の「真夜中を」へのなだれ込み具合も絶妙というか。

五味

おっと思わせて続きを聴いてもらうというか、そこからメロディーのある曲に移っていくっていう。いつも曲順は悩むんですけど、今回の曲順はかなり考えましたね。あと今回はまたアナログを作るんですよ。レコードはレコード用の曲順があります。

かなり大幅に入れ替わりますか?

五味

曲順はうろ覚えなんですけど、A面はロックっぽい曲。B面は歌モノに分けたんですよ。たまたま5曲づつ良いバランスになってるんで、分けることで聴き方を変えてもらうのも良いかなと思っていて。

自主レーベルは自分たちが直接リスクを負いますけど、アナログとか特殊パッケージとか、やりたいことを形にできますよね。

五味

ぶっちゃけ儲からないですけどね、全部売れたとしても。アナログは売る場所も限られてきますし、金銭的なメリットはないんですよ。他のメリットがあるとしたら、メディアとしてアナログが生きていることを知ってもらえたらいいなと思って作っているというぐらいで。メディアの移り変わりと音楽の在り方は色んなところで言われていますけど、僕も僕なりに伝えたいというか。今回のアナログは、ジャケットがターンテーブルの上に乗せるスリップマットになっていて、その中に歌詞カードとレコードが入っているんですよ。音も聴けるし、ターンテーブルの上に置くマットも付いているっていう。ディスクユニオンが特典で色んなレーベルのスリップマットを作っていて、自分も作れんのかなと思って大阪のFLAKE RECORDSのダワさん(和田貴博)に聞いて、作れるところを探してもらいました。

五味さん自身もレコードプレイヤーを持ってますよね。

五味

部屋の中はレコードとCDと自分たちのバンドの在庫でめちゃくちゃになっていて(笑)。僕はCD世代でずっとCDを聴いて育ってきましたけど、レコードを買い始めると、CDが少し薄っぺらいものに感じるようになってきてしまったんですよね。別にアナログの音のほうが良いとか、そういうことじゃないんですけど。

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