CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] バンドのかっこよさとは

バンドのかっこよさとは

山嵜廣和(プロフィール)

山嵜廣和

プロフィール 山嵜廣和
toeのギタリスト。株式会社メトロノーム(Metronome Inc.)の代表・デザイナーとして、店舗・空間設計も手掛けている。

toe
日本を代表するインストゥルメンタルバンド。ダイナミックに展開されるエモーショナルな楽曲と感情剥き出しのライブパフォーマンスで、世界中の音楽ファンを魅了して止まない。最新作『The Future Is Now EP』を2012年6月20日にリリース。FUJI ROCK FESTIVAL 2012への出演が決定。2012年秋には初のヨーロッパツアーを予定している。震災チャリティ曲「Ordinary Days」が絶賛配信中。
toe ウェブサイト
Ordinary Days 特設サイト

新譜『The Future Is Now EP』のリリース間近にアップされた、正体不明の6人組(爆)による新曲「月、欠け」のカバー動画が話題沸騰中のtoe。長らく廃盤だった旧譜2タイトルも新譜と同日に再発、さらにはFUJI ROCK FESTIVAL 2012への出演決定(それも最大規模のGREEN STAGE出演)もアナウンスされ、toeを巡ってちょっとしたお祭りムードが巻き起こっている。

『The Future Is Now EP』は、配信を除いた単独音源としては実に約2年半ぶりの作品となる。前作『For Long Tomorrow』以降も、メンバー個々のtoe以外での仕事と並行して活動するスタンスは変わらない。限られた時間の中で、ライブやイベント出演以外にも、震災チャリティ曲「Ordinary Days」の配信やCM・ウェブ用の楽曲制作などに取り組んできた。その一方で、機材車の盗難というあまりにショッキングな事件にも遭ったが、彼らは着実に歩みを進めている。『The Future Is Now EP』からは、前作から一歩踏み越えた現在進行形のtoeを感じることができるだろう。

今回は前作以降のトピックスを中心に、ギターの山嵜廣和にインタビューを敢行。山嵜が語るバンドやライブに対する価値観を通じて、toeのぶれない活動スタンスの深層部に迫る。

Text by Shota Kato Photo by Nozomu Toyoshima

CDは音が聴けるグッズっていうことで良いんじゃない?

それ新譜の本盤サンプルですか?

山嵜

そうそう。

ジャケットのことから聞いていいですか?

山嵜

いいっすよ。

今回も変形ジャケットなんですね。

山嵜

ジャケがこう、ポスターになって。

CONTRAST [インタビュー] 山嵜廣和 | バンドのかっこよさとは―

おぉ、ケースはビニールですか?

山嵜

うん。口のところはシールで止めるんだよね。せっかく作るんだったら面白いものにしたいじゃん。別に音楽はCDでしか聴けないわけじゃないんだしさ。グッズ感がないと。音が聴けるグッズっていうことでいいんじゃないですかね。

高木耕一郎さんの絵のジャケもすごくいいですね。

山嵜

今年の頭にGALLERY TARGETで刺繍の個展があったでしょ?直接見に行けなかったんだけど、サイトで作品を色々見させてもらって良いなぁと。今回はなんとなく絵にしたくて、お願いしたらOKしてもらえて。2,3個候補をもらって、その中から決めたっていう。

違和感をコンセプトにアーティスト活動している方なんですよね。

山嵜

俺が好きなのって、ちょっと頭のおかしい感じって言うのかな。最初からさ、狂気が出てるものは好きじゃないのよ。なんとなくいいなぁっていうものをよく見ると、頭おかしいみたいな。そういうものが全般において好きだからさ。音楽とかも最初からアバンギャルドなものは興味がないんだけど、一見、さらっと聴ける曲をよく聴き直すと、すんげえ気持ち悪いことやってるみたいなものとかは好きなんだよね。

自分の考えているような未来が現在。それって一緒?全然違うでしょ?

去年は配信のリリースがありましたけど、盤としては前作(『For Long Tomorrow』)からけっこう空きましたね。

山嵜

前のアルバムがいつだっけ?

2009年の12月ですね。

山嵜

2年半も前なんだね、あれ(笑)。

今回のタイトルの「The Future Is Now」ってメッセージ性が高いなって思うんですよ。やっぱり「Ordinary Days」という曲が入っているから、去年のことは抜きにして語れないと思っていて。

山嵜

うんうん。

社会的には震災が起きて、原発の問題は今も続いていて。toeには機材車の盗難がありましたし、山嵜さん個人としても、奥さんのことが。

山嵜

そうっすね。でも、前向きなメッセージとかはないよ。コーエン(ジョエル、イーサン・コーエン兄弟)の映画に『未来は今』ってあるの知ってる?

CONTRAST [インタビュー] 山嵜廣和 | バンドのかっこよさとは―

あぁ、90年代のアメリカ映画でしたっけ?

山嵜

そうそう。俺、あれが超好きなんだけど、原題は『The Future Is Now』じゃないんだよね(『The Hudsuckers Proxy』)。舞台になってる会社の名前だっけな?たしかそうだったと思うんだけど。でも日本のタイトルは『未来は今』で、それを直訳すると『The Future Is Now』なんだよね。だいたいのことにおいて、自分の考えているような未来が現在なんだけど、それって一緒か?って言えば、全然違うでしょ?っていう。そんなにポジティブな感じではないんだよね。2,3年前に、今の俺がこういう暮らしをしているということなんて、まったく以て想像できないだろうし、地震前後で全然違うじゃん?あの1日のことだけでさ。『未来は今』っていう語感はすごく好きで、機会があれば使いたいなぁって昔から思っていたのが今回だったっていう。

じゃあ、これまでと変わらずという認識で大丈夫ですか?

山嵜

そうだね。基本的にはこれまでと一緒で、今回もどんなものにしようとは考えてない。アルバムにしてもEPにしても出来た曲を録るというか。今回は録り始めたのが去年の6月ぐらいで、楽器の録りはほとんどその時に終わってるんだよね。アルバムを作るのは時間が掛かって録れないけど、何か出そうかと。4曲録った後に仮ミックスはしたのかな。その後の流れを決めようとしていた時に機材が失くなっちゃって、そのまま置きっ放しになってたんだよね。「どうする?」ってなったけど「出さないともったいないよね」ってことで、ちゃんとしたミックスをして足りないものを入れたり、それから発売を決めて仕切り直した感じで。結局、発売日も1ヵ月ずらしたんだよね。間に合わなくて(笑)。

CONTRAST [インタビュー] 山嵜廣和 | バンドのかっこよさとは―

機材の盗難がなければ早くリリースできたってことですか?

山嵜

うん、そうだったと思う。

機材の件は改めて重たすぎる出来事でしたね…。

山嵜

まあね。でもしょうがないよ。「モノに対する執着はやめなさい」と言われている感じがして。俺は「何使ってもできるっしょ」って感じはありますけど、美濃くん(美濃隆章、ギター)は大変だけどね。俺らのはライブの機材だから、言ってもそんなに高いものじゃなくて。アンプが十数万とかさ、俺のギターなんて十万もしないし。俺なんかはトータルで三十万とかだと思うんだけど、美濃くんはレコーディング機材がすごいから。

ビンテージの録音機材とか。

山嵜

そうそう。買い直せないものもあるけど、美濃くんも踏ん切りが着いた部分もあるんじゃないかな。

借りたりシェアしたり。

山嵜

結局は道具っていうか「耳があればいいんじゃないの?」っていう。機材ありきで音楽をやってるわけじゃないからね。あったほうがいいんだろうけど。

テーマに沿ったものを作るより、やりたい曲を集めるのに精いっぱい。

「Run For Word」と「Ordinary Days」はEPありきで作った曲ではないですよね。

山嵜

そうだね。この4曲がさ、そもそも今回のために録音しようとして作ってないんだよ。1曲目(「Run For Word」)はウェブサイト用に頼まれた曲を元にしてるし、「Ordinary Days」は震災の時に作った曲だし。間に挟んだ2曲が新曲なんだけど、ACOちゃんの歌のやつ(「月、欠け」)は最近の俺らの感じでしょ?

そうですね。toeらしいなって思いますね。

山嵜

ああいうのが好きなのね。あれも歌メロとかはなんとなく考えていて、歌詞は全然出来ていなかったんだけど、仮歌も入っていて。誰に歌ってもらおうとかも決めてなかったし、最初は自分で歌おうかなぐらいに思ってたんだよね。

ACOさんってもともとどんな繋がりなんですか?

山嵜

去年ぐらいにACOちゃんのライブを見たんだっけな。ベースを憲ちゃん(中尾憲太郎、Crypt City)が弾いてるからさ。すごく良くて是非お願いしたいという話をして、やってもらったっていう。ACOちゃんのことはもちろん知っていて歌もすごく好きなんだけど、それまでは直接繋がりがなかったので。

作詞はACOさんですか?

山嵜

いや、俺だよ。でも歌詞作るの慣れてないからさ、半分くらい作ってACOちゃんに「これを元に最後まで作ってくんない?」って言ったんだけど、歌詞のテーマとか内容を説明したら「そんなにイメージ決まってるんだったら、ギリギリでいいから自分で書きなよ」って言われちゃって(笑)。なんとか前の日までに作って。

CONTRAST [インタビュー] 山嵜廣和 | バンドのかっこよさとは―

「月、欠け」はアナログプレスするんですよね。

山嵜

A面はオリジナルのとインストで、B面にBudaくん(Budamunk)の歌がないやつでワントラック入っていて、また違うトラックでSick Teamのラップが入ってるやつがある。すんげえかっこいいです。

「The Future Is Now」も『New Sentimentality EP』以降のtoeですよね。

山嵜

最後の曲は柏倉くん(柏倉隆史、ドラム)が元曲を作ってきてくれて、それを皆でエディットしつつやった感じなのね。だから前のアルバムのホーンが入ってる曲(「Our Next Movement」)みたいに、すごく分かりやすく「こうしたいんだ」っていうよりも、なんとなくその辺は昇華して「今はこういうふうになりました」って感じにはなっている気はするんだけど、分かりやすくこれをこうしたっていう感じではないかな。

まさに現在進行形というか。

山嵜

そうだね。録りながら作っているし。

さっきありましたけど、1曲目の「Run For Word」はウェブサイト用っていうお題ありきで作った曲じゃないですか。たぶんtoeの曲だとはじめてだと思うんですけど。

山嵜

あぁ、そうかもね。お題もさ、何のリクエストのないものもあれば、なんとなくざっくりしていて後はお任せみたいなものもあるし、あとはすごく細かく「ここはこうしてほしい」みたいなものもあるんだよね。このときはざっくりで、お題を見て好きなようにやらせてもらった感じかな。

お題繋がりで言うと、CM音楽もそうですよね。ポカリのシリーズは既存曲をCM用に再録しているじゃないですか。

山嵜

あれは完全にCM用だから1分半とかなんだよ。最初のやつはウチらのバンドでって依頼が来たんだけど、すごく短いんだよ、頼まれてから納品までが。2週間とかだったかな。

普段の制作スケジュールを考えると、かなり…。

山嵜

俺らのペースでは無理だと思ったよね(笑)。なので、1回目は「I Dance Alone」を変えたやつにして、合計3回やったんだけど、その後はこういう感じのっていうお題はありつつも、「新録でお願いします」みたいな。「Long Tomorrow」の時はマイアちゃん(マイア・ヒラサワ)、「After Image」Shing02とやってくれっていうリクエストがあったのかな。

今日来る前に「Ordinary Days」のサイトを見たら、20000ダウンロードを超えてましたね。

山嵜

あざっす。地震があって次の日ぐらいに出そうかっていう話はして、18日にはアップしたのかな。

CONTRAST [インタビュー] 山嵜廣和 | バンドのかっこよさとは―

toeはどうしてコンセプトもののアルバムを積極的に作らないんですか?

山嵜

それは常に何かを録音しなきゃいけない人の手段の中のひとつな感じがしていて。テーマを決めたほうが早いんじゃない?すごい量を生産して出していく人たちの一個の手段な感じはするよね。俺らはそういうテーマに沿ったものを作るより、やりたい曲を集めるだけで精いっぱいってな感じなんだよ。アルバムみたいな十何曲にどうにかしてしようとやってるから、俺らのペースだと(笑)。俺らに関しては、ただとりあえず曲の頭数合わさなきゃみたいな感じだから。

山嵜さんの場合、どんなタイミングで曲作りをしてるんですか?

山嵜

ギターを触れる時に思いついたのを貯めとく感じかなぁ。昔みたく音源を作る予定のない時に、じゃあ新曲を作ろうかとはならないね。とりあえず「音源を作らなきゃいけない。じゃあ4曲なきゃ駄目だね」ってことで作るみたいな。でも作るって言ってもさ、もともと俺がギターのリフを録ってた要素をピックアップして作るっていう感じなんだけどね。録音の予定ないのに1日かけて新曲のデモテープを作ったとか最近はない。そんな暇はないっていう(笑)。

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