CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] 開かずの引き出しを開ける勇気

開かずの引き出しを開ける勇気

木幡太郎(プロフィール)

木幡太郎

プロフィール 木幡太郎
avengers in sci-fiのギター、ヴォーカル、シンセサイザー担当。

avengers in sci-fi
メンバーは木幡太郎、稲見喜彦(ベース、ヴォーカル、シンセサイザー)、長谷川正法(ドラム、コーラス)。ギター、ベース、ドラムスという最小限の3ピース編成でありながら、シンセサイザー/エフェクト類を駆使したコズミックで電撃的なロックを響かせる。“ロックの宇宙船”とも称されるこのバンドは、高校の同級生であった木幡と稲見によって2002年にスタート、大学で長谷川と出会い現在の編成に。メロディック・パンクのカヴァーに始まりテクノ/ダンス・ミュージックへの傾倒を経て、数々のエフェクターを導入し独自の近未来的ロック・サウンドを展開。2009年12月にメジャー・デビュー。それまでのロック、パンク、テクノ、エレクトロに加え、クラシック、オペラ、ゴスペルの要素も自由に操り更にパワーアップ。その高い音楽的IQが評価され、同年には木村カエラのシングル『BANZAI』をプロデュース。2012年4月25日に4thフルアルバム『Disc 4 The Seasons』がリリースされたばかり。

avengers in sci-fi 公式サイト

avengers in sci-fiが4枚目のフルアルバム『Disc 4 The Seasons』をリリースした。宇宙やSF近未来的エッセンスは今作も健在。いつものように彼らのサウンドは僕らを異次元に瞬間異動させてくれる。ところが作品の中で描かれている世界観は、これまでとどこか様子がおかしいのだ。

例えばシンセサイザーが琴のように鳴っていたり、ドラムに和太鼓のような響きがあったり、断片的な和のテイストがちらほら。それはサウンド面だけでなく、木幡太郎が綴る歌詞の中でもっと顕著に表れている。例えば「よにふる」「うつりにけり」「こそすれ」といった言葉選び。つまり古典古語が用いられているのだ。「マホロ」(まほろ)や「UH-RA-RA」(うらら)も同じ類のもの。宇宙やSF近未来的な世界観を表現してきたavengers in sci-fiが、なぜこのタイミングで日本の普遍的な情緒や文化を?宇宙空間からオゾン層、地上へと視点が下りていた理由を木幡に訊くと、そこには自身の原体験が大きく関わっているという。

桜の花が五分咲きを迎えた春うららの季節に、彼固有の様々なエピソードを話してくれた。

Text by Shota Kato Photo by Takuya Nagamine

もっと自分の中から出てきたものを自分の視点で歌いたい。

アルバム、とても良かったです。度肝を抜かれました。

木幡

ありがとうございます。

内容はもちろんですけど、うっかりタイトルは4枚目の「4th」と「Force」を掛けてくるのかと(笑)。

木幡

あぁ、スターウォーズで押し切ってくるみたいな(笑)。

そうです(笑)。『Disc 4 The Seasons』というタイトルですけど、アルバム全体に季節の移り変わりが描かれていますよね。

木幡

季節をテーマにしたというか、アルバムのコンセプトを意識して曲を作ったアルバムではなくて。かなり曲単位でバラバラに作っていったというか、今まではわりと凝縮された時間の中で、1,2ヵ月の間に集中して、10曲ないし11曲を作るっていうことが多かったんですけど、今回は去年の3月頭ぐらいから曲作りは始まっていて。年間を通して曲作りとライブを並行してやっていたんですよ。

なるほど。

木幡

一曲一曲の間に関連性はないんですけど、それでも揃った曲を見直した時に「この中に共通して流れているものは何か?」ということを考えたら、季節の移り変わりを感じながら、その気持ちを曲の中に反映していったっていう制作のプロセスがあることに気付いて。だから、アルバム全体のフィーリングとして四季をテーマに掲げたというか。

CONTRAST [インタビュー] 木幡太郎(avengers in sci-fi)|開かずの引き出しを開ける勇気

実生活の延長っぽいですね。

木幡

そうですね、かなり。

じゃあ、明確なコンセプトアルバムではないと。

木幡

そうですね。前作の『dynamo』が一曲目からラストまで通して聴いた時にはじめて感動に溺れられるというか、コンセプトアルバムを前提に作ったアルバムで、今回の『Disc 4 The Seasons』は季節云々を意識して聴いてもらうというよりは、その日の気分に合わせて聴きたいところから聴いてくれっていう。どちらかと言うと、コンセプトに合わせて楽曲を揃えたというよりも、楽曲の成り立ちからコンセプトが浮き上がってきましたね。なんとなく揃ってきた曲の象徴として「4 Seasons」という言葉があるんですよ。

なるほど。「四季に作った曲たちです」ということが伝わればいいと。

木幡

「一年掛かりましたよ」という、その程度のものなので。

今作の世界観って、これまで描いてきた宇宙や未来といったものとは、ある種対極的にあたると思っていて。同じ木幡太郎という人間の中から出てきたものではあるけれども、全体的にノスタルジックな印象を感じるんですよね。明らかに視点の変化があったと思うんですけど、そこについて教えてもらえますか?

木幡

単純に飽きてしまったというのが一番大きいんですけど(笑)、今までのavengers in sci-fiの音楽は、言ってくれたように自分の中から出てきたものであって自分自身が投影されているんですよ。どこまでもストーリー的な視点で自分の中から出てきたものではあるんだけど、それを第三者的な俯瞰した目線で見ている。そういった作り方をしていたんですね。でも、そういうものに飽きたっていうか。

CONTRAST [インタビュー] 木幡太郎(avengers in sci-fi)|開かずの引き出しを開ける勇気

それはどうして?

木幡

もっと自分の中から出てきたものを自分の視点で歌いたい。ずっとそうありたいと思っていたんですよ。結局のところ音楽は自己表現だというのが究極のあり方だと思っていて。僕は自分を知ってもらいたいっていうところが音楽を作る出発点になっているんですけど、それを知ってもらったところで最高に自分の痛いところとか醜悪な部分を覗かれてしまう。そこに抵抗や恥ずかしさがあったんですよね。矛盾しているんですけど(笑)。

でも出来ることなら、自分のかっこいいと思える部分だけを見せたいですよね。

木幡

そうそう(笑)。今まではそういうストッパーが掛かっているが故のストーリー的な世界だったと思うんですよ。今回からようやくそういったものを取っ払えたというか。そういう意味では、今までで一番痛くてかっこ悪いアルバムだと思っていて。でも、世界観としてはすごく自分目線から見た世界だし、俯瞰した曲は一曲もないというか、自分の中から出てきたものを、方向を変えずに作品に仕上げたというのはありますね。

パーソナルな視点に変わることに対して、メンバー間でディスカッションしたんでしょうか?

木幡

ウチのバンドはディスカッションを全くしないんですよ。メンバーからしたら、インタビューとかで話していることを目にすれば「あ、そういうこと考えてたんだ」って初めて知る感じじゃないですか(笑)。

あまり干渉し合わないんですか?

木幡

なんだろうな…。補完し合える人たちが揃っているって言うんですかね。お互いの足りないものを補える人たちが。僕と稲見(稲見喜彦、ベース / ヴォーカル / シンセサイザー)なんかは高校時代からコピーバンドをやっていて、CDの貸し借りなんかを通じて、遠からず近からずなものを共有してきてはいると思っていて。でも、長谷川先生(長谷川正法、ドラム / コーラス)に至っては、何を聴いているのかさっぱり分からないですからね。一説には自分の曲以外を聴いたことがないっていう。神の領域なんじゃないかな。ミスタービッグを聴いたことがあるのは判明しているんですけど(笑)。

自分の原体験や心象風景といったものに忠実でありたかった。

『Disc 4 The Seasons』というアルバムは、地球に帰還した宇宙飛行士みたいだなって思っているんですよ。

木幡

たしかにそうですね。『avenger strikes back』や『SCIENCE ROCK』の頃に頭の中で描いていた映像は近未来SF的な世界でしたけど、今回は地球的な、自然的なものを思い浮かべながら曲を作っていきましたね。電気的な音色に関しても「フューチャー」だとか「スペース」っていうイメージよりは、自然的な太陽の光が差し込むような感覚だったり、花びらが舞い散るような感覚だったり、そういったものを想起させる音を目指したっていうか。そういうところから自然的だったり、季節的だったりっていうフィーリングは伝わるかなと思うんですよね。

そういった視点の変化について、サウンド面の話を聞かせてもらいたいんですけど、今回はシンセが琴っぽい使い方だったり、和的なビートや祭囃子的なサンプリングも使っていますよね。リズムの面では、ドラムに和のニュアンスがあったりして。

木幡

まず音楽的な話をすると、ここ何年か聴いていたUK / USのインディー寄りのバンドが、わりとトライバルな音楽だったんですよ。トライバルと言っても非欧米的なトライバリズムというか、アフリカ的なものだったり、欧米でもアングロサクソン圏じゃないスペインのバスク地方のリズムだったり。M.I.A.が出てきた辺りから、そういったアプローチがフォーカスされ始めたと感じていて。

年々スポットライトを浴びるようになりましたよね。

木幡

BATTLESとかもその流れに入れていいと思うんですけど、そういったトライバルな認識のグループが多くなったなと感じていて。個人的にはDELOREANとかCRYSTAL FIGHTERSといったスペインのバンドを聴いていたんで、それらのバンドのスタイルを解釈するにあたって、猿真似にはしたくないというのがあって。単純に僕らがアフリカンやらバングラビートをやり始めたところで、それはただの模倣だし表層的なものになってしまうじゃないですか。安っぽい模倣ほど醜いものはないし、日本人の僕らが咀嚼したらというところでひとつ浮かんだのが、和太鼓とか和のエッセンスを感じさせるようなビートだったんですね。

あれはまさに太鼓を使っているんですか?

木幡

太鼓を入れたり、太鼓に聴こえるようにアレンジをしたり、色々なものを使っていますね。例えば、普通のドラムのタムはもちろん入っていますけど、和太鼓も入っているし、電子ドラムのサンプリングパッドの音色も使っていて。すごくこだわったのは、スネアにスプラッシュシンバルっていう小さいシンバルを乗せて、ミュートをかけて叩くとすごくエスニックな音色になるんですよ。

個人的には長谷川さんが太鼓を叩く姿が想像つかなくて(笑)。

木幡

(笑)。たまたまスタジオに和太鼓があって、それをふんどし一丁で叩くっていう画を動画で録っておこうかと思ったんですけど(笑)。ねじりはちまきぐらいはやりましたね。

(笑)。

木幡

単純に和太鼓を叩けばそう聴こえるかと言えば、そういうものではなくて。和太鼓を連想させるような祭囃子っぽいものを意識しましたね。音楽的なところを離れて精神世界的な話をすると、自分の原体験や心象風景といったものに忠実でありたかったというか。

CONTRAST [インタビュー] 木幡太郎(avengers in sci-fi)|開かずの引き出しを開ける勇気

例えば、どんな原体験ですか?

木幡

ジブリ的な世界観っていうか、スターウォーズやバック・トゥー・ザ・フューチャーもそうなんですけど、ジブリ作品も自分の中では原風景的なものがあるんですよ。

ジブリはどの作品が好きですか?

木幡

原風景とか言いながら、ナウシカが好きなんですけど(笑)。

もろにSFファンタジーじゃないですか(笑)。

木幡

ナウシカにしてもSFではあるんだけど、日本人の琴線に近いと思うんですよね、劇中の音楽も含めて実は日本的というか。「となりのトトロ」は原風景の最たるものだと思うんですけど、久石譲的な旋律って言うんですかね。

久石譲さんで言うと、北野映画にも通じる要素もあるんじゃないかと。

木幡

実は今回の太鼓セクションは、北野武監督の座頭市からインスパイアされている部分もあって。祭囃子とタップダンスと金髪の座頭市がごちゃまぜになっているあのミックス感をかなり意識したんですよ。桜吹雪の中でライトセーバーを持った侍がチャンバラしているっていう(笑)、そういった画を想像して作っていましたね。

太郎さんの触れてきたものが凝縮されているアルバムなんですね。

木幡

自己表現というよりも、自分を知ってもらいたいという気持ちの発露がそのまま曲になった。今回のアルバムは本当にそういうものだと思っていて。そうなってくると、花火とか祭囃子とか、少年時代に刷り込まれたものに対する情景が、自分にとっての琴線だということがすごく分かってきて。でも今までのavengers in sci-fiイコール宇宙、未来といったものにも忠実でありたくて、そこから逃げたくないという気持ちもあって頑固に貫いていたんですけど、それが窮屈に感じるようになったんです。

CONTRAST [インタビュー] 木幡太郎(avengers in sci-fi)|開かずの引き出しを開ける勇気

これはかなり意外なコメントですね。

木幡

自分の琴線に近いところを隠している自分がいて、そういったしがらみを全部取っ払って、もっと自分の琴線に近いところで勝負したいという気持ちがあって。まだ見せていない引き出しって言うんですかね。「まだあるんだぜ」っていうのを見せたかったんですけど、今までのイメージに捕われて見せることが出来なかったというか。

「Skywalker」とか「Organa」といったスターウォーズの固有名詞がありますけど、これも原体験的な意味合いで使っていますか?

木幡

そうですね。スカイウォーカーは僕の中での象徴的なヒーローなんですよ。神に近いというか、ある種の神聖を纏ったヒーローはスカイウォーカーとマーティ・マクフライなんです。オーガナ姫はその女性版というか、恋い焦がれるを遥かに凌駕して、崇め奉るものとしての対象ですね(笑)。

なるほど(笑)。これまでの話からは『Disc 4 The Seasons』は自身のターニングポイントになった作品という印象を受けるんですが。

木幡

実はそこまでには感じていなくて。舵を切ったっていうよりは開けてなかった引き出しを開けたっていうだけなんですよ。引き出しがパンパンだったっていうのもあって。

完全に今あるものを見せたという感じですか?

木幡

うーん、どうなんですかね…。そこはまだ断言出来ないですけど。

ジブリはどの作品が好きですか?

木幡

原風景とか言いながら、ナウシカが好きなんですけど(笑)。

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