CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] 垣根の隙間を縫っていく。

垣根の隙間を縫っていく。

青野賢一(プロフィール)

青野賢一

プロフィール 青野賢一
1968年生まれ、東京都出身。ビームス創造研究所クリエイティブディレクター、BEAMS RECORDSディレクター。販売職、プレス職などを経て現職に至り、執筆、PRディレクション、選曲、DJなど、多岐にわたる仕事に取り組んでいる。また山崎真央(gm projects / AKICHI RECORDS)、鶴谷聡平(NEWPORT)との選曲ユニット・真っ青や、自身がドラムとして参加する大所帯バンドF.A.C.E.でも活動。著作『迷宮行き』(BCCKS / 天然文庫)、中島ノブユキによるSister Sledge「thinking of you」のカバーを真っ青でリミックスした12インチレコード「thinking of you EP」など発売中。

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あの人はどんなヒト・コト・モノに触れてきたのだろう。

人が影響を受けた対象を知ることが好きだ。ひとつ知ると、またひとつふたつと知りたくなる。そうやって蓄積された様々な情報は、血肉になって、今日の自分を形成している。もしも僕の中にオリジナリティと言えるものがあるとすれば、少なからずそれは、誰かしらの影響を受けて培われている。自分固有の経験から得たものもあるとは思うけれども。

今回紹介する人物は、青野賢一。言わずと知れたビームスというアパレル企業に所属しながら、執筆、PRディレクション、選曲、DJなど、多方面の領域で活動している。加えてファッションだけでなく、音楽、映画、文芸、美術等々にも造詣が深い。興味関心を得意分野に変えて活動する彼に僕は憧れている。いま最もその背景を知りたい存在だ。

インタビューを通じて青野は、自身が影響を受けてきた対象だけでなく、彼が大切にしている「ものの見方」についても紹介してくれた。視界の開けるヒントは、意外にも身近なところに隠れている。

Text by Shota Kato Photo by Masatsugu Ide

手持ちのどのカードを使って勝負しようかということ。

お会いしたら真っ先にお聞きしたかったんですが、青野さんの生業って一体何なんでしょう?

青野

あぁ、そのぐらいが良いんですよ(笑)。

本当に不思議なんですよね。

青野

先日、広島で建築家・谷尻誠くんの「THINK」というトークイベントの講師をやらせていただいて。THINKというタイトル通り、その人のものの考え方とか、どんな思考で仕事に取り組んでいるのかを中心に話すんですね。過去には建築家はもちろん、ものを作っている方たちが出ているんですけど、僕はものを作っているわけではないから困ったなと。僕が何をやっているのかを伝えるのって、結構難しいんですよ。僕が文章を書くのは、アーティストがモノを作るのとはスタンスが違うから。

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現在、青野さんはビームス創造研究所という部署に所属していますよね。

青野

2010年の春から立ち上がった部署で僕はスタートからいるんですけど、簡単に言ってしまうと「ソフトの力を外に売っていきましょう」みたいなところですね。

図式としては、個人対クライアントということですか?

青野

全くその通りです。個々人が持っているスキルを会社の中のことに活かすのではなくて、外の会社や団体に出て成果を上げるっていう。例えば一緒にやっているマゴさん(南馬越一義、ビームス創造研究所シニアクリエイティブディレクター)は元々バイヤーだったし、僕なんかよりもファッションにコミットしている人なんですね。ビジネスと言ってしまうと堅いですけど、それぞれの得意ジャンルを外の仕事で活かして、それを会社にフィードバックするという感じですね。

青野さんの場合、執筆やコンテンツの企画だったり、DJや選曲ユニット(真っ青)などの顔をお持ちですけど、ご自身の活動の軸ってどこにあるんでしょうか?

青野

難しいんですよね。これというものを持たないんじゃなくて、持てないんですよ。

持てないですか。

青野

何かを切り取る時にファッション的な視点が必要なわけではなくて、断片が散らばっているというのが自分の状態だと思っていて。求められているものが文章であったり、企画を考えることだったりしても、同じ人間が考えるのでアウトプットがガラッと変わるということはなくて。どの断片が最も相応しいのかという組み合わせなんですね。結局、手持ちのカードしかないから、どれを使って勝負しようかということだと思うんですよ。洋服も音楽も好きですし、ここからここまでと言い切ることも難しくて。だから、僕は初めて会う人に「どんなことをやっているんですか?」と聞かれると、「雑用全般です」と言うんですよ(笑)。

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ご自身のFacebookのノートにも書いていますよね。

青野

でも、好きなことはやりたいじゃないですか。そのためには嫌いなことをやらなければいけなかったり、色々な障壁が出てくると思いますけど、それもひっくるめて好きなことと考えたら、そんなにストレスなく出来ることも多いんですよ。そう割り切ってやってこれた部分もありますね。

ビームスの仕事もプライベートワークスも特に切り分けていないんですね。

青野

昔からそうなんですよ。報酬の有無という意味で仕事の分け方はあると思うんですけど、結局人生なんて切り分け出来ないということを分かっているので、全部仕事であり遊びでもあるという感覚があって。制度として分かれるのは仕方ないんです。何時から何時まではここにいる、みたいなものは決まり事としてあることだから。別にそれに対する不平不満は、これっぽっちもないわけですよ。

周りに文化として何かあるはずなんじゃないのか?

青野さんのお仕事から、ファッションを軸に音楽や映画といった色々なジャンルを結び付けようとしているように映るんですね。

青野

僕は日本のファッションは文化的ではないなとずっと思っていて。

例えばどんな面でしょうか?

青野

やっぱり現象というか、ファッション産業には消費が結び付いていなければいけない。そうすると、刹那的な側面だけでファッションが成り立っているとずっと感じていて。

売って買っての繰り返しということですか?

青野

そうですね。買ってもらうために売ることは当然必要ですし、それがPRの常套手段ではありますけど、もうちょっと違う視点で見ると、洋服とかファッションみたいなものは、産業という枠組みでしか見れないのか?というのが疑問だったんですよ。本当は、周りに文化として何かあるはずなんじゃないのか?と思っていて。例えば音楽、映画、文学とかと接続出来ることで、はじめてファッションというもののステージが上がるというか。もう少し文化に近いところで根付かせられないのかなと。日本のファッションって、お祭りっぽいことや商売的なビジネスっぽい部分、あとはいわゆるクリエイションが良いとか悪いとか。たぶん、それぐらいなんですよね。

でも、その間に色々あるはずだと。

青野

そう。他の色々な文化と接続出来るものがあると思っていて。ただそれはものの蘊蓄が分かっているとかそういうことではなくて、ファンタジーというか情緒的な部分がすくい上げられそうな気がするんですね。

難易度が高そうですね。

青野

きっと結論なんて無いんでしょうけど、自分が思うことを活字に残してゆくことで積み重なって、振り返ってみたら層になっていたら良いなぁと。

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