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CONTRAST [インタビュー] 行き着く先はアンハピネス。

行き着く先はアンハピネス。

死んだ僕の彼女(プロフィール)

死んだ僕の彼女

プロフィール 死んだ僕の彼女
東京・神奈川・埼玉を中心に活動しているノイズポップ・シューゲイザーバンド。2005 年 7 月に、Ishikawa(ギター・ボーカル)を中心に埼玉県比企郡にて結成。現在は Ishikawa、Ideta(ボーカル・シンセサイザー)、Kinoshita(ギター)、Nakagawa(ベース・ボーカル)、Kunii(ドラム)の 5 人編成で活動中。

2007 年 7 月に初音源となる 6 曲入り EP『2 songs + cassette tape e.p.』を” my dead girlfriend” 名義でリリース。 翌年にはインディーズバンド” 少女スキップ” とのスプリットアルバム『Sweet Days And Her Last Kiss』をリリースした。 2010 年 3 月 10 日に” 死んだ僕の彼女” 名義で 1st ミニアルバム『ixtab(イシュタム)』をリリース。 アルバムタイトルはマヤ神話に登場する自殺を司る女神から。レコーディングとミックスを元 SPIRAL LIFE・Scudelia Electro の石田ショーキチが担当。

これまでに Ceremony(US) , eskimohunter(US) , Screen Vinly Image(US) , sad day for puppets(sweden) らの JAPAN TOUR でのサポートアクトを 務めた他、コロムビアミュージックエンタテインメント からリリースされた V.A.” total feedback” に参加する等の活動も行っている。前作から 2 年を経てリリースされる今作は、バンド名が示す通り死を思わせる描写が多々ある陰鬱な歌詞と、ポップなギターサウンド、男女ツインボー カルによる独特の世界観が特徴。前作に引き続き、レコーディングとミックス、そして新たにプロデュースを石田ショーキチが手掛けている。

死んだ僕の彼女 オフィシャルサイト

THE FUTURE TIMESに掲載されている、建築家の谷尻誠さんの対談を思い出した。谷尻さんが作家の川上未映子さんと対談した時、川上さんは「"世界"という言葉と"クッキー"という言葉は誰でも知っているのに、それが"世界クッキー"となった瞬間、すごく新しいものになる」という話をされたそう。言葉の組み合わせをしていくと思いがけない発見がある。「こんなことで革命が起こせるのか!」と感動した谷尻さんの発言を読んで、僕もPCの画面越しに感銘を受けた。

ふと思った。死んだ僕の彼女という名前の由来も、それに近い発想なのかもしれないと。生命の終わりを意味する死を冠に置くバンド名は大きなインパクトを残す。そしてよく眺めると、死んだ対象が僕なのか彼女なのか分からない。シリアスな単語で言葉遊びをするかのようなバンド名を目にして、なんとも不気味な印象を抱いた。

そんな彼らが描く世界観はその名に偽りなくきわめてダーク。いわゆるシューゲイザーやノイズポップ特有の、フィードバックノイズやディストーションの利いた轟音かつ美しいメロディーを軸に、男女ツインボーカルは消え入りそうな声で死を連想させる陰鬱な日本語詞を儚げに歌う。彼らの新作『underdrawing for three forms of unhappiness at the state of existence』の中でも何度も「死」という言葉を用いているが、ポップな印象を残す楽曲のおかげで気持ちは落ちない。むしろ爽快な後味が残る。

暗いインタビューになったらどうしよう...。一抹の不安を胸に、石川(ギター、ヴォーカル)と國井(ドラム)に訊く。

Text by Shota Kato Photo by Takuya Nagamine

僕が死んだ?彼女が死んだ?

石川

僕ら初めてのインタビューなんです。

え、そうなんですか。

石川

今日で奪われちゃいました、インタビューヴァージンを。よろしくお願いします。

こちらこそ。

石川

若干適当に話すバージョンと真面目に話すバージョンがあるんですけど、どっちが良いですか?

あの、インタビュー初めてなんですよね?

石川

はい。

じゃあ、緩急を使い分ける感じでお願いします(笑)。

石川

分かりました。

改めて、ミニアルバムが3月14日にリリースということで。

石川

ホワイトデーのために作ったというのは嘘なんですけど、真面目な話をすると、年度中には出したかったんですよ。1年に1枚くらいのペースを保ちたかったんですけど、前作の『ixtab』が2年前で間が空いて、その間にドラムが代わったんですね。あとはレコ発を4月1日に決めてしまっていたので、それより先には世に出さないとマズいだろうということで(笑)。

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(笑)。國井さんは途中加入なんですね。

國井

一昨年の8月1日からですね。一日も挟まずに入れ替わったんですよ。


石川

前のドラムとの最後のライブが一昨年の7月31日で、翌日に国井さんとスタジオに入って。國井さんはまだ加入するか分からない僕らの曲を正確にかなりの曲数を覚えてくれていたんです。それだけ練習と準備をしてきてくれたということが伝わったので。


國井

オーディションというよりもリハみたいな感じでしたね。

もともとのバンド名はmy dead girlfriendなんですか?

石川

それはちょっと誤解がありまして。最初から死んだ僕の彼女という名前で活動を始めているんですよ。ただ最初に出した『2songs+cassette tape e.p』のもともとのジャケットには死んだ僕の彼女と書いて、女性が男性を刺し殺しているというジャケットの構図だったんですよ。血をケチャップで作って、僕が刺し殺されているっていう。でも「これはマズいだろう」と流通的にNGが出まして。

まあ、世に出るとなるとデリケートに考えますよね。

石川

そうなんですけど、当時、引きこもりの男性がモデル志望の女性を刺し殺したっていう事件があって。それを受けて一作目と二作目はmy dead girlfriendという名前で出したんですよ。

そんな経緯があったんですか。これは僕に限らず誤解しがちだと思うんですよ。

石川

そうだと思います。

衝撃的なバンド名の由来を教えてもらえますか?

石川

学生時代に、次にバンドをやるならばこんなバンド名が良いなと考えていた時期があって、悶々としていた時期でもあったので、「死んだ」という言葉がどうしても入れたくて。それに、やっぱり「死んだ」とか頭に置いてあるとインパクトがあるじゃないですか。でも、それだけだと寂しいから「僕の彼女」というハッピーな単語を付けたんです。英語にするとmy dead girlfriendだから、単純にMy Bloody Valentineみたいでカッコいいじゃんと思いましたし、死んだ僕の彼女という並びにすることによって、僕が死んだのか彼女が死んだのか分からなくて、言葉遊び的にも面白いということで。どう解釈するかは聴いてくれる人たちにお任せします。

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バンド名しかり、作品も一貫として死を連想させる世界観ですよね。

石川

今まで作った曲を改めて聴いてみると、ほとんど同じことについて歌っているような気がします。確信的にやっているわけではないけれども、どこかの女の子が死んでしまってそれを引きずっている女々しい感じの世界観が多いなぁと。でも、そういうものが好きなんでしょうね。自分が作品を作る上でのキーではあるんですけど、根底には「ずっと僕のことを忘れないでほしい」という気持ちがあります。

爪痕を残すみたいな?

石川

そうですね。今回のアルバムの「ヴァンデミエールの頭」という曲なんかは、特にそういう気持ちがストレートに出た曲ですね。

ヴァンデミエールってフランスの暦ですよね。

石川

よくご存知ですね。

世界史、好きなんですか?調べたところによると、前作の『ixtab』というタイトルもマヤ文明から引用していますよね。

石川

大学受験が世界史でしたからね(笑)。山川書店の教科書からインスパイアされたというのは冗談ですけど、『ヴァンデミエールの翼』という漫画から引用させていただいたという部分はありますね。

シューゲイザーはバンドの共通言語ではない。

今作から日本語表記のタイトルがありますけど、ずっと日本語詞を貫いているんですね。

石川

以前はシューゲイザーマナーというか、自分の中にシューゲイザーたるものはこうあるべきみたいなものがあったんですけど、自然体でやることで自分たちの中に培われてきたものが出てくるはずだと思うようになって、深く考えなくなりました。

どうして死をテーマにしようと考えたんですか?

石川

僕の中で思いつく日常生活の中で最も悲しいことが「死」だったんですね。若かりし頃って死について考えません?

うーん、僕の場合は死後のこととか死ぬ瞬間とかですかね。

石川

今振り返ると笑っちゃいますけど。それと、もしかしたら不謹慎かもしれないけど、例えば、失恋を「あの子は死んだ」に置き換えてみたり、死という自然現象を色々なことにリンクさせて、曲にしている部分はあります。あとは元メンバーが亡くなっているんです。初代ベーシストの大塚くんというんですけど、過去に彼のことを考えて作った曲もあって。

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さらっと言われたのでかなり驚いているんですけど、それを踏まえた上で、結成の経緯を教えてもらえますか?

石川

僕と亡くなってしまった大塚くんは地元が一緒の同級生で、埼玉県の比企郡っていう田んぼと畑しかないど田舎で育ったんですよ。かつ音楽の趣味もすごく近くて、一緒にバンドをやろうよと。でも二人では出来ないから、僕の音楽仲間の初代ドラムも入れてスタジオに入りはじめて。そしたら、やっぱりギターをもう一本と女性ヴォーカルがいると雰囲気が出るよねってことになって、当時のギターと一緒に出田さん(ヴォーカル、キーボード)が入ってくれて5人体制の原型が揃ったんです。

聴く音楽の趣味って、例えばどんなものを好んで聴いていたんですか?

石川

僕に関して言えば、シューゲイザー、オルタナ、ポストロックですね。

ってことは大半が洋楽?

石川

半分はそうなんですけど、僕はけっこう日本のインディー音楽が好きで。


國井

めちゃくちゃ詳しいよね。


石川

それこそナゴムレコードとかUK PROJECTとか。バンドで言うと、4月1日に対バンさせていただくdipが大好きでしたね。邦楽のロックバンドがすごく好きでした。dipは中学校の頃からファンですから対バンは夢でしたね。その他に共演してくれるBPも憧れていたバンドで、個人的には少年時代の憧れが体現されるようなレコ発になっちゃって。

感慨深いですし、リリース間に合って良かったですね。

石川

もう本当に(笑)。

日本語詞というアプローチには、聴いてきた音楽の影響を素直に受け入れている部分もありますか?

石川

それは間違いなく強いと思います。

死んだ僕の彼女を語る上でシューゲイザーはひとつのキーワードだと思いますけど、シューゲイザーの入口ってどんなバンドです?

石川

やっぱりMy Bloody Valentineの『LOVELESS』ですね。高校3年の頃なんですけど、当時は激しくて暗い音楽が好きだったんですよ。CDショップに行った時に『LOVELESS』のポップを見たら「轟音かつ美メロ」みたいなコメントが書いてあって。「Coccoみたいな感じなのかな?」と思って聴いたわけですよ。そしたら最初は掴みどころがなくて理解不能だったんです(笑)。でも2,3週すると好きになっちゃって、そこから洋邦問わずシューゲイザーにハマってますね。特に18,19の頃はどハマりで、雑誌やCDショップのポップを読んでは、シューゲイザーという名の付くものは全て手に入れたくなるぐらいで(笑)。インターネットでも毎日どころか1時間に1回くらいの勢いでシューゲイザーを検索して、何かヒットしたらその全てを知らなければ気が済まないほどでしたね。マイブラ、ジザメリ(The Jesus and Mary Chain)、ヴァーヴ(The Verve)といったオリジナルのシューゲイザーはもちろんですけど、日本のDIVEっていうバンド分かりますか?

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いや、分からないです。

石川

マイブラに近いと言えば近いんですけど、もしもシューゲイザーの精神みたいなものが世の中に存在するのであれば、高い次元でシューゲイザーを表現しているバンドだと思っていて。アメリカのastrobriteというバンドの日本盤に参加していたり、90年代のシューゲイザーシーンでは欠かせないバンドだと思いますね。

死んだ僕の彼女に与えている影響も大きいですか?

石川

何よりも先にDIVEを聴いてくださいと言いたいです。

國井さんも近いリスナー遍歴ですか?

國井

石川くんと世代が違いますけど、通っていたレンタル屋が同じ御茶ノ水のジャニスだったり、バーッと全部借りちゃうような青春は一緒というか。例えば、ソニックユースみたいに変なギターのバンドは共通ですね。でも僕が入ってから、バンドのミーティングでシューゲイザーっていう言葉が出たことは一度もないんじゃないかな。


石川

僕と元メンバーの大塚くん以外はシューゲイザーのシュの字も知らない人たちなんですけど、それはそれで問題ないんですよ。「こういう音楽がやりたい」って提案するときはCDを貸しまくってましたね。今は改めて言う必要がないだけで。

他のメンバーの皆さんはどんな音楽を?

石川

出田さんはサニーデイサービスとかフラワーカンパニーズとかウルフルズが好きで。仲川さんはゴシックとかエレクトロニカ、木下くんはオルタナが好きなのかな。


國井

そうだね。Cursiveとかvelveteenとか。

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