CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] 無防備な宅録アーティスト

無防備な宅録アーティスト

ent(プロフィール)

ent

プロフィール ent
ロックバンドSTRAIGHTENERのホリエアツシ(Vocal,Guitar,Keyboard)のソロプロジェクト。エレクトロの精巧さと生のギターやピアノサウンドの温もりを兼ね備えたトラックに、パーソナルでセンチメンタルな歌が折り重なる、オルタナティブポップサウンドを鳴らす。

2009年2月、日本のエレクトロニカ/ポストロック・レーベルPrecoより1stアルバム“Welcome Stranger”をリリース。翌年には、海外アーティスト等によるリミックスを追加収録した同作のUS盤をアメリカのエレクトロニカ・レーベルn5MDよりリリース。

2010年には映画『ソラニン』の劇中音楽を担当し、「ソラニン」サウンドトラックfeat. entをリリース。

またファッションブランドSise、Enharmonic TAVERNのショー音楽、劇団OOPARTS(鈴井貴之主宰)の舞台「CUT」のテーマソングを書き下ろすなど、様々なフィールドで活躍している。
ent公式サイト

耳の肥えたリスナーでなくとも、大抵の人がホリエアツシという名前から「ストレイテナーのホリエアツシ」を思い浮かべるだろう。

バンドのフロントマンとしてのイメージが定着した今、ホリエはストレイテナーと同時進行で、entという名義のソロプロジェクトに取り組んでいる。ポストロックやエレクトロニカなど、敬愛するインディー音楽へのオマージュと、彼のポップセンスを融合した、プライベートな嗜好が色濃く反映されたプロジェクトだ。通常の楽曲制作に加えて、映画、舞台、ファッションブランドのためにも楽曲を提供するなど、異ジャンルのクリエイターとの関わりも強い。

柔軟な物腰で音楽と向き合うentを通じて、ホリエはどんなフィードバックを受けてきたのか。インディー音楽の原体験とともに、「entのホリエアツシ」について語ってもらった。

Text by Shota Kato Photo by Masatsugu Ide

entは誰からどう見られても構わない状態。

entというプロジェクトは『ロード・オブ・ザ・リング』からインスパイアされていると聞きました。

ホリエ

小さい頃の話なんですけど、僕には5個上の兄がいて、兄は読書好きで色々な本を読んでいたんですよ。小学校低学年ぐらいだったかな。『指輪物語』を読んでいる時に、よく話を聞かせてくれて、そこで初めてエントを知ったんですよね。『ロード・オブ・ザ・リング』自体は、映画を観たことで全てのストーリーを知ったという感じなんです。

入口は映画じゃなくて『指輪物語』だったんですね。

ホリエ

そうなんですよ。エントは樹木を守る木の種族なんですけど、映画ではちょっとしか登場しなくて。「出てきたでしょう?」って説明しても、なかなか皆の記憶に残っていないみたいで、「あぁ、いたね」ぐらいの感じなんですよね。でも僕の中では「エント覚えてるわー」って印象に残っていて、嬉しかったというか。

どんなところが印象的だったんですか?

ホリエ

ストーリーの中では世界の戦争が起こっているんですけど、エントはそこには加担しないというか、中立を主張している立場で。でも、最終的には仲間が痛めつけられて、戦わざるを得なくなってしまうんですよ。争いを好まない種族なのに、怒りを抑えきれずに戦争に出て行くことになる。そこが泣けるんですよね。

CONTRAST [インタビュー] ent | 無防備な宅録アーティスト

中立やニュートラルといったワードは、entとの結び付きが強いように感じますね。

ホリエ

そうですね。あとはentという名前が思い浮かんだタイミングもあると思います。

タイミングですか?

ホリエ

1stアルバムの『Welcome Stranger』を出したpreco recordsLINUS RECORDSが運営)にausという好きなミュージシャンがいて。三文字が良いなって思っていた部分もあるんですよ。

語感の側面もあるんですね。

ホリエ

ソロプロジェクトをやりたいということ自体は、周りの人たちにも話していたんですけど、いざアーティスト名を幾つか挙げた中で、entの反応がものすごく良くて。

最初は「ストレイテナーのホリエアツシ」という打ち出しをしていませんでしたよね。

ホリエ

まず「ストレイテナーのフロントマンがソロプロジェクトを始めた」という打ち出し方は、自分がソロを始める上で無しだったんですよ。

純粋に音で勝負したかった?

ホリエ

そうですね。聴いてくれる人に先入観を持ってほしくなかったですし、中にはジャンルで聴く人もいるだろうから、無防備というか何の前情報もなく、ただの新人の宅録アーティストとして受け取ってほしかったんですよね。なので、最初は顔を出したくなかったんです。

CONTRAST [インタビュー] ent | 無防備な宅録アーティスト

ストレイテナーをやり続けるうえでも、entとしての活動が必要だったんじゃないかなと思うんですよね。心のバランスを保つというか。

ホリエ

バンドは、我を通すとバランスが崩れるという部分がありますけど、ストレイテナーは人間力学的なバランスってすごく特異なバンドなんですよ。これはファッションでも同じなんですけど、僕はひとつベーシックがあれば良いというタイプではなくて。常に新しいものや自分が面白いと思うものに、アンテナを張って採り入れていきたいんですね。それをバンドで好き勝手にやろうとしたら、収拾がつかなくなってしまうというか。

4人でひとつの世界観を表現しなければならない。

ホリエ

バンドにとって、ライブの比重が年々大きくなっているのを感じていて。ストレイテナーの初期の頃は、壁を作るというか、あまりオープンなバンドではなかったんですよ。楽曲制作とライブを切り離して考えていましたね。

特にベースレスの時代はそんな印象を受けますね。

ホリエ

二人から三人になってからも、基本的に同じことをやりたくなくて。作品ごとに自分たちのモードがあって、ライブで再現することを意識せずに楽曲制作と向き合っている時期もありましたね。でも、キャリアを積み重ねていくごとに、ストレイテナーというバンドの生きる場所はライブだなと感じるようになって、一気に吹っ切れたんですよ。

entのホリエさんには、ストレイテナーの時よりも自然体な印象があります。

ホリエ

entは、誰からどう見られても構わない状態というか、それこそ鏡を見ずにコンビニに出かけていくみたいな(笑)。ある程度の責任があるのはもちろんですけど、バンドでは、見られているとか、伝えなきゃという意識がより強いですよね。

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