CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

contrast

CONTRAST [インタビュー] 点在する「?」や「!」の正体

点在する「?」や「!」の正体

木暮栄一(プロフィール)

木暮栄一

プロフィール 木暮栄一
the band apart
荒井岳史(ヴォーカル・ギター)、原昌和(ベース)、川崎亘一(ギター)、木暮栄一(ドラム)から成るロックバンド。2001年に1stシングル『FOOL PROOF』をリリース。CDショップやライブ会場など、様々な場所からクチコミが広がり、目立ったプロモーションなしに、2003年発表の1stフルアルバム『K. AND HIS BIKE』はロングセールスを記録。現在は自身のレーベルasian gothicを立ち上げ活動中。パンク、ジャズ、フュージョン、メタルなど、多種多様なジャンルを独自の解釈で採り入れたサウンドで、玄人からライトユーザーまで幅広い層から支持されている。2011年3月2日に最新アルバム『Scent of August』をリリース。4月2日の新代田FEVERから5月21日のZEPP TOKYO公演まで、待望の全国ツアーを控えている。
http://www.asiangothic.org/
http://www.myspace.com/asiangothic

CDでも配信であろうとも、その形態に関係なく、音楽作品を構成する要素は大きく二つに分かれると思う。一つはジャケットのアートワークやアーティスト写真といった視覚的な要素。もう一つは、アルバムタイトルや曲名、歌詞、楽曲といった、音源にまつわる要素。the band apartの新しいアルバム『Scent of August』には、いま挙げた至るところに、これまでと違うアプローチを採り入れているように映る。そこには、大きなトピックや特別な背景が隠されているのかもしれない。あるいは、当事者である本人たちにとっては、全く意図していないのかもしれない。その答えがYes / Noどちらであっても、バンアパから従来と異なる印象を感じるのは確かなのだ。今回答えてくれたのはドラムの木暮栄一。サウンド面以外で作品のアートワークにも関わる木暮に、ありとあらゆる質問を投げかけた。

Text by Shota Kato Photo by WYPAX

お台場っていう響きが嫌で団地の夜景に行き着いた。

まずはアルバム周りの話からお願いします。今回のアー写(アーティスト写真)はこれまでと明らかに違いますよね。バンアパのアー写は、影やシルエットの佇まいが印象的だったので、音を聴く前からカウンターパンチをもらいました(笑)。

木暮

毎回、橋本塁ってヤツに撮ってもらっていて。アー写の撮影のときは、だいたい一つの建物の中の色々な場所で別々のカットを撮っているんですけど、これまでは、そこにいるヒロシっていう肉マンみたいなヤツがオレらのイメージを考えてくれて、最終的なピックアップを任せていたんですよ。毎回ふざけた写真を入れていたんですけど、それははじかれてしまっていて(笑)。今回のも最後の最後に軽いノリでやってみたら、意外とシュールな感じに撮れていて。

柱の裏側はどうなってるんですか?

木暮

こう、くの字型に折れる感じで。「まだ斜めだよ」とか言われたりして。裏も撮っておけば良かったっすね。

体格的に原さんは大変だったんじゃないですか?

木暮

あいつはああ見えて俊敏な男だから(笑)。

点在する「?」や「!」の正体

(笑)。では、ジャケットのアートワークですけど、基本的には木暮さんがメインで進めているっていう認識で大丈夫ですか?

木暮

だいたいオレですね。

今回は大胆に写真の一枚敷きにしましたよね。たぶん、写真を使ったのは1枚目の『FOOL PROOF』以来じゃないですか? 

木暮

おぉ、そうっすね。今までのは貼り絵みたいに作ってるんですけど、時間が掛かるっていうのと飽きたっていうのがあって。だから写真で良いんじゃねえかなって思ったんですよ。

あの写真、面白い夜景ですよね。建物がメインというか。

木暮

いざ写真を撮ろうと思った時に、なんとなく夜が良いなって思ってたんですけど、夜の風景ってどこでも撮れるじゃないですか?漠然としているから。塁と写真を撮りに行ったんですけど、「光のある所の夜景が良い」って言ったら、「じゃあ、お台場行こう」って話になったんですよ。

あれってお台場なんですか?

木暮

いや、もうお台場っていう響きで嫌になっちゃって(笑)。どこに行こうかって考えたら、「団地に行こう」って流れになったんですよ。塁が知っている団地を色々挙げてくれたんですけど、よく考えたら、まーちゃん(原昌和)が昔に住んでた所って巨大な団地だなぁって思って。そこに行って、すごく不審な感じに二人で深夜徘徊して撮りましたね。

猛暑の8月に始めた曲作り。

アルバムタイトルの『Scent of August』は、直訳すると「8月の匂い」という具合ですか?個人的にscentという単語の語感が良いなぁと思っていて。

木暮

scentは良い香りに特化した単語なんですけど、匂いだけじゃなくて雰囲気とかのニュアンスもあって。

レコーディングに入ったのが8月ですか?

木暮

いや、曲作りを始めたのが8月くらいですね。

僕が拡大解釈しているだけかもしれないですけど、レコーディングを始めて録り終わるまでの期間のことを表しているのかなって思いました。それを象徴しているタイトルなのかなと。

木暮

そう考えてもらえると有り難いんですけど、実はもっと短絡的なんすよ(笑)。8月に曲作りを始めて、スタジオまで自転車で通っていたんで、猛暑の強烈な記憶が残っていて。実際に録ったのは冬だったけど、改めて考えてみると8月というか。自分らの中でも夏っぽい曲だなっていうのもあったんで。

なるほど。前のミニアルバムがちょうど1年前に出て、ついこの前もライブ会場限定でシングルをリリースしましたよね。その流れから今回のアルバムに、バンド最長の14曲も詰め込まれていたのには驚かされました。

木暮

4人とも曲を書くから今までサボってただけなんですよ(笑)。ちょっとやる気になって1人が2曲作ったら8曲じゃないですか?

たしかに(笑)。木暮さんは普段、ヒップホップやダブだったり、ディープハウスなども聴きますよね。

木暮

そうですね。けっこう好きですね。

そういったエッセンスは、バンアパの音楽に盛り込んではいませんよね。

木暮

去年だとグロウファイとかチルウェイヴとか、ANIMAL COLLECTIVEのあとから出てきたニューヨーク辺りの人たちの音楽が流行ったじゃないですか?たとえばチルウェイヴの特徴って、リバーブとディレイの掛かった音像だと思うんすよ。それで、自分の節回しで歌うっていう。もともとPavementみたいなロウファイな感じも好きだから、そういうのも好きなんですけど、自分なりに 分析しちゃった音楽をそのまま自分のバンドでやると寒いなっていうか、恥ずかしいと思っちゃうんですよ。だから、思いついたアイデアで自然に曲作りしているというか。

今回のアルバムでいうと、どの曲辺りですか?

木暮

たとえば『Taipei』っていう曲は、ジーファンクから突然アシッドジャズになるとか面白いなって思いながら作ったんだけど、実際作ってみると最初の閃き通りにはならなくて(笑)。

あの曲の転調にはビックリさせられました。「え?これ次の曲か?」って(笑)。

木暮

なんつうか、AORじゃないけど、不思議な音楽になるっていうのが多いですよね。明確に「こうしたい」というよりは、自然に「こうなった」という感じなんすよ。

点在する「?」や「!」の正体