CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] 解散は伝言ゲームがつまらなくなった時

解散は伝言ゲームがつまらなくなった時

L.E.D.(プロフィール)

L.E.D.

プロフィール L.E.D.
佐藤元彦 : Bass (JacksonVibe)
オータコージ : Drums (曽我部恵一BAND,□□□, SPANOVA, etc.)
加藤雄一郎 : Saxophone (Natsumen, Calm, Calm, etc.)
横山裕章 : Keyboard (曽我部恵一ランデブーバンド, 星野源, たむらぱん, メレンゲ, etc.)
塩川剛志 : Guitar (Balloons, MAS)
kakuei : Percussion, Steelpan (Overground Acoustic Underground)
RYUDAI : Percussion (Little Cosmo, Freaky Machine, Orquesta Nudge! Nudge!)

各方面で活躍する生楽器のマエストロ7人から成るシネマティック・インストバンド。そのサウンドは、Jazz,Funk,HipHopからHouse,Ambient,Minimal,Electronica,Krautrockまで様々な要素をバンド独自の有機的フィルターを通して解体、再構築。既存のインスト、ポストロック勢とは明らかに一線を画し、映像を強くインスパイアさせる、まさにシネマティックなサウンドスケープを展開している。結成当初から確かな演奏力と映像親和性により高い評価を受けているライブは各地のフェスをはじめ、活動の幅を拡大中。また映像を重視するコンセプトにより、マンガ家でもあり映像作家の異才タナカカツキとのコラボレーションも話題に。1stアルバム『GAIA DANCE』のアートワーク、ライブでのVJ参加(VJ QUIZ)、クラムボンの原田郁子を迎えたバンド初のボーカルトラック『I'll』ではMVを手掛けている。2011 年4月には同曲を含む渾身の2ndアルバム『elementum』を発表。リリースパーティーを経て10月には朝霧JAMへの出演を果たす。最新作は12月14日に限定リリースされた『Music For Cinemas e.p.』。
L.E.D.ウェブサイト

今年はL.E.D.というインストゥルメンタルバンドの名前を耳にする機会が多かった。振り返ってみると、まずは2月に『I’ll』という初のヴォーカル曲にクラムボンの原田郁子を迎えたシングルをリリース。ミュージックビデオを漫画家であり映像作家のタナカカツキが手掛けたことでも話題になった。間髪入れず4月には2ndアルバム『elementum』を投下。彼らの音楽に触れると、地球上に存在する自然のテクスチャーを連想して、脳裏に美しい風景が浮かび上がる。日常の隙間に贅沢な時間を演出する、実にイマジネーション豊かな音世界なのだ。

10月には朝霧JAMへの出演を果たし、初の大型野外フェスを経験。前述の音楽性を踏まえると、富士山麓で開催される朝霧JAMへの出演は、まさに大抜擢としか言いようがない。一連の精力的な活動を通じて、L.E.D.の知名度は着実に浸透していった。

実はL.E.D.の結成は2000年まで遡る。驚くかもしれないが、10年以上のキャリアがありながらも1stアルバム『GAIA DANCE』のリリースは2009年。そこに至るまでの間、L.E.D.はいわゆる全国流通の音源を1枚たりとも作っていないし、ライブを積極的にこなしていたわけでもない。こういった過去の超スローペースな活動を踏まえると、一体何がきっかけでL.E.D.の時間は急加速したのだろうか。彼らの背景が見えない故に不思議で仕方がなかった。

大充実の2011年を締め括るべく、L.E.D.は12月14日に最新作『Music For Cinemas e.p.』をリリースした。映画というテーマに向かって、これまでの風景描写とはまた違う側面を打ち出した意欲作だ。今回はメンバーから佐藤元彦、オータコージ、塩川剛志の3人にロングインタビューを敢行。掘りごたつ仕様の忘年会テイストで2011年の活動を中心に、L.E.D.の歴史を振り返ってもらった。
撮影協力:cafe STAY HAPPYhttp://cafestayhappy.com/

Text by Shota Kato Photo by アカセユキ(www.yukk.info

朝霧JAMは一番大きな出来事。

今年はL.E.D.史上、最もアクティブな1年を送ってきましたよね。一連のリリースやライブを振り返ってみてどうですか?

オータ

やっぱり朝霧JAMはデカいですね。ファンの人たちからは「野外で観たい!」ってライブをやる度に言われてたけど、これまでは全く誘われなくて。これは言っておきたいんですけど、朝霧が決まってから急にレスポンスが良くなったんですよ(笑)。


佐藤

それはありましたね、本当に。今まで割と素っ気なかった人からメールがすぐ返ってくるようになったり、そういうのがあまりに露骨だったんで「世の中ってそういうものなんですね〜」ってその人らにもつい言っちゃったもん(笑)。

縮図みたいな(笑)。

オータ

それぐらいに一番大きな出来事ですね。L.E.D.を僕と佐藤で立ち上げてからの歴史というか、のらりくらりとライブをやりつつ、一度各々の活動があったからL.E.D.を離れたこともあり、まさかそんなデカいステージでやれるなんて思ってもいなかったんで、わりとサクセスストーリー的なニュアンスがあるから、泣きそうになる感じはありますよね。実際、朝霧のステージでうるっときましたから(笑)。

CONTRAST [インタビュー] L.E.D. | 解散は伝言ゲームがつまらなくなった時

実際に朝霧のライブはどうでしたか?

オータ

最高でしたよ。緊張してリハと全く違うことをするメンバーもいたけど(笑)。


塩川

終わった瞬間にお客さんが「ウワー!」ってなってくれて、俺はあまり時間を気にしないで気分良くステージを降りていったんですよ。でも、ステージ裏に行った途端、オータくんが「大丈夫かな?怒られちゃうかな…」って言い出して(笑)。


オータ

(笑)。後で謝れば済むことだから、その場が盛り上がれば良いかなと思ったんだよね。


佐藤

でも、ほんとそういうふうに考えられるライブだったよね。そのくらいに自分らも楽しめたし、お客さんもほんとに楽しんでくれてるのがわかって嬉しかったですね。やっぱりあのステージを踏めたのは今年の活動の中で一番大きかったです。ここまできたなっていう達成感みたいなものをみんなが感じながら演奏出来たんで幸せでしたよ。

L.E.D.初体験のリスナーやお客さんが増えてきましたよね。自分たちの音楽が届いてるという実感もありますか?

塩川

友達とか関係者の人からは「最近やってるねー(活発だね)」みたいなことを言われてたんですけど、6月12日にリリースパーティをやった時に、純粋なお客さんがライブ直前に「ヒュー!」って歓声を上げてくれたり。そういう反応から「あれあれ?俺らってそんなバンドだっけ?」みたいに変な感覚もありましたけど(笑)。


オータ

あとL.E.D.っていう別のアーティストがいて、角田さんっていうトラックメイカーの方がいるんですけど、そこには勝ちたいですよね(笑)。僕、バンド名とか自分の名前を検索するのが好きなんですよ。

エゴサーチャー(笑)。

佐藤

検索でいうと、L.E.D.って入力しても去年までは全然ヒットしなかったんですよ。


塩川

海外とかの発光ダイオードについての商品サイトがヒットして。


佐藤

そうそう。いわゆるLEDしか出てこなかったんだけど、2ndアルバムを出してからはトップ3〜5を行き来するようになっていて。


オータ

そのゲーム界の方のTwitterを見ると、ちらほら「なんかL.E.D.っていうバンドがいるらしいよ」とか書いてあって、「お、ちょっと食い込んできたぞ」と。


塩川

「むしろL.E.D.はビーマニの角さんだろ!」っていうつぶやきもよくあるよね。


佐藤

一時期、あまりにひっかからないんで真剣にバンド名を変えようかと思ってたんですよ(笑)。でも、検索を気にするのはやめようと思ったところでヒットするようになったんで、「もしかして知名度上がってる?」と感じたんですよね。

CONTRAST [インタビュー] L.E.D. | 解散は伝言ゲームがつまらなくなった時

分かります、客観的な判断が付きますよね。僕もCONTRASTの反応をよく調べるので。

オータ

もうね、エゴサーチ大好きです。毎日やってます(笑)。俺のTwitterはエゴサーチ用のアカウントですね。

ライブはいつも戦場に出るような気分。

レコーディングや練習でメンバー同士が顔を合わせる機会も、これまで以上に多かったんじゃないですか?

佐藤

ウチのバンドってリハで全員集まることってまずないんですよ。今日もやってたんですけど、このメンバーだけだったし(笑)。制作もこんな感じなんです。1対1でやったりとか、2ndアルバムの『elementum』はリズムだけは皆で合宿して録りましたけど、7人で集まってやることは1回もなかったですね。たしかにバンド全体で会う頻度は多くなりましたけど、今日で言えば「あいつ、どうしてるかなー。最近会った?」っていう話になるような感じです(笑)。

ってことは、本番でやっと揃うんですか?

塩川

そうですね。ライブに向けての練習の時には全員揃わないけど、「この日はこのメンツ。これをテーマに練習しよう」みたいな目的で詰めていく。そういうやり方なんですよ。

ライブのスケジュールを決めるのも大変そうですね。

塩川

7人中何人が出れるかで決まるっていう。この3人とRYUDAI(パーカッション)くん、サックスをゴセッキー(後関好宏、stim / ホテルニュートーキョー / 在日ファンク / WUJA BIN BIN)にサポートしてもらったこともありましたね。


オータ

この男(塩川)がライブ終了と同時にスーツで現れたこともありますね(笑)。


塩川

あったね(笑)。仕事で間に合わなくて、謝るためだけにライブ会場に行きました。

そういう場合、ギターはどうするんですか?

オータ

もうね、なしで乗り切りました。そういう時はPCとキーボードの横山(裕章)が頑張るっていう(笑)。

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佐藤

いまや、そのおかげで欠員が出た時のライブの進め方には自信がありますね(笑)。

L.E.D.には、基本的にメンバーがバンドを掛け持っているっていう背景がありますけど、例えば、塩川さんの場合はBALLOONSとL.E.D.で、全く毛色の違うバンドですよね。

塩川

全然違いますよね。L.E.D.って自分以外は音楽で飯を食ってる人たちなんで、強者どもが揃ってるわけじゃないですか。俺はヒッピーが集まってるスタジオにスーツで現れますからね。


佐藤

ヒッピーはごく一部でしょう(笑)。

BALLOONSサイドの自分から見て、L.E.D.はどんなバンドですか?

塩川

ロクに全員揃って練習出来ない状況で、それぞれの力量を持ってライブをやってまとまるってすごいことなんですよ。BALLOONSみたいなバンドは3ヶ月リハに入らなかったら、イチから立て直さなきゃならなくなっちゃう。だから、BALLOONSは1週間に2回練習に入るんですよ。BALLOONSサイドの自分から見れば、L.E.D.みたいに時々集まって、ちょいっとやってカッコ良くなっちゃうバンドはいけ好かないじゃないですか。そういうバンドで出せないものを出すのがBALLOONSだと思うし、逆にL.E.D.サイドの自分から見れば、BALLOONSに出来ないような、ゆるくて楽しい空気を表現出来るのがL.E.D.だと思いますね。自分が分裂しちゃうんですけど、BALLOONSとL.E.D.双方への対抗意識が常にあるんですよ。

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興味深い視点ですね。

塩川

全く違う両方の立場からものを見る。車を運転している時に自転車を「邪魔だな」って思うのと、自転車に乗りながら車が危ない運転をしてきて「ふざけんなよ」と思うのと一緒で、どっちの見方も出来るようになったから、すごく良い経験をさせてもらってるなと思いますね。ただL.E.D.で活動しながらBALLOONSで知り合った友達に「L.E.D.は良い」って言ってもらいたいし、逆にL.E.D.に知り合った友達にBALLOONSも認めてもらいたい。L.E.D.って聴きやすい音楽じゃないですか。BALLOONSはトゲトゲしてるけど、そのバランスをここ2,3年で取れるようになってるなとは思いますね。

なるほど。なかなか全体で合わせられずにライブ本番を迎えるって怖くないんですか?

塩川

怖いのは、たぶんこの人(佐藤)だけだと思う。それが逆にピリピリしなくて良いんじゃない?


佐藤

いや、だからピリピリしてっから!(笑)自分は怖いですよ、正直。いつもライブは戦場に出るような気分なんですよ。朝霧もそうでしたけど、ここまで来たらもうジタバタしても仕方がないっていう、ライブに対する良い意味での腹の括りが出来るようにはなりましたね。自分は他のバンドだとしっかりと準備するっていうか、やるべきことをやってステージに向かえることが多かったんですが、L.E.D.はやりたくてもそれが出来ない。準備が出来てないから、いつも何かしらの不安要素を抱えてステージに立つんですけど、そういう不安要素があるからこそ、逆に良い方向に持って行ける連中が集まってるなとは思います。もちろん悪い方向に行くこともあるわけで、結局、いつも紙一重ではありますが(笑)。

二人三脚とかムカデ競走に対して、ウチらはリレーみたいなバンド。

佐藤さんはリーダーであり、バランサーなんですね。

塩川

モトキチがリーダーじゃなかったらL.E.D.は2年も続かないと思う。


オータ

たしかに。


佐藤

自分は他のバンドではベーシストって意識は割と強かったんですが、L.E.D.に関してはプレイヤーよりコンダクターっていう意識が強いですね。いわゆるバンドで4人集まってガチで音を鳴らすっていうところに自分は入り込まないです。L.E.D.としてその都度やりたい世界観が常に自分の中にあるので、やっぱりそのビジョンを土台にしてプロダクトしたいんですね。そうすると、いちプレイヤーとしてではなくコンダクター的な視点でいないと、そこを具現化するのは難しいんですよ。だからリーダーというかバランサーではありますね。まぁ、でも、単純に考えて、こんな自由奔放な人たちが7人もいれば全体を見渡してバランスをとる役割がいないと崩壊しますって(笑)。なんで、ある意味、引率の保母さん的な立ち位置でもあるんです(笑)。

CONTRAST [インタビュー] L.E.D. | 解散は伝言ゲームがつまらなくなった時

オータさんはどうですか?

オータ

バンド感を必要としている部分ももちろんあるんですけど、L.E.D.は、7人集まって全ての意識を共有して、足並み揃えよう!というバンドではないんですよ。むしろ足並みなんてまるで揃っちゃいなくて(笑) 、7人が共有しているであろうアバウトな大枠を目指して各々が勝手に向かっている感じでなんです。なんで、個々の意識やモチベーションとゆうものが凄く重要な気がしていて、それに向かえない自分がいる時はすごく不安になると思うんですけど、でも実際あまりそういうことはなくて。「自分が出す音にちゃんと責任を持てるか?」っていうことを日頃から考えている人間が集まっているんで、そういう面での不安はないんです。俺の意識は、細かいミスよりも「正直に音を出せていたか?」とか、そういうところに重きを置いてますね。


佐藤

俺もまさにオータくんが言ったとおりで、その日その日のモチベーションに対して、例えばトリオのバンドや4人のロックバンドだと、モチベーションはどうあれ、共通認識としてある音のイメージや精神性だったりは掴みやすいから、自分のその日のバイオリズムが多少下に向いてても、バンドで集まれば向かえることがあると思うんですけど、L.E.D.は日々ミーティングして、飯食って、朝から晩までバンドのことを考えてるっていう感じじゃないから。俺は、その日のバイオリズムが単純に揃わないことがほんとに心配なの(笑)。もう親心というかなんというか…(笑)。


オータ

(笑)。二人三脚とかムカデ競走に対して、ウチらはリレーみたいな感じなんですよ。

CONTRAST [インタビュー] L.E.D. | 解散は伝言ゲームがつまらなくなった時


佐藤

また上手いこといったな!(笑)


オータ

バンドって4人や5人が一つの束になって物事に向かわないといけないので、二人三脚とかムカデ競走に近いんですよ。それこそ、一緒に機材を搬入するところから始まって、様々な共有を経て、一緒に音をバンと出す。それに対してL.E.D.は、各々が一生懸命走って、バトンをきっちり渡す。そうやって全員で順位を高めていこうみたいな感じですね。


佐藤

本当にそう!俺はバトンを落とされることがたまにあるんで「え?あれ?」みたいになるのが怖いんです(笑)。でも、ごく稀に渡しそびれたかと見せかけてジャンプして繋ぐみたいなこともあって、ライブ中に「うぉ!」ってなる時もありますね(笑)。

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