CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] 旅商人たちの見る景色

旅商人たちの見る景色

vendor(プロフィール)

vendor

プロフィール vendor
旅商人の雑然で活気のある露店のように、ジャンルに囚われることなく、驚きと発見のあるアイテムを、独自の視点で提案するセレクトショップ。“WE FIND, WE SELECT, WE BUY, WE SELL TO LIVE FOR FUN”を掲げ、nonnative、hobo、オリジナルレーベルであるvendor Thingsをはじめ、世界各国で巡りあった雑貨やガジェット、そしてインスピレーションソースとなった音楽や本までを幅広く取り扱う。ファッションを洋服といった狭義の意味に限定することなく、カルチャーと捉え、オルタナティブな価値観を発信している。2010年3月に代官山から中目黒へ移転。2011年9月17日に名古屋店をオープンした。

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vendorはファッション=洋服と定義しない。ファッションから派生するもの全てをカルチャーとして捉えて、音楽や書籍、ガジェットなども独自の視点で提案するセレクトショップだ。

nonnative、hoboのフラッグショップであると同時に、オリジナルレーベルのvendor Thingsを手掛け、ものづくりに深くコミットしているという点もvendorの特徴。絶大な人気を誇る自前のブランドに依存することなく、常にジャンルにこだわらず、新しい価値観を発信しようとするスタンスは、まさにvendorの由来である「旅商人」を体現している。

ちなみに、音楽に造詣の深い人に言うならば、toeの山嵜廣和が店舗デザインを手掛けているショップと紹介すれば分かるだろう。無骨な工業デザインの中に木の温もりを感じる店内は、vendorの世界観を最大限に引き立てている。

2011年9月17日、vendorは名古屋に分店をオープンさせた。nonnativeやhoboは全国各地で取り扱われているが、vendorが地方に進出するのは初めての試みだ。そこで、今回はvendorの代官山での立ち上げから中目黒への移転、名古屋店のオープンに至るまでの歴史を、TNP代表のサーフェン智に語ってもらった。代官山のマンションの一室から始まった歴史を振り返る。

※インタビューではサーフェン智氏を「智」と表記致します。

Text by Shota Kato Photo by Daisuke Taguchi

良いモノを提供すればお客さんは来てくれる。それをプレッシャーに。

まずはvendorをオープンした経緯を教えていただけますか?

たしか2005年だったかな。当時まではnonnativehoboの卸しばかりをやっていて、代官山にあった「時しらず」というユナイテッドアローズのセレクトショップで展開してたんですよ。初期の「時しらず」はブランド数が少なかったんですけど、ブランドが増えてきたことで、僕らの世界観を表現するためには自分たちのハコを持つしかないということを考え始めて。そこから、なぜかもともと店舗ではないところにお店を出そうという話になったんです。

当時のvendorはマンションの2階にお店がありましたよね。

やっぱり代官山で路面店って言ったら賃料が高いので、当時の僕らの経済状況的にあまりお金を掛けられなかったということもありましたし。今もそうなんですけど、僕らが若かった時に洋服を熱心に見ていた時期とか、お店が良ければ別に2階であろうとクチコミで広がるとは思っていて。良いモノを提供すればお客さんは来てくれる。それを自分たちのプレッシャーにして、当時から洋服以外にCDとかも扱ってはいたんですが、今のvendorほど空間が広くなかったから、色々盛り沢山にできなかったということもあったんですよ。

CONTRAST [インタビュー] vendor | 旅商人たちの見る風景

当時のvendorってnonnativeとhobo以外はどんなラインナップだったんですか?

僕を含めウチのチームは海外によく行くので、珍しいスニーカーや一点モノのTシャツを買い付けたり、あとは国内ブランドのNEPENTHESWASTE(TWICE)
ANACHRONORM辺りを。

どちらかと言うと、無骨なラインナップだったんですね。

僕らの空間に対してセレクトしていくとなると、男っぽいブランドが自然と増えていきましたね。無骨な洋服の外しにNIKEやadidasのスニーカーも海外で買い付けてましたけど、やっぱりスペースが限られていましたからね。代官山の最後のほうになると、COMME des GARÇONS JUNYA WATANABE MANも始めるようになって。

vendorの由来というのは?

間口を広げる意味合いで、シンプルにしたかったんですよね。nonnativeとhoboも、とある人物像的な意味があったから方向性としては似ていて。セレクトショップを作りたいという気持ちがあったので、「行商人」というキーワードであらゆる国の言葉を調べたんですよ。でも、どれもピンと来なくて、日本人が発音しにくいものばかりで意味が伝わらないかもしれないなと(笑)。シンプルなはずが余計複雑になってるような気がして、最終的にはド直球の英語でやるのが一番良いんじゃないのかなと思ったんですよね。

CONTRAST [インタビュー] vendor | 旅商人たちの見る風景

どんどん深みにハマっていったんですね。

たまにお店の名前と雰囲気が違うことってあるじゃないですか。vendorだったら「雰囲気違うよね」とは言いようがないし、すごくニュートラルな名前だと思っていて。最終的には僕がvendorという名前を出しましたけど、僕一人で悩んでるわけじゃなくて、皆で話し合って常にコミュニケーションをとっているんですよね。お店のコンセプトや扱う商品にしても、すり合わせというか同じ方向を向くための良いチームがありますから。

なるほど。

お店をやろうと決めた時に京都の卸し先の店長に声を掛けたんですよ。今はnonnativeの営業をやっていて福ちゃん(福永良輔)と言うんですが、vendorで扱う音楽は全て彼がセレクトしている。僕も音楽が大好きですけど、彼の方が全然詳しいですからね。

JAZZY SPORTのウェブサイトでチャートを紹介したり、DJ活動もしている方ですよね。

彼は京都のProphetというセレクトショップで洋服を販売しながら、お店で自分の好きなCDも一生懸命売ってたんですよ。ウチの集団は洋服を作る行為とか売る行為の以前に、良いモノを人に知らせたいという欲が強くて。ちょっと説教がましいというか「これ良いのがあったから聴いてよ」とか、小さい頃からそういう性格の人たちが集まったんじゃないかなと思う。「これ最高だから色んな人に聴いてもらいたいよね」みたいな気持ちからCDをセレクトしているし、洋服のセレクトも僕一人がバイイングしているわけじゃなくて、バイヤーがしっかりと立っていて、彼を中心に皆で相談して決めているんですよ。

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まさにチームプレーを象徴していますね。

僕らが良いと思うものをお客さんにどんどん紹介したいし、勧めていきたいですよね。僕らが絶対的な価値観を持ってるという気持ちはないけど、vendorというフィルターを通して良いモノを紹介できればなと。そのためには僕らも常に理想を更新していかなきゃいけないし、新しいものを発見していかなきゃいけないんですよね。そういうことを好きな連中が集まってるんじゃないかな。

本当に中目黒で大丈夫なのか…。

サーフェンさんが仰っていたように、vendorの強みはファッションだけではなくて、そこから派生するもの全てをカルチャーとして捉えている点にあると思うんですね。

僕らは一生懸命見せようとしてるんですけど、お客さんが興味を持っているかは分からないですけどね(苦笑)。

お店作りの上で、皆さんの間に共通の固有名詞や認識みたいなものはあるんですか?

「あのお店はキレイ過ぎて嫌だ」みたいに、ダメなものを並べて「やっぱそうだよね」というのを確認し合うキーワードはあるかもしれないけど、絶対的なものに皆で向かっているというような会話はないですね。

CONTRAST [インタビュー] vendor | 旅商人たちの見る風景

なるほど。代官山での営業を経て、2010年の3月に現在の中目黒に移転しましたが、移転を決めたきっかけというのは?

これはたまたまの流れなんですけど、店のキャパシティに限界が迫っていて、床面積をできるだけ広くしたかったんですよね。最初は代官山に執着していた部分があったんですけど、なかなか良い物件が出てこなくて。少ししたらすごく良い物件が代官山で空いたんですけど、他のところが入ってしまったんです。そのふてくされていた矢先に今の物件のオーナーが貸し出すという情報を得て。

なんだか、中目黒に導かれていったような感じもしますね。

以前、今のvendorの場所はジャンク屋さんだったんですね。天井が高くて雰囲気的にも理想の物件だったから、あの空間がマーケットに出るなら絶対に欲しいと思ったものの、一瞬「中目黒で大丈夫かな…」とも思ったんですよね。でも、代官山で始める前と同じで、良いモノと良い空間を作ればお客さんは来ると信じて。代官山の2階でやり続けてある程度のお客さんも来てくれていたから、この距離だったらお客さんも来てくれるんじゃないかなと。でも実際、平日の目黒川は代官山に比べて人が全然歩いてなかったんですよ(笑)。

(笑)。それは不安になりますよね。

小林さん(小林節正)の……. RESEARCHは長年やっていてコアなファンがいるけれど、「僕らがここに来て本当に大丈夫なのかな…」っていう不安はありました。そういう時に皆で呑みに行くんですよね(笑)。そこで誰かが「嫌だ」という意見に全体的な雰囲気が引っ張られれば、「やっぱ違うね」っていう話になりますし、逆に皆のテンションが高くなっていけばいけるっていう。呑んで結束力が高まって答えを出すことが多いですね。

けっこう体育会系なんですね(笑)。

男ばっかなんでね(笑)。

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