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CONTRAST [インタビュー] 変わるもの、変わらないもの

変わるもの、変わらないもの

大根仁(プロフィール)

大根仁

プロフィール 大根仁
1968年生まれ。ADとしてキャリアをスタートさせ、テレビ演出家・映像ディレクターとして、数々の傑作ドラマ、ミュージックビデオを演出。『劇団演技者。』『週刊真木よう子』『湯けむりスナイパー』など深夜ドラマでその才能をいかんなく発揮し、話題作を連発。業界内外から高い評価を受ける。テレビドラマや舞台の演出を手掛ける傍ら、ラジオパーソナリティ、コラム執筆、イベント主催など幅広く活躍する先鋭的なクリエイター。脚本・演出を手掛けたドラマ『モテキ』(テレビ東京)が2010年7月より放送開始し大ブレイク。待望の映画監督デビューを映画『モテキ』(東宝)にて飾り、映画界に参戦する。

大根仁ブログ
オフィスクレッシェンド ウェブサイト
映画『モテキ』公式サイト

映画化にあたって、これほどまで議論を呼んだ邦画がかつてあっただろうか。原作漫画の勢いそのままに、深夜ドラマでも話題をさらった、あの『モテキ』が映画化される。深夜ドラマの映画化と言っても、単館でもなければミニシアターでもない。なんと、全国の東宝系映画館でガッツリ上映されるのだ。

『モテキ』の映画化については、インターネットのSNSを中心に、様々な場所で賛否両論の声が飛び交っていた。豪華になったキャスティング、作品を取り巻く環境の変化に対する意見は、まるで、追い続けてきたインディーバンドがメジャーデビューすることに対して議論するかのようだった。その様子は、純粋に『モテキ』への注目の高さを象徴していたと思う。個人的には、『モテキ』の醍醐味の一つであるJ-POPの使われ方やリアルな生活感を追求した演出が、どれほどまでにスケールアップしているのか。そして、それらに対してサブカルチャーの免疫が低いユーザーはどんな反応を示すのか。早く劇場まで足を運んで、現場で沸き起こるリアクションを確かめてみたい。

今回は、公開を目前に控えた大根仁監督に現在の心境を語ってもらった。自身の銀幕第一作をどのように捉えているのか。その胸の内を明かす。

Text by Shota Kato Photo by Daisuke Taguchi

続編も映画化も、何も考えていなかった。

『モテキ』公開まで間もなくですが、今の心境はいかがですか?

大根

さすがに40も過ぎてるので、殊更に「映画だぞ!」という気持ちもそんなにないんですけど、東宝メジャーでやりたいと言ったのは自分だし、それに即したキャスティングなり宣伝というところでの作品の大きさは感じています。役者もスタッフも宣伝部もすごく頑張ってくれたので、今のところ評判も良いみたいで。

意外なことに、大根監督の初映画作品なんですよね。

大根

映画は興行だからどうなるか分からないですけど、公開を迎えて大きなうねりみたいなものは実感としてあるんですよ。当然、今まで自分がやってきたような深夜ドラマとは規模が違うので、コンビニに行けばポスターが貼ってあるし、電車に乗れば中吊りがあるし、渋谷を歩けば大きな看板がある、みたいな。Twitterやネットの期待の言葉とかを読んでても、そういったうねりは感じるんですよ。ただ台風の目じゃないですけど、いちおう作った人間として真ん中にはいるけど、中は意外と静かというか(笑)。「始まるんだなぁ」という気はしてますね。まぁ、これが上陸したら意外とショボかったのか、中国大陸に逸れてしまったのかっていう(笑)。

CONTRAST [インタビュー] 大根仁 | 変わるもの、変わらないもの

いやいや(笑)。

大根

でも作ったものに関する自信はあるので、「見てろよ」という気持ちはありますね。

静観しているようで燃えているというか。

大根

ドラマの時は、企画の成り立ちとか色々あったので、根幹の部分は男手一つで作ったという気持ちがあって。その分雑だし、育ちの悪さみたいなものはあったんですけど(笑)、今回は最初から色んな人たちが色んな形で『モテキ』という作品に愛情を注いでくれたので、育ちの良い子どもが育ってくれたというか。元々は育ちは良くないんですけどね。

改めて、今回の映画化の経緯を教えていただけますか?

大根

テレビ東京さんからお話をいただいて、東宝の川村プロデューサーからもほぼ同時期にいただいていたんですよ。そもそも原作も終わっちゃっていたし、ドラマ版で中心にいた僕と原作の久保ミツロウと主演の森山未來の三人が、本当にやり切ったというか走り切ったというか。正直疲れ果てたという気持ちもあったので、そこから先に何もない中で続編や映画化みたいなことは、本当に何も考えていなかったんですよ。

映画化に対して久保さんと森山さんの反応はどうでしたか?

大根

二人とも最初に僕が映画化の話を振られた時と同じリアクションで「えー!やることありましたっけ?」みたいな。久保さんは『モテキ』の連載が終わった後にドラマが始まって、小さい世界ながら盛り上がりがあって、『モテキ』のアフターパーティーが続いてる感じだったと思うんですよね。パーティーにケリをつけなきゃいかんなという意識はあっただろうし。

ほとんどの人が『モテキ』を観てないという前提

大根監督が前向きな気持ちになれたのは、どんなきっかけがあったんでしょうか?

大根

キャンペーンで地方を廻っている時に、地方の人たちのトークが熱かったんですよね。大きな街から小さな街まで15ヶ所くらい廻って、その辺にあるカフェとか居酒屋の二階とか、地方のロフトプラスワン的なスペースで映像を観たり、質問に答えたり皆で話したり。そういうことをしていく中で、今まで自分が作ってきたようなものとは違う広がりをしてるなっていうのを感じたんですよね。この言い方が適しているのか分からないですけど、良い意味で作品が一人歩きしているなと。

手離れということですね。

大根

そうですね。映画なりドラマなりっていうのは、封切りなり放送された時点で、受け手側のものになるというのはもちろん分かっていたんですけど、愛され方が尋常じゃないなと感じましたよね。そういったことがあって、一般の人たちの「もっとやって下さいよ!」みたいな期待値の高さに後押しされたというのはありますね。

CONTRAST [インタビュー] 大根仁 | 変わるもの、変わらないもの

なるほど。

大根

テレビ東京さんに出した条件としては、やるなら、いわゆる都市型の単館系規模なら嫌だと。深夜ドラマからそこに行くのは当たり前の形ですし、ましてやテレビドラマ、漫画原作の映画化が常態化している中で、どうせならもっと派手にやりたい。だから、東宝全国メジャーの200館以上でヒット作を作りたいなと。DVDはテレビドラマとしてはそこそこ売れた方だと思いますけど、そうは言っても深夜ドラマの3%くらいの視聴率で映画化するにあたっては、ほとんどの人が『モテキ』を観てないという前提で始めました。7:3もしくは8:2ぐらいで『モテキ』という言葉は知ってるけど、ドラマと漫画は知らないという。

はっきりと割り切りましたね。

大根

僕もそれなりにカルチャー度の高い世界で生きてきましたけど、そこにおける共通言語とか「あれヤバいよね。良いよね」って言ってることっていうのは、自分の村から一歩出てしまうと、意外と誰も知らないんですよね。Twitterで何百リツイートされようが、それはTwitterの村の中で起きてる出来事であって。良い例えか分からないですけど、『TVBros.』より『TV Taro』の方が売れてるっていうのがビックリするじゃないですか(笑)。それが現実だっていうことなんですよね。決して見下すわけじゃないですけど、地方のイオンにあるシネコンに、何の目的もなく映画を観に行くような人たちが、「え?モテキって何?」って言うような認識から始めないといかんなと。

マスの意識というか。

大根

このポスターがマスかどうかは微妙ですけど(笑)、セルアウトするという発想じゃなく、パッケージなりキャスティングなり、見え方としては「なんか派手でバカな映画がやってるね」って思われた方が良いなと思ったんですよね。で、中に入ってみると、とんでもない世界が繰り広げられているというか。

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