CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] 彼らと時代のアーカイブ

彼らと時代のアーカイブ

mouse on the keys(プロフィール)

mouse on the keys

プロフィール mouse on the keys
2006年、元NINE DAYS WONDERの川崎昭(ドラム、ピアノ、キーボード)と清田敦(ピアノ、キーボード)によりmouse on the keys結成。2007年、toeのレーベルMachupicchu Industriasより1stミニアルバム『sezession』をリリース。2008年、『sezession』リリースツアーより新留大介(ピアノ、キーボード)が加入し、現在の3人編成となる。2009年、1stフルアルバム『an anxious object』を発表。2010年にはドイツのdenovali recordsより『sezession』と『an anxious object』をヨーロッパ圏中心にライセンスリリース。同年、二度のヨーロッパツアーを行い、大きな成功を収める。2011年3月には3度目のヨーロッパツアーを敢行。その模様が収められた映像作品『irreversible』を9月7日にリリースする。

http://mouseonthekeys.net

mouse on the keysの映像作品『irreversible』の題材は、2011年3月に行なった彼らにとって3度目のヨーロッパツアー。端的に言えば、イギリス、ドイツ、ポーランドの3ヵ国7箇所を廻った模様が生々しく記録されたツアームービーだ。近距離で撮影されたライブ演奏の迫力だけでなく、合間に差し込まれたヨーロッパの印象的な景観や街並にも目を奪われる。観る人によって様々な受け取り方が出来る、それがこの映像作品の醍醐味の一つだと思う。

ツアーが行なわれたのは3月4日から12日。この日程からも分かるとおり、mouse on the keysは未曾有の震災が日本を襲ったという事実をツアーの最中に知る。つまり、『irreversible』は純粋なツアーの記録であると同時に、彼らがヨーロッパで経験した3.11をも切り取っているのだ。その意味で言うと、個人的には、ツアーを通じたバンドの成長と時代の変化を描いたドキュメンタリーだと捉えている。

今回、映像作品のディレクターを務めたのは、インディーズ映像作家のMINORxU。このインタビューでも語られているが、彼が深く関わっていることに是非注目してほしい。mouse on the keysとMINORxUがどういったシーンで活動して、どんなミュージシャンたちと時間をともにしてきたのか、彼らが生きてきた時代の文脈を知る手掛かりになるからだ。mouse on the keysのメンバー全員に、ツアーのエピソードを振り返りつつ、『irreversible』に刻まれた記録と、その行間から浮かび上がる歴史について語ってもらった。

Text by Shota Kato Photo by WYPAX

ドキュメンタリーとライブDVDの中間にあたる作品。

一足早く見させていただいて、僕は今回のDVDをmouse on the keys入門書として布教活動したいと思っていて。

川崎

おぉ、嬉しいですね。

mouse on the keysって編成だけで判断すると、ドラム、キーボード、キーボードで、いわゆるユニットって思われがちなんじゃないのかなと思っているんですね。あと音源やCM音楽からは、スマートでインテリジェンスの高い音楽という印象を受けるんじゃないかなと。

川崎

はいはい。

一つの見方としては正しいと思うんですけど、mouse on the keysのライブを体験している人たちにとっては、やっぱりバンドなんですよね。だから、このドキュメンタリーには、ライブバンドとしての空気感やテンションが生々しく凝縮されていると感じました。

川崎

ありがとう。DVDには今年3月に行った3rdヨーロッパツアーの模様が収録されています。去年2回行ったヨーロッパツアーの経験が、我々をライブバンドとして成長させたと思う。この感触を映像に残したら良いんじゃないかという話を、2回目のツアーの最後に皆で呑みながら話したんです。それで3回目のツアーを決めたんですよね。だいたい僕らはノリで「やりたいね、予定決めちゃおうか」っていうスタンスだから、そういうことでDVDを出す話は進んでいって。

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そもそもヨーロッパツアーを企画した経緯っていうのは?

川崎

なぜ行ったかと言うと、日本でリリースしている音源のヨーロッパ盤をドイツのdenovali recordsからリリースすることになって。プロモーションを兼ねてツアーをしようということで行ったんです。一回目と二回目はレーベルオーナーのティモが中心になってブッキングしてくれたんですよね。だから、その時のほうがライブ数も多いし、宣伝もやってくれて。今回は、自力でブッキングの連絡を取り合ったんですよ。新留が全部やってくれて、彼は英語ができるので。


新留

インチキ英語をね(笑)。


いやいや(笑)。ちなみにDVDの監督がMINORxUさんですけれど、今現在LOSTAGEのドキュメンタリーも撮影していますし、mouse on the keysの過去のライブ映像も撮影している方ですよね。

川崎

誰に監督をお願いしようか考えた時に、一人で撮影から編集もできて、信頼も置ける人って言ったら、真っ先に思いついたのがMINORxUくんだったんですね。Youtubeに上がっている僕らの渋谷O-EASTでのライブ映像を観てもらえると分かるんですけど、ワンカメで全部撮り切るというのが彼の持ち味で上手いんです。僕らがツアーしている模様を彼に撮ってもらえれば、すごく良い作品ができるんじゃないかということでお願いしたんですよね。MINORxUくんも喜んでやってくれることになりまして。

今回の映像作品には、ライブDVDやドキュメンタリーの要素もありますけど、ドキュメンタリーって、一般的にはインタビューや会話が盛り込まれているじゃないですか。映像を観た人は驚くと思うんですけど、唯一声が入っているのは、新留さんのMC部分だけなんですよね。

川崎

ドキュメンタリーと言うと、マイケル・ムーアとか、バンド系のドキュメンタリーでは、METALLICAやブッチャーズの(bloodthirsty butchers)『kocorono』とかを連想すると思うんですよ。バンドマンの苦悩の部分を出していくというか、人間性や人間模様を出すのは、いわゆるドキュメンタリーだと思うから、たぶん僕らのDVDをそういった考えで観ると、「あれ?ちょっと違うな」と感じると思うんですよ。

なるほど。その違和感も踏まえた上で。

川崎

いわゆるドキュメンタリーではなくて、ヨーロッパの雰囲気や景色、あとは僕らのライブで構成したものにしようとMINORxUくんとメンバーで決めたんです。あと、まあ、ライブDVDであるかと言うとこれもまたそうでもないんですよ。メンバーに寄り過ぎてるショットや演奏中に接触不良でノイズが乗ってるテイクをそのまま使ってたりするんで。本来ライブDVDだったらNGだと思うんですけど、今回はヨーロッパツアーの状況をそのままお見せしたかったんです。そういう意味ではドキュメンタリーと言えるかもしれない。ということで、この作品は、ドキュメンタリーでもないし、ライブDVDでもない中間のようなものになってます。

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ヨーロッパの雰囲気を感じる要素として、街並がロードムービーのニュアンスで盛り込まれているじゃないですか。ミュージックビデオを観ているような感覚もありますし。だから色々な要素が含まれていますよね。

川崎

そう思ってもらえれば良いかなと。観る人によって色々な感想があるとは思うんですけど、結成5年目のライブベスト盤みたいなニュアンスもあるし、未発表の曲も3曲入っているから、今の時期に出してみるのも面白いんじゃないかなと思って。


新留

俺たちとしては、自分たちでツアーを組んだ最中に3.11の出来事が起こった。その純粋な記録でもあるというか。

バンド目線で言うと、一つの時期を切り取って上手く表せている。

kowloonのツアーファイナルのMCで川崎さんが言ってましたけど、『irreversible』というタイトルは、”あのときには戻れない”という意味で色々なことに掛かっているんですよね。

川崎

ヨーロッパツアーから帰ってきて頭痛がしたんですよね。今まで頭痛とかない体質だったんで、「おかしいな」ということで病院に行って調べたら、「隠れ脳梗塞だ」って診断されて。MRIを撮ったら脳の断面図にプツプツっと白いものがあって、「毛細血管が壊死してるよ」って言われたんですよ。60代だったら普通にある症状なんだけど、「30代じゃあまりないよ。ちょっと異常だね」って言われて。

ご自身としてもショックが大きかったんじゃないですか。

川崎

ショックは受けましたね。血液検査から尿検査、心電図と調べても全く問題なかったんですよ。脳のMRIの結果だけがおかしいということで。糖尿病とかもないから、医者も原因が分からなくて。で、ネットで調べたら、あるアメリカのメタルのギタリストが、ハードなツアーでヘッドバンギングをしまくって倒れて、調べてみたら脳梗塞だったという書き込みを見つけて。

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mouse on the keysのライブを観たことのない人に向けて言うと、意外かもしれないですけど、カオティックなライブなんですよね。

川崎

俺はヘッドバンギングするときは頭をガンガン振る感じなんですけど、私生活でも現場仕事をしてて、必要以上に頑張っちゃうんですよね。水を飲まないで、2時間も熱いところでやってたりしてたから。今まで体力に任せていたのが、この歳になって出ちゃったのかなっていう。

ライブ以外にも思い当たる節が。

川崎

「やるなら限界までやっちゃおう」っていう感じになってしまうというか、死ぬ気でやってしまうところがあって。その無理がきていたのかなって思うんですよね。今回のEUツアーでライブの後に鼻血が出たりとか、頭がクラクラしていたから。今でこそステージングは前よりも派手になっていますけど、あの頭をガンガン振る感じはヨーロッパツアー以降抑えているんですよ。だから、単純にあの映像の頃には戻れないっていう意味で『irreversible』だし、あの3.11を挟んでのツアーだったんで、ヨーロッパに行って帰ってきた日本の状況が以前とは変わっていましたし。そういった”元には戻れない”っていう意味もあるんですね。


清田

バンド目線で言うと、作品が出て何年か経って振り返るというよりは、一つの時期を切り取って上手く表せているのかなと思いますね。


川崎

そうだね。一つの時期を切り取っているという意味ではe-mailやFacebookを駆使してEUツアーを実現したという、その実現した部分だけをパッケージしたのがこのDVDというか…。


新留

今俺たちみたいなスタンスでこういったことができちゃうっていうことも、ネット在りきだと思うんですよ。ヨーロッパ盤の話が来たのもネットだし、ヨーロッパツアーのやりとりは全部メールだけでやっているから。


川崎

そういった背景があって約1年の間、日本のインディペンデント・バンドが、3度もヨーロッパツアー出来ちゃうっていうのは、今時の現象だし、その点でもこのDVDは今の時代を切り取っていますね。

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