CONTRASTは、創(造)る行為で私たちを魅了する人物にフォーカスし、彼らとの対話から「ものづくりの温度」を伝えるウェブマガジンです。

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CONTRAST [インタビュー] 音楽の中で映画を撮る

音楽の中で映画を撮る

池永正二(プロフィール)

池永正二

プロフィール 池永正二
トラックメイカー、作曲家、鍵盤ハーモニカ奏者。1976年生まれ、大阪府出身。大阪芸術大学映像学科卒。叙情派エレクトロ・ダブ・ユニット「あらかじめ決められた恋人たちへ」を中心に、ソロや京都の吟遊詩人「ゆーきゃん」とのユニット「シグナレス」等で活動中。映像的なセンスを持った音楽性が高く評価され、映画音楽や演劇音楽、バンドのプロデュースも手掛けている。

あらかじめ決められた恋人たちへ
1997年、池永正二によるソロ・ユニットとしてスタート。叙情的でアーバンなエレクトロ・ダブ・サウンドを確立し、池永自身が勤めていた難波ベアーズをはじめとするライブハウスのほか、カフェ、ギャラリーなどで積極的にライブを重ねる。2003年には『釘』、2005年には『ブレ』をリリース。この頃からリミックス提供や映画、劇中音楽の制作、客演などが増加。2008年、拠点を東京に移すと、バンド編成でのライブ活動を強化。そのパフォーマンスと、同年11月の3rd アルバム『カラ』がインディー・シーンに衝撃を与える。2009年にはライブレコーディングした音源を編集したフェイクメンタリーアルバム『ラッシュ』を発売。また、大阪の爆音ガレージバンド・ワッツーシゾンビの『WE ARE THE WORLD』のプロデュースを手掛けた。2010年は、SUMMER SONIC、朝霧JAMといった大型フェスにも出演を果たし、2011年、満を持して新作『CALLING』をPOPGROUPからリリース。
http://arakajime.main.jp/
http://arakoi.pop-group.net/

あらかじめ決められた恋人たちへ。字面の印象からは、フォークやアコースティックのような音楽を連想するだろう。ところがフタを開けてみれば、爆音。それでいて、どこかノスタルジックでメランコリック。あら恋は、トラックメイカー・鍵盤ハーモニカ奏者の池永正二を中心としたインストゥルメンタル・ダブ・ユニットである。バンド編成だが、バンドという言葉を用いず、自らをユニット(組織)という言葉で置き換える。その理由は、バンドメンバー以外のPAや照明スタッフを含めて、一つの組織として捉えているからだ。最新アルバム『CALLING』は、初めてバンド編成でスタジオ録音された。あら恋にとって、ターニングポイントをもたらした重要な作品である。今回は、池永にアルバムの制作エピソード以外にも、ダブ、鍵盤ハーモニカとの出会いなど、彼のパーソナルな側面を交えてもらった。あら恋のメカニズムに迫る。

Text by Shota Kato Photo by WYPAX

スタジオ録音は必然的な流れだった。

去年は朝霧JAM、今年はFUJI ROCK FESTIVALへの出演が決まりましたね。年々あら恋への注目はかなり大きくなっているのを感じます。

池永

緊張しますよね、フジロック…。実は出演するまで行かないと決めていたので、やっと行けます(笑)。

あら恋は屋内のライブも良いですけど、野外で観たらめちゃくちゃ気持ち良いでしょうね。どのステージもすごく合うと思いますよ。

池永

ありがとうございます。

さっそくアルバムの話をいいですか?今回、初めてバンドでのスタジオレコーディングをやったんですよね。これは意外でした。

池永

今回のアルバムはライブで演奏していた曲が多かったので、やっぱり生でドラムとかベースをそのままスタジオで録音した方が良いんじゃないかっていう話になったんですよ。だから、きっかけというよりは、ものすごく自然な流れというか、必然的なものだったと思います。バンドで録ったことで聴きやすくなりましたよね。打ち込みだけではできなかった、生バンド特有のメランコリックな音に寄っていったと思いますね。

そこが、スタジオレコーディングのプラスアルファなんですね。逆に、今まではどういった形でレコーディングしていたんですか?

池永

ほとんど僕が打ち込みで大概作ってしまって。ビートを生ドラムに差し替えることもなく。だから、ほぼ宅録ですよね。ベースとかは生で弾いていましたけど。

え?それって、他のメンバーさんは音源には参加していなかったってことですか?

池永

参加はしていましたけど、基本、僕のソロプロジェクトっていう形体でした。もともと、ライブと音源は別物にしようというのがあったんですよ。打ち込みで作ったアルバムをライブで演奏するとき、もっと爆発的なライブにしたかったので。その方が面白いでしょ。だから今まで、アルバムを聴いてライブに来てくれるお客さんは、音の印象が全然違うんじゃないかなと思いますね。

CONTRAST[インタビュー] 池永正二 | あらかじめ決められた恋人たちへ

いやー、びっくりしましたよ。

池永

やっぱり違います?そういう反応が面白いなぁと思って。アルバムとライブで二度美味しいっていう。

あら恋って電子音楽とダブを軸にしていますよね。それ以外にも色々なタイプの音楽を融合していると思うんですけど、どんな要素が反映されていますか?

池永

僕は90年代が青春だったんで、初めてダブを聴いたのは、マッド・プロフェッサーとマッシヴ・アタックの『No Protection』ってアルバムがあったでしょう?あれだったんですよね。マッシヴ・アタックって、ダブって言われていてもジャマイカのDUBとは違うじゃないですか。そもそも、そこがルーツなんですよ。プライマル・スクリームとかもそうですよね。マンチェスターやグランジみたいなものがあれば、日本にはボアダムスみたいな音楽もあって。その時代から音楽をすごく好きになりましたよね。

ってことは、80年代後半から90年代半ばの音楽がベースになっているわけですね。

池永

そうですね。ダイナソーJr.の『Where You Been』とか大好きやったんですけど、僕の中では懐メロになりますね(笑)。なんか今って、当時の音楽が一周回った気がして面白いんですよ。クロコダイルズって聴きました?

聴いてないんですよ。最近のバンドですよね?

池永

ものすごくストーン・ローゼスっぽいんですよ。笑えるくらいにローゼスで。ジーザス&メリーチェインとかザ・キュアーっぽいバンドもいてたり。いわゆるブルックリン系から流れるマッドチェスターとかの音楽が、今のアメリカで面白いみたいなんですよ。ただのコピーじゃないから、逆にカッコイイなと思って。僕のルーツがあの時代の音楽だから、聴いていても自然に入ってくるんですよね。

出る音楽があら恋であれば、組織がどんな形になっても良い。

今回のアルバムは、池永さん自身の原点に戻った側面もありますか?

池永

うーん。戻ったというか、自然と一周回ったんじゃないですかね。曲を作っていくと、必ず手癖みたいなものが出るんですよ。今までのアルバムと比べても今回は変わったとは思いますけど、パッと聴いてもウチらの音楽だって分からないと駄目かなと思うんで、そこは譲れない部分ですよね。よく「ダブとなんとかをミックスした~」とかって言って、結局「ダブとなんとか」な混ざってない音楽ってあるじゃないですか?そういうものとは全く違う音楽を作った自信がありますね。それは周りの人が判断することだと思うんですけど、安易な意味でミックスではないって言いたいですね。

このアルバムはそれを十分に説得出来ると思いますよ。かなり作り込んだ印象を受けるんですが、製作期間としてはどれくらい掛かりましたか?

池永

いつからやり始めたかな?去年の4月頃には、今のアルバムの曲をやり始めていたんですよ。ウチのやり方っていうのが、まず僕がトラックをガーッと大体プリプロで作っていって、それに合わせてバンドで演奏して録音するんですよね。で、録音して持って帰ったものを編集して、フィルを伸ばしたりして。そういう作業を詰めていって、またバンドに返すんですよ。そこで個々の手癖が出てきてアレンジが変わるんで、それを持って帰って。やりとりしているうちに、最終的にスタジオで録音するんです。それから、スタジオで録音した素材をまた家に持って帰るんですよ。で、最終的に、打ち込みやベースを部分的に足したりして地ならしをするっていう。今回は今までと録り方が違うから、時間が掛かりましたね、やっぱり。コツコツやっていました。

今の池永さんの説明からも、かなり煮詰まった制作だったんじゃないかなって感じたんですけど、実際はどうでした?

池永

日々、煮詰まっていましたね(笑)。最近はほんとバンドになったんですよね。今まで意識したことはなかったんですけど、バンドが揺れる時期っていうのが、やっぱあるねんなぁと。しんどいと思う反面、バンドになってきたなぁとちょっとうれしかったりします。今回のアルバムに『Start』っていう曲があるんですけど、これはその揺れていた時期の曲で、もういっぺん”Restart”やなぁと思って作った曲なんですよ。

CONTRAST[インタビュー] 池永正二 | あらかじめ決められた恋人たちへ

あら恋って、ライブのPAや照明も含めて、自分達のことをバンドではなく”組織”という言葉を使いますよね。

池永

そうですね。今回のアルバムに関して言えば、バンドでやることが一番良いと思いましたけど、そこで形を固めたくはないんですよね。組織って動いていくイメージだけど、バンドはガツッと固まっている感じがするんですよ。そういう意味では、ウチは組織なのかなぁって思いますね。

今の言葉を借りると、組織だからどんな動きをしていくのか流れを楽しんでいるような印象を受けました。

池永

もともと、そんなに考える性格じゃないんですよ。流れがあると思うんですよね。アクションしたことのリアクションに対応していくうちに、色々な形になっていったというか。細胞組織みたいなもんですよね。理科のときに習った…ミドリムシでしたっけ?あんなふうに細胞分裂して繋がっていく感じですね。今度、照明さんが辞めるんですよ。バンドだと「辞めんなよー」ってなると思うんですけど、ウチは組織だから、分裂しても、またくっ付いて一緒にやることもあるかもしれないし。とか言いつつ辞めてほしくないですけどね。また1からだし。でも仕方ないじゃないですか。そっちで頑張っていこうって決めた人に対しては「頑張れ」って言ってあげなきゃ。音楽至上主義って言うと変ですけど、出る音楽があら恋であれば、組織がどんな形になっても良いんじゃないかなぁって。極論を言うと、僕が辞めちゃってもね。変な話ですけど(笑)。